【シゴトを知ろう】遺伝カウンセラー ~番外編~

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【シゴトを知ろう】遺伝カウンセラー ~番外編~

2018.01.15

提供:マイナビ進学編集部

【シゴトを知ろう】遺伝カウンセラー ~番外編~

遺伝のことで悩み、時に究極の選択を迫られる患者に対し、彼らの自律的な意思決定を手伝う「遺伝カウンセラー」という仕事。そのような難しい場面においてどのようにサポートしているのか。遺伝カウンセラーの田村智英子さんに伺いました。

この記事をまとめると

  • 遺伝カウンセリングでは、専門的な情報を整理して教えてもらえる
  • 妊娠中の胎児の疾患を調べる検査の相談や、がんや神経難病などの遺伝の相談にも対応
  • 何にでも遺伝の要素はあるが、ほとんどのことは遺伝だけでは決まらない

心配している人に適切な情報を伝えられるのが一番の喜び

――クリニックではどういうご相談を受けることが多いですか?

最近は出生前診断について相談に来られる妊婦さんが増えています。高齢出産で生まれてくる子にダウン症候群の可能性がないかを心配される方が多いです。

日本では、出生前診断を受けている妊婦さんは少数派で、全体の10%に満たないと思います。日本の社会では、胎児の検査をして障がい児と分かったら中絶することに対して消極的な意見が強く、医師の間でも「妊婦に積極的に説明する必要はない」と考えている人は少なくありません。妊婦さんが胎児の検査について質問しただけで冷たい態度を取る医師もいます。

でも、デリケートな問題だからこそ、一人ひとりがきちんと情報を得て自分で考えて決めることが重要だと思うのです。私たちは検査などの選択肢の情報を提供し決断のポイントをお示しして情報の整理をお手伝いしますが、不安があってもきちんと情報が把握できるだけで落ち着いた気持ちになる方が多いと実感しています。

心が安らぐよう配慮されたクリニックの待合室

心が安らぐよう配慮されたクリニックの待合室

――検査を受けてお腹の中の子どもに先天的な疾患や障がいがあると分かったとき、皆さんの決断をどのようにサポートされているのでしょうか。

私は、その人が決めたことがどのような方向性であっても、100%尊重しサポートすること、そしてそれを最初からきちんとお伝えすることを大事にしています。

どのような疾患が見つかったかによっても決断は違ってきますので、胎児で判明した病気や障がいについて、生まれてからその先どうなるか、症状だけでなく、治療の実際や入院や通院が必要か、経済的な支援制度や生活の様子、これまでの患者さんやご家族の意見など、多方面の詳しい情報をお伝えし、さまざまな質問に一つ一つ丁寧に答えます。

また、良いことだけ、あるいは、悪いことだけを強調したりせずに、自分の価値観を挟まないで、良いことも悪いことも隠さず正直に話すことも大事にしています。妊娠継続か中絶かという判断は重たい決断ですが、家族や仕事などいろいろな事情が絡む中、一生懸命考えて決めておられる方々を見る度に、本当に頭が下がる思いです。

がんや神経筋疾患の遺伝の相談にも対応

――出生前診断以外では、どんな相談にのってもらえるのでしょうか。

がんの遺伝の相談にも対応しています。ご自身やご家族のがん履歴をうかがって、遺伝的ながんリスクがありそうかどうか検討したり、遺伝子の検査ができる場合はそうした手段も利用したりして、それぞれ遺伝的ながんリスクがどのくらいあるか判断します。そして、そうした遺伝的ながんリスク情報に基づいた予防策、特に、特別メニューでのがん検診などをきちんと受けていただくことができるように、情報提供しています。

また、遺伝性神経筋疾患の家系の方が、「発症前診断」と呼ばれる遺伝学的検査について相談に来られる場合もあります。遺伝性の神経筋疾患の中には大人になるまで症状が出ないものもあるので、例えば父親の神経疾患が自分に2分の1の確率で遺伝している可能性があるが今のところ無症状という人が、自分に疾患が遺伝しているかどうかを遺伝子の検査で調べることができるのです。

結婚したり子どもをもうけたりする前に自分に病気が遺伝しているか調べておきたいと相談に来られる方が多いですが、いろいろ話していると、その方の中でも自分の将来を知っておきたい気持ちと知るのが怖い気持ちが交錯していたり、配偶者や兄弟姉妹、親や子などのご家族がそれぞれ違う思いを抱いていたりします。

予防法や治療法のほとんどない神経疾患が遺伝しているかどうかを調べる検査を受けるべきか否か、簡単に決められないことも多々あります。検査をすべきかどうかに正解はありません。私としては、それぞれの個人やご家族にふさわしい方向性が見えてくればと思いながら、じっくり話し合いを重ねています。


――深刻な悩みと向き合う毎日だと思いますが、お仕事の息抜きはどのようにしていますか?

海外旅行です! 今年はお正月にトロント小児病院の先生に会いに行き、1月はサンフランシスコでがんサバイバーシップのシンポジウムに参加しました。GWにはスイスに遊びに行き、6月は出生前診断の学会でドイツに、夏休みはノルウェーへ。9月にはシアトルの学会に行き、11月はメキシコで開かれた国際患者大会に行きました。モダン建築が好きなので行った先々で見に行きます。国内も、学会や講演であちこち旅していますが、飛行機に乗るとわくわくします。


――遺伝に関して私たちが知らないこと、意外な事実があれば教えてください。

どんなことにも少しずつ遺伝的要素が絡んでいますが、その比重はものによって異なります。たとえば、身長には親から伝わる遺伝的要因がある程度影響しますが、体重には遺伝的要因より生活習慣、環境の影響のほうが大きいと考えられています。ですので、太っていることを親のせいにはできませんね(笑)。私もついつい、良いことは自分の手柄だと思い、悪いことは遺伝のせいにしがちですが、ほとんどのことは遺伝だけでは決まらないということも、覚えておきたいことだと思います。

また、がん家系であることを心配する人も多いですが、今は日本人の2人に1人ががんと診断されている時代。がんはみんなに起こりうる疾患なのです。もちろん、がん患者さんの5から10%には遺伝的ながん体質があることも事実です。遺伝的ながんリスクが高いかもと思う方は、ぜひ遺伝カウンセリングの機会を利用して専門家にがんの遺伝性を評価してもらったらよいと思います。そうしたことがなくても、がんは誰でもかかる病気と考えて、適切ながん検診を受けていくことは大事だと思います。


――田村さんはアメリカの認定遺伝カウンセラーの資格もお持ちですが、現在日本で遺伝カウンセラーとして働く中で、日米のギャップを感じることはありますか?

アメリカでは遺伝学的な情報を生かした病気の診断や治療がどんどん現場に普及しています。一方日本では、遺伝子を調べる検査や遺伝カウンセリングの健康保険適応が一部のみに限られていたり、遺伝的にがんリスクが高い人の特別メニューでの検診を受けられる医療機関が少なく費用も私費負担であったりと、遺伝子やゲノムの情報を医療に生かすにはさまざまなハードルがあるように感じます。また、アメリカの医療では各職種が横並びで役割分担しているのに対し、日本は医師を頂点としたピラミッド構造があるので、遺伝カウンセラーが医師を補佐する立場に留まることが多い状況もあります。


――そうした障壁がある中、お仕事のモチベーションはどういうところに?

現在勤務しているクリニックの院長は、海外の状況にも詳しく、お互いの価値観も共鳴するところがあり、多くの仕事を任せてくれています。その分、勉強もかかせませんし責任も伴いますが、日々、大勢の方々からさまざまなお話をうかがって感銘を受けたり視野が広がったりして私のほうが学んでいることが多々あります。この仕事は本当に自分の心を豊かにしてくれる仕事だなあと感じています。



遺伝子の情報が多くの病気の診断や治療に生かされるようになってきて、誰もが遺伝子の検査や遺伝の話に直面する時代がすぐそこにきていると感じます。田村さんは「お互いの異なる価値観を認め合い、誰もが安心して病気にかかることができる社会、病気になったときにお互いに支え合う社会にしていきたい」と言います。田村さんのように、社会や人に向ける公平で優しい目を持つ人が、遺伝カウンセリングの仕事に向いているのかもしれません。


【profile】FMC東京クリニック 遺伝カウンセラー 田村智英子
http://www.fmctokyo.jp

この記事のテーマ
医療・歯科・看護・リハビリ」を解説

医師とともにチーム医療の一員として、高度な知識と技術をもって患者に医療技術を施すスペシャリストを育成します。医療の高度化に伴い、呼吸器、透析装置、放射線治療などの医療・検査機器の技師が現場で不可欠になってきました。専門的な技術や資格を要する職業のため、授業では基礎知識から医療現場での実践能力にいたるまで、段階的に学びます。

「医療・歯科・看護・リハビリ」について詳しく見る

この記事で取り上げた
「遺伝カウンセラー」
はこんな仕事です

がんなどの疾患や先天性の心疾患・障がいなどに悩む患者の相談を受けて、遺伝的な原因の有無を調べる。遺伝子・染色体検査に関する情報を提供したり、心理的、社会的なサポートを行ったりする仕事。主に病院や診療所、大学などに勤務して、臨床遺伝専門医との連携により業務にあたる。医師と連携しながらも、より患者に近い立場に立ち、患者自身の自立的な意思決定を支援することが目的。日本遺伝カウンセリング学会と日本人類遺伝学会により認定される資格を有する専門職で、認定された大学院で養成専門課程が開設されている。

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