オーダーミスも笑顔で受け入れる「注文を間違えるレストラン」とは?

オーダーしたものと違う料理が運ばれてきても、スタッフが突然隣に座って会話を始めても、お客さんは怒るどころかついつい笑みをこぼしてしまうレストラン。実は今、国内外で注目を集めているのです。そんな不思議なレストランを紹介します。
この記事をまとめると
- 認知症患者がスタッフを務める「注文を間違えるレストラン」
- 間違えることを否定しない、受け入れることで広がる新しい福祉の形
- スタッフとして働くことは、リハビリにもつながっている
ホールスタッフは認知症を患う人たち
レストランでハンバーグをオーダーし、目の前に運ばれてきたのがギョーザだったら……。通常なら、クレームになるようなオーダーミスも笑顔で許してしまう。そんなちょっと信じられないレストランが実際に存在します。それは「注文を間違える料理店」です。実は、このレストランのホールスタッフは、全て認知症を患う人たち。脳の細胞の働きが悪くなることで、記憶障害などが起こる認知症患者が活躍するレストランは、新しい福祉の形として国内外で注目されています。
間違った料理が出ることも楽しみの一つ。受け入れる姿勢が優しさにつながる
注文を間違える料理店では、料理はプロが担当しますが、客からオーダーを取り、料理を提供してくれるのは、認知症を患う人たち。頼んだものと違う料理が運ばれてくることもあります。
ホットコーヒーにストローが入っていたり、同じお客さんに水が2つ運ばれたり。中にはオーダーを取ることを忘れて、客と一緒の席に座ってしまうスタッフもいます。それでも誰も怒りません。むしろ間違った料理が出てくることも、このレストランでは楽しみの一つ。間違って隣に座ってしまったスタッフとも、会話は弾み、楽しそうな笑い声が響きます。間違えることを否定せず、受け入れることで、自然に優しさのあふれる空間が出来上がるのです。
日常の動作も「作業療法」と呼ばれるリハビリの一環に
訪れる人の心を、ほっとさせてくれる雰囲気のあるレストランですが、実は働く人にとっても、とても良いリハビリになっています。認知症の治療は、薬物療法とリハビリテーションによるものがメインとなってきます。特に、五感を使い、脳を刺激するリハビリは大切。また自らが働いたことの結果として、相手から認められることが心の満足感につながります。
注文を間違える料理店では、認知症患者の皆さんが客と話をしながらオーダーを取り、厨房に伝え、出来上がった料理を運びます。健康な人にとっては普通のことかもしれませんが、医療の分野では、このような日常生活や趣味・運動といった活動もリハビリにあたるとされます。これらを「作業療法」と呼びます。日常でよくある一連の動きこそが、患者の脳を刺激する良い体験になるのです。
2025年には団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になり、超高齢社会を迎える日本。今後は、作業療法士を始めリハビリを専門に扱う仕事が必要とされる時代になると予想されます。「病気やけがで体が思うように動かない人のサポートをしたい」という人は、リハビリテーションを学んでみませんか。
【参考サイト】
Readyfor
https://readyfor.jp/projects/ORDERMISTAKES
認知症ねっと
https://info.ninchisho.net/dem_cure/cu60
2025年ショック! 医療と介護は?
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/267288.html
この記事のテーマ
「医学・歯学・薬学・看護・リハビリ」を解説
高齢化社会では、長生きするだけでなく健康でいることが何よりも重要です。病気やけがなどによる身体・生理機能の変化を探り、元気に生活できるように治療するのが、医師、薬剤師、看護師、理学療法士などの専門家の役割。専門的知識と技術を身につけ、チームとして連携することで医療の質を向上させる方法を学びます。
この記事で取り上げた
「リハビリテーション・作業療法・理学療法」
はこんな学問です
リハビリテーションには、障がいを持った人の運動能力回復のための理学療法と、心身にわたる諸機能を回復するための作業療法がある。理学療法では、立つ・歩くなどの運動療法とマッサージや電気による物理療法を用いるための知識、技術を学び、「理学療法士」をめざす。一方、作業療法は、精神疾患なども含めて用いられるもので、たとえば、園芸や工芸を通じ、患者が生活の自立性を回復するための知識、技術を学び、「作業療法士」をめざす。
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PICK UP! 「リハビリテーション・作業療法・理学療法」について学べる学校
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