【シゴトを知ろう】能面師・神楽(かぐら)面職人 ~番外編~

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【シゴトを知ろう】能面師・神楽(かぐら)面職人 ~番外編~

2018.01.26

提供:マイナビ進学編集部

【シゴトを知ろう】能面師・神楽(かぐら)面職人 ~番外編~

能面は、600年以上の歴史を持つ伝統芸能である能や狂言で使用されています。能のシテ(主役)は基本的に能面をつけていて、神様や鬼、亡霊などこの世のものではない存在であることを能面によって表している場合があります。舞台上の表現には欠かせない能面の制作や修復を行っている能面師の後藤祐自(ゆうじ)さんに、能面作りの裏話や日本の伝統文化が持つ独特の価値観などについてお話を伺いました。

この記事をまとめると

  • 能面に使うヒノキは、伊勢神宮や出雲大社のご用材と同じ国内最高級品
  • 能面を作る作業は、家族や世間が寝静まった夜中に行うこともある
  • かつて、日本文化は精密な「写し」が評価の基準だったが、近年の西洋文化の流入によって「個性」が 重視されてきた

能面に使われるのは、耐久性と加工性に優れたヒノキ

能面制作に使う最高級ヒノキ。この大きさで1万円ほど

能面制作に使う最高級ヒノキ。この大きさで1万円ほど

――能面を作る際に使う木材の種類について教えてください。

昔も今もヒノキを使っています。ヒノキの中でも最高級の国有林ヒノキです。かつては天領や幕領(*1)と呼ばれていたヒノキ林で育ったもので、1cmの間に何本も年輪が入り堅く締まったものです。締まりがないと使い続けるうちに変形してくることもあるのです。また、能面に使うヒノキには、彫りやすい柔らかさも必要です。

一方、講習会で教えるときなどは、外国産の材木を使うこともあります。値段は全般的に安いのですが、外国産の材木の中には、やにが強くて扱いにくいものもあります。


*1 天領、幕領:江戸幕府が直接支配していた土地のことを幕領といい、明治時代になってからは、幕領を天領と言うようになった。


――最高級の国有林ヒノキは、能面以外にどんなものに使われているのでしょうか?

伊勢神宮(三重県)の式年遷宮(*2)の時には全て国有林のヒノキを使います。伊勢神宮の式年遷宮と出雲大社(島根県)の大遷宮(*3)、そして名古屋城の修復が重なった時は、大量に国有林ヒノキが使用されたためなかなか市場に出回らず、入手するのが大変でした。国有林のため、国が材木として出荷する量を厳しく規制しているからです。


*2 式年遷宮(しきねんせんぐう):定期的に神社の社殿を建て替えて、祭っている神様を建て替えた社殿に遷すこと。伊勢神宮では20年に1度行われていて、2013年に第62回目の式年遷宮が執り行われた。

*3 大遷宮(だいせんぐう):神社の改修や建て替えに伴って祭っている神様を仮殿に遷し、改修や建て替えが終わった社殿に戻すこと。出雲大社では、2008~2016年にかけて60年ぶりに大遷宮が行われた。

集中力を高めて面を打つ。わずかな失敗も許されない

――能面師と呼ばれる方は何名ぐらいいらっしゃるのでしょうか?

自称能面師を含めると50名くらいはいるんじゃないでしょうか。私が知る限り、本当の能面師といえるのはそのうち4、5名だと思います。能面を作る人のほとんどはそれを専門にしているわけではなく、他の仕事の傍らやリタイアした後、趣味で作っているようです。


――能面を作る作業は自宅でされているのでしょうか?

自宅が工房を兼ねています。真剣勝負ですので、作業は家族が寝静まった静かな夜間に行うこともあります。面を打つ(能面を作る)時にはとてつもない集中力が必要です。妥協は許されませんし、わずかなズレや見落としも許されませんから。私には子どもが7人いますので、子どもが小さいうちは作業が進まないこともありました。それで、夜中に作業をすることが多くなったのかもしれません。

能面作りの醍醐味は「写し」。小さなきずまで写し取る

資料の写真と見比べて、相違がないことを確認する

資料の写真と見比べて、相違がないことを確認する

――能面は長い歴史を持っていますが、400年前と現在では能面の作り方に違いはありますか?

基本的に違いはなく、使う道具や材木は同じです。ただし、材料や道具の品質においては、あまりにも精製されておもしろみや特徴がなくなっています。

例えば、昔は能面に彩色する塗料や塗料を固定する材料(胡粉やにかわなど)の精製度が低くて不純物が多かったのですが、現代では非常にしっかりと精製されて扱いやすくなっています。それはそれで良い面もありますが、仕上がりの状態において色味や質感に深みが出にくくなっていることを意味しています。

また、私は形を作るまでは型紙を使っています。型紙は全て室町時代から江戸時代の間に制作された能面から3Dデータを取って作っていて、500点以上あります。

能面の世界では、形を作るまでの工程をいかにスピーディに行えるかどうかが重要です。というのも、能面の醍醐味(だいごみ)である写し(*4)の作業はそこから始まるからです。


*4 写し:手本となる能面の形や色などを忠実に再現して制作すること。


――いい能面や上手な能面とはどのようなものでしょうか?

能面の世界では、オリジナリティは全く評価されません。評価されないというよりも、個性や独自性は嫌っても自然に出てしまうもので、自分流に形を変えてしまうことがあってはならない世界なのです。これを「写しの文化」と呼んでいます。元の能面にある小さなきずや割れ・木の節目を、忠実に写せることが重要とされています。

江戸時代の終わり頃までは、日本の芸術の世界全般にこの「写しの文化」があったと思いますが、明治以降に外国の文化が入ってきたことでいろいろなことが変わりました。

外国の文化は、誰もやっていなかったことや作品の個性を評価します。西洋の文化が一気に入ってきたことで、日本でも個性が際立っていて、他にない独自性を持った作品が高く評価されるようになりました。


能や歌舞伎・茶道・武道など日本に古くから伝わる文化には、個性や創造力よりも型を重んじる精神が根付いています。しっかりとした先人の型や技術を修得することで、自分の世界を広げてきたのが、日本の文化だったといえます。

芸能や芸術などの文化における価値観は時代や地域によってさまざまですが、一番大事なのは見る人の心に何を残せるかということ。能面師など日本の伝統的な文化に関わる仕事に興味のある人は、人の心を打つものを作り上げるために、その仕事の成り立ちや歴史について調べてみてはいかがでしょうか。


【profile】能面師 後藤祐自(ごとう ゆうじ)

能面・狂言面 後藤祐自・祐門会 http://yuumonkai.sakura.ne.jp/index.html

この記事のテーマ
デザイン・芸術・写真」を解説

デザインは、本や雑誌、広告など印刷物のデザイン、雑貨、玩具、パッケージなどの商品デザイン、伝統工芸や日用品などの装飾デザインといった分野があり、学校では専門知識や道具、機器を使いこなす技術を学びます。アートや写真を仕事にする場合、学校で基礎的な知識や技術を身につけ、学外での実践を通して経験やセンスを磨きます。

「デザイン・芸術・写真」について詳しく見る

この記事で取り上げた
「能面師・神楽(かぐら)面職人」
はこんな仕事です

日本の伝統芸能である能、神楽で使われる面を作る職人。面打師(めんうちし)とも呼ばれる。能面には大きく分けて「神・男・女・狂・鬼」の5種類があり、その形態自体は桃山時代には完成していたといわれる。以後、その見本(本面という)を基に「写し」を制作することで長く継承されてきた。一方、神楽面には特定の形はなく、演目に合わせて独創も自由に許されている。いずれも働き方としては師匠となる技術継承者に弟子入りするのが一般的。日本古来の芸能に興味・関心があれば、仕事の満足感もいっそう深まる。

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