【シゴトを知ろう】蒔絵師 ~番外編~

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【シゴトを知ろう】蒔絵師 ~番外編~

2017.12.19

提供:マイナビ進学編集部

【シゴトを知ろう】蒔絵師 ~番外編~

400年近い歴史を持つ金沢漆器に関わる職人の仕事は、祖父から父、その子どもへと、代々受け継がれているケースも多いそうです。
3代目である加賀蒔絵の若き名工・清瀬明人(あきひと)さんに、蒔絵をしたことがあるちょっと変わった素材や蒔絵制作の難しさについて伺ったので、番外編として紹介します。

この記事をまとめると

  • 蒔絵を施す素材は木製の漆器に限らない。プラスチック製のチョロQも蒔絵で大変身!
  • 技術や経験が必要な細かい作業を積み重ねることで、一つの作品ができあがる
  • 「風呂」に入れると漆が乾く!? 仕事場には80年以上使い続けている風呂がある

金沢に伝わる伝統工芸は、加賀藩によって形づくられた

――金沢漆器の歴史と特徴を教えてください。

金沢漆器は、江戸時代に現在の石川県と富山県の辺りを治めていた加賀藩によって育成された工芸品です。加賀藩は、漆器だけではなく象嵌(*1)や刺しゅう、茶道などの工芸・文化振興に力を入れていて、これは石高が百万石を超え非常に勢いのあった加賀藩を恐れる徳川幕府の目をそらすために行った平和政策の一つと考えられています。

蒔絵による美しく緻密な装飾が特徴の金沢漆器は、加賀藩前田家3代目の利常(としつね)が、京都や江戸から蒔絵の名工を招いたことに始まります。武家文化と貴族文化が融合し、力強さと華麗さを兼ね備えた漆器制作の技術は金沢を代表する工芸として発展し、今に至るまで受け継がれています。


*1 象嵌(ぞうがん):馬具や武具などに使われる金属を装飾する技法。金属の表面を彫って溝を作り、その溝にほかの金属を嵌(は)め込むことで模様をつける。


――蒔絵を施す素材は漆器だけなのでしょうか?

木製の漆器が基本ですが、金属や陶器、べっ甲などに蒔絵を行うこともあります。

私の工房では「陶胎漆器(とうたいしっき)」と呼ばれる陶器に漆を塗った器への蒔絵を試みることもあります。これは香炉など、熱を帯びるものに使うことが多いですね。木製の漆器は熱で傷んでしまいますが、陶胎漆器は陶器がベースなので熱に強いんです。

また、少し変わったものでは、2年ほど前にチョロQに蒔絵を描きました。チョロQの製造販売元のタカラトミーさんの許可を得て、金沢ブランド工芸品開発促進事業から補助を受けて制作したのですが、かなり本格的な仕上がりになりました。

細部にまで手をかける蒔絵。制作期間は月、年単位!

江戸時代に作られた国宝「八橋蒔絵螺鈿硯箱」(作・尾形光琳)、「舟橋蒔絵硯箱」(作・本阿弥光悦)をもとに蒔絵が施されたチョロQ

江戸時代に作られた国宝「八橋蒔絵螺鈿硯箱」(作・尾形光琳)、「舟橋蒔絵硯箱」(作・本阿弥光悦)をもとに蒔絵が施されたチョロQ

――蒔絵を施した金沢漆器は完成するまでにすごく時間がかかると聞きました。例えば、蒔絵や漆塗りの作業工程にはどれくらいの期間が必要でしょうか?

お椀など小さなものでも、蒔絵の作業だけで3カ月は必要です。茶道具など点数が多く、収納する家具なども含めた大きなものになると、漆塗りの工程を含めて1年以上かかることも珍しくありません。

蒔絵は絵や模様の場所によって、蒔(ま)く金粉の粒子の大きさや色を変えます。それらの作業は同時に行えませんし、制作物の大きさによって工程が異なります。一度に複数の作業ができず、一つひとつ仕上げて漆を乾かしていく作業を繰り返すので、小さなお椀であっても蒔絵を完成させるのに数カ月かかるというわけです。


――蒔絵の制作工程において、一番気を使う部分はどこでしょうか?

蒔絵は非常に細い線を描くことがあります。この上絵(*2)を描くのが大変ですね。細い線を描いた後、最後に磨いて仕上げるのですが、線が細すぎるとその磨きの作業の時に削れてしまうことがあるんです。

細い線でありながらも削って無くなってしまわないように、絶妙なバランスを取ることが大事です。ここが一番、神経を使いますね。

また、乾燥の仕方によって色が変わったり、仕上がりの雰囲気が変わったりすることもあります。色の出方は温度や湿度にとても左右されやすいので、細心の注意と調整が必要です。場合によっては夜中もずっとそばにいて、乾き具合を確認しながら作業することもあります。


*2 上絵(うわえ):蒔絵の最終工程において、絵や文様の細部を仕上げる作業のこと。または、その絵や文様。漆をつけた筆で細かな線を描き、その上から金粉などを蒔(ま)いた後、漆を乾かして磨く。

蒔絵には欠かせない「風呂」とは?

「押入れの中にお風呂?」と思ったら、漆を乾かすための「漆風呂」だった

「押入れの中にお風呂?」と思ったら、漆を乾かすための「漆風呂」だった

――「風呂に入れる事」と書かれた紙が棚に貼ってありますが、どのような意味があるのでしょうか?

「風呂」とは、器などに漆を塗って金・銀の粉を蒔(ま)いた後、その粉が取れないように漆を乾燥させる棚や箱のことです。乾燥させるための風呂に入れ忘れないよう、貼り紙をしているんです(笑)。

うちには風呂がいくつかあって、祖父(初代・清瀬一光さん)の代から80年以上使っている木箱や、60年前の菓子箱を使ったものもあります。これらは密閉するためにふたの上に重しを乗せて使っています。


――気分転換にはどんなことをされていますか?

蒔絵は神経を使う細かい作業を何時間も続けるため、休日はなるべく体を動かすようにしています。

最近始めた趣味はマラソンです。マラソン大会に出場したことがあるのですが、すごく気分が悪くなったり足がつったりと散々な目に遭いました。それが悔しかったので、本格的に練習しています。


しっかりとした技術を持った職人が、漆を塗り直したり蒔絵を修復したりすれば、金沢漆器は半永久的に美しさを保つことができるそうです。「自分が死んだ後もずっと後世に残っていくことを考えて、責任を持って制作をしている」とおっしゃっていた清瀬さんの言葉が印象に残りました。

海外でも大変評価の高い日本の蒔絵技術は、将来に伝えていくべき伝統工芸の一つです。興味のある人は、伝統的な技術を身に付けられる職人への道も視野に入れてみてはいかがでしょうか。


【profile】加賀蒔絵師 清瀬明人(きよせ あきひと)

漆器の能作(のさく) http://www.kanazawa.gr.jp/nosaku/index.html

取材協力:漆器の能作

この記事のテーマ
デザイン・芸術・写真」を解説

デザインは、本や雑誌、広告など印刷物のデザイン、雑貨、玩具、パッケージなどの商品デザイン、伝統工芸や日用品などの装飾デザインといった分野があり、学校では専門知識や道具、機器を使いこなす技術を学びます。アートや写真を仕事にする場合、学校で基礎的な知識や技術を身につけ、学外での実践を通して経験やセンスを磨きます。

「デザイン・芸術・写真」について詳しく見る

この記事で取り上げた
「蒔絵師」
はこんな仕事です

漆器に金・銀の粉で絵や文様を描く「蒔絵」の職人。蒔絵とは、接着力が非常に強い漆の性質を活用し、漆で描いた絵や文様の上から金・銀の粉をまいて付着させる装飾技法のこと。漆器、家具、仏壇、万年筆などの装飾に用いられている。繊細な技術を習得し、一人前になるまでに時間を要するが、経験を積むごとに奥深い魅力に触れることができる。大学の美術系学部で学んだ後、漆器の生産地で先人の蒔絵師の仲間に加わるのが第一歩。印刷でも蒔絵表現の技術は向上しているが、伝統技術の継承者だけが本物を作り出せる。

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