地球の歴史に「千葉」の名前が刻まれる!? 「チバニアン」ってどんな時代?

理科の教科書などで「白亜紀」や「ジュラ紀」といった時代に関する言葉を見たことがあると思いますが、実はこの並びに新たな時代が加わろうとしています。その名前は「チバニアン」。一体どうして千葉の名前が付けられているのでしょうか?
この記事をまとめると
- 地球の歴史の一部に「チバニアン」という名前が採用される見込み
- 千葉の地層から見つけた火山灰がチバニアン命名の決め手になった
- 地層など地球を構成する物質を知ることは、地球の将来を予測する手がかりとなる
千葉の地層が地球の歴史のカギを握る!?
「チバニアン(千葉時代)」と命名される見通しになったのは、今から約77万〜12万6千年前の時代。約46億年前に地球が誕生してから現在までのことを地質時代といい、その区分の中にはジュラ紀や白亜紀などがあります。これまでこの時代区分の名称に日本の名前が採用されたことがなかったため、大きなニュースとなり、千葉ではあるものを見ようと観光客で賑わっているようです。
そのあるものとは、地層のこと。地層は当時生きていた生物や気候などの特徴を知ることができるため、地球の歴史を知る上で地層の調査は欠かせません。地層に含まれるものとして代表的なものは理科の教科書でもおなじみのアンモナイトや三葉虫などが挙げられますが、発掘された場所がかつて海だったなど、周辺の地形や環境を特定する根拠となります。また、生物の化石だけでなく発掘される火山灰などの鉱物も重要です。
では、なぜ今回千葉が注目を集めたのでしょうか? 実は千葉の地層からある事実を示す貴重なものが発見されたからなのです。
チバニアンには、地球の歴史を知る上で重要な火山灰が含まれていた!
実は今回新たな時代が命名されるにあたり、チバニアンに対抗する候補がありました。それはイタリア南部の地域が由来の「イオニアン」。これまでも約3400万年前以降の地質時代名はイタリアにちなんだものが大半を占めています。
「そもそもなぜこの時代を新たに命名する必要があったの?」と不思議に思う人もいると思いますが、この時代には「地球で最後に起きた地磁気の逆転」という重要な出来事がありました。これは「北極と南極が入れ替わる」といえば、地球にとって大きな変化だったことがイメージしやすいかもしれません。
この北極と南極から発せられる地磁気は、私たちの生活に身近なものです。地磁気は今どこにいるのかを正確に知るためにも必要で、地磁気が乱れると地球上のあらゆる機械が誤作動を起こす可能性が出てきます。地磁気の逆転は過去360万年の間に約11回起こっていますが、その原因は未だはっきりと分かっていません。そのため、地質時代を決めるにあたり、地磁気の逆転が確認できるかどうかが重視されていました。
チバニアンがイオニアンに勝った理由はまさにこの点でした。地磁気の逆転を示すデータがイタリア南部の地層は不十分であったのに対して、千葉の地層からは地磁気逆転の年代を高精度で特定できる火山灰が見つかったのです。このことが「チバニアン」という命名の決め手になりました。
地球の過去だけでなく、未来を知るためにも重要な「地学」
地球の歴史を研究するために、46億年の歴史はいくつかの時代に分けられます。古生代・中生代・新生代などの大きな括りが有名ですが、長い地球の歴史をもっと詳しく知るにはさらに細かな分類が必要となります。旧石器時代に相当するチバニアンはネアンデルタール人が生きていた時代にあたり、この時代は温暖な間氷期で現在の地球の気候と似ているという特徴があります。
今回のチバニアンのように、地層など地球を構成する物質を調査することで、地球を科学的に解き明かす学問を「地学」といいます。地球について知ることは、今後地球で起こることを予測するためにも重要です。鉱物や岩石、地球内部のマントルなどを分析し、どうして地球は温暖化しているのか、温暖化は今後どうなるのか、その要因は何が考えられるのかなどを研究することによって、地球の将来の環境や災害を予測する手掛かりになるのです。
地球を構成する物質を通して、地球の誕生から未来までが研究対象となる壮大さが地学の魅力です。地球の歴史にロマンを感じる人は、ぜひ地学について調べてみてくださいね。
【参考文献】
産経ニュース
http://www.sankei.com/life/news/171113/lif1711130023-n1.html
SankeiBiz
http://www.sankeibiz.jp/compliance/news/171113/cpc1711131758003-n1.htm
日テレNEWS24
http://www.news24.jp/articles/2017/11/16/07378106.html
日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO2343630014112017EA2000/
毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20170623/ddm/003/070/044000c
https://mainichi.jp/articles/20160128/k00/00e/040/207000c
この記事のテーマ
「数学・物理・化学」を解説
私たちの生活基盤である自然界で生じるさまざまな事象や物質、それらが織りなす理論が研究対象です。宇宙や生物がどのようにして誕生し、どのような構造になっているのかという、究極的な知的探究心は人類ならでは。森羅万象の構造や性質、法則と変化を探求する物理や化学、その習得に必要な数学というように、これらの学問は互いに深く関連しています。未知の領域への研究を進めながら、さまざまな原理解明をしていく分野です。
この記事で取り上げた
「地学」
はこんな学問です
地上の鉱物、岩石から地球内部のマントルまで、地球を構成する物質を解明し、今後の予測などにも役立てる学問で、「地球科学」とも呼ばれることがある。研究領域はさまざまで、天然・人工の結晶などが対象となる「鉱物学・結晶学」、地質・地盤を対象とする「地質学」、地殻・マントルなどを対象とする「岩石学・火山学」などがある。地球を科学的に解明することで、温暖化対策や災害予測にも役立てようとする学問でもある。