椅子に座りたくなるのはあの形だから!? デザインに潜む理論

ドアや階段などの設備、インテリア・Webサイトに至るまで、デザインする上で重要とされているのが「アフォーダンス理論」という考え方です。あなたが椅子に座るとき、無意識に「座りたくなる形だから」座っていることを知っていましたか? 今回は、人に使ってもらえるデザインを考える上で重要なアフォーダンス理論の考え方と例を紹介します。
この記事をまとめると
- アフォーダンス理論とは、物やデザインが人間に行動を促すという考え
- この理論に基づいて作られているものは身近にたくさんある
- 見た目の良さだけではなく、使いたいと思わせることが重要
「行動を促すようなデザイン」がアフォーダンスの基本
「アフォーダンス」という言葉を聞いたことあるでしょうか? この言葉は、「与える」「提供する」という意味の英語「afford」から作られた言葉です。デザインにおけるアフォーダンスとは、「行為の可能性」という意味で使われています。突然そういわれても、理解するのが難しいですね。
例えば、小石が落ちていたとしましょう。私たちが見つけたときに、小石は私たちに対して、投げる・つかむ・砕く・落とす・噛む・鼻に詰める・色を塗るなど、さまざまな行為をする可能性をアフォード(提供)しています。私たちは、その小石に対して行動できる可能性の中から、いずれかを選択して行動します。
このように「物が人間に、使われ方(行為の可能性)を提供している」と考える理論が、アフォーダンス理論です。
なぜ、わざわざそんな考え方をするのでしょうか? それは直感的に使える、良いデザインを作る基本の考えができるからです。
一例を挙げると、あなたの前にドアがあるとします。もしそこにドアノブが無く、ドアノブの代わりに平らで薄い板が付いていたら……あなたは迷わず押すでしょう。つまりデザインにドアを押すよう、誘導されているのです。
もしドアノブがついていた場合、押せばいいのか、引けばいいのか分からず、開けるのにもたついてしまう場合もあります。
このように、デザインから誘導するという発想がないと、ドアをデザインしたときに何も考えずドアノブをつけてしまい、利用する人が使い方を迷うデザインにしてしまうかもしれません。直感的に使えるデザインを作るため、または直感的に使えないデザインを作らないために、アフォーダンス理論の考え方が活用できるのです。
アフォーダンス理論に基づいて作られているものは、身近にたくさんあった!
椅子もアフォーダンス理論に基づいて作られています。椅子に座ったことがある私たちは、椅子のような形状(膝ぐらいの高さがあり平たい座面を持っているもの)を見ると、思わず腰掛けてしまいます。それは座れそうだと感じる高さや背もたれがあるデザインに誘導されているからです。逆に、もし座面が胸の位置まであったり斜めだったりしたら、座りにくそうと感じて、そこに座りたいとは思わないのではないでしょうか。
その他にも、スイッチやボタンを見ると「これは押すと何かが作動するものだ」と判断します。スマホで見るアプリやWebサイトでも、立体的に浮かんでいて、指のマークがついているボタンがあれば、押せることがすぐに分かります。
また、赤い文字に重要なことが書いてあるという経験を持っている私たちは、看板の赤い文字で書かれた注意書きを重要であると判断し、よく読もうとします。
当たり前のものから新しい技術のものまで、アフォーダンス理論は考えられているのです。
見た目の良さだけでなく「使いたいと思わせる」デザインが重要
ビジネスの世界でも、直感的で使いやすいデザインは重要です。より多く使ってもらえることが、お客様の満足度や利益につながるからです。
椅子をより多くの人に利用してほしければ、座りたくなるデザインで作ることが大切です。ショッピングサイトでも同様に、商品の購入をしてほしければ、押したくなる購入ボタンを設置すれば良いのです。
活用される、使いやすいデザインをするときには「見た目の美しさ」だけではなく「使いたいと思わせる」ようにデザインを考えることが重要です。このような、使いやすさを備えた優れたデザインやビジネスの成功につながるデザインは、デザイン工学科で基本を学ぶことができます。
自動運転自動車や、医療用ロボットなど新しい技術には、新しいデザインが求められます。デザインを学び、使いやすさを探求するのも楽しいかもしれませんね。
【参考サイト】
アフォーダンス理論に基づく情報行動研究の可能性
http://current.ndl.go.jp/files/ca/ca1651.pdf
この記事のテーマ
「工学・建築」を解説
工業技術や建築技術の発達は、私たちの生活を快適で安全なものに変えてきました。先人たちが生み出した知恵に新しい技術をプラスすることで、技術はいまも進歩し続けています。インフラの整備や災害に強い街作り、エネルギー効率の高い動力機械やロボット開発など、暮らしを豊かにする先端技術を学びます。
この記事で取り上げた
「デザイン工学」
はこんな学問です
工業製品や建築物はもとより、都市や生活環境、情報にまで及ぶ広範囲な対象物を、工学と芸術双方の視点から捉えてデザインを追究する学問。「空間・環境・建築デザイン工学分野」では、建築学や景観論、生活文化を学ぶことで、豊かな住環境デザインを考える。「ヒューマンインターフェース分野」は、光や音、熱の物理的な解析などから、マルチメディアのデザインを考える分野。商品開発から都市開発、建築、機械と研究を生かす領域は幅広くある。
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