【シゴトを知ろう】ナニー 編
保育園が不足している近年、注目を集めつつある職業が「ナニー」です。ナニーは子どもの世話だけではなく、しつけや教育を行う幼児教育の専門家として活躍しています。
今回は株式会社シェヴの本田里紗さんに、ナニーのやりがいやこの仕事に就いた経緯について伺いました。
この記事をまとめると
- 子どもの世話やハウスキーピングに加え、教育も行っている
- 子どもが過ごす環境が、成長に影響を与えている
- 各家庭の生活スタイルに柔軟に対応する必要がある
ただ世話をするのではなく、成長を促す感覚づくりを心掛けている
Q1. 仕事概要と一日のスケジュールを教えてください。
私が所属している会社はお子様の日常的なお世話や教育、そしてハウスキーピングを行っています。その中で私はナニーとして、家庭に訪問してお子様を預かったり、オフィスでお客様からいただいた育児相談に対応したりしています。
家庭に訪問したときは、対応する時間やお子様の一日の生活リズム、育児方法を確認してから仕事を始めます。具体的な仕事の内容は依頼によって異なります。公園で遊んだり散歩したりする日もあれば、室内で本の読み聞かせをしている日もあります。
また、5歳以上のお子様には学校や塾の宿題をお手伝いして勉強面のサポートを行っています。さまざまな依頼を受けていますが、共通して心掛けているのは環境作りです。いろいろな音が聞こえると聴覚の発達に悪影響ですし、やみくもに注意したり叱ったりしているとお子様が怒られることに慣れてしまいます。より良い成長を促すために、お子様が過ごしやすい環境を整えているのです。
一日のスケジュールは日によって異なります。朝から晩までお預かりするなら、朝9時にお宅へ訪問してご両親と依頼内容を確認。午前中は依頼内容に沿ってお世話し、お昼にはお子様に昼食を食べてもらいます。その後お昼寝の時間中に家事の依頼があれば掃除や調理をします。ご両親が帰宅したら一日の報告をして、お子様を寝かしつけた後に退勤します。ただ、このように一日中お子様をお預かりする日はまれで、3〜5時間ほどお預かりする日が多いです。
Q2. ナニーの楽しさ・やりがいは何ですか?
お預かりするお子様は、その子だけの個性を持っています。空想の物語を現実のように話す子や大人のような話し方をする子など、さまざまな個性を知る楽しみがあります。
中にはお母さんと離れる不安から泣いてしまう子や怒ってしまう子もいますが、一緒に過ごしているうちに安心した表情や笑顔を見せてくれるようになります。お子様が心地良さを感じてくれたと分かる瞬間で、何よりうれしくなります。
また、赤ちゃんが生まれる前から準備を手伝いに伺う家庭もあり、出産後にお母様から「安心してゆっくり過ごすことが出来ました」と声を掛けていただけるとやりがいを感じます。
Q3. ナニーで大変なこと・つらいと感じることはありますか?
大事なお子様を預かる以上、けがをさせてはいけません。しかしお子様は走るのも狭い場所も大好きで、安全に過ごしてもらうのは大変です。特に小さいお子様だと叱っても「なぜだめなのか」を理解できませんし、注意される状況に慣れて話をしっかり聞かなくなってしまう可能性もあります。
そのため、初めて行く場所でも危険なものを素早く把握して、お子様の行動を制限する必要がないように危険から遠ざけています。お子様と接するときは子どもの目線で、安全確認をするときには大人の目線を持つという意識の切り替えに苦労しています。
自身の子どもが入園する前に保育園に通うことに!?
Q4. どのようなきっかけ・経緯でナニーの仕事に就きましたか?
私自身の子どもを保育園に預けるか考えたときに「子どもにとって本当に心地良い生活とはどんな環境だろうか」と考え、まずは自分が保育現場について知るために保育園や幼稚園に相談してアシスタントとして働きました。その後、保育士資格を取得して担任を持つようになり、受け持った園児が卒園する姿を見て子どもの成長は可能性に満ちていると実感しました。
また、保育士として働いている頃に療育(障がいを持つ子どもの学習支援や成長を促すこと)の先生に出会いました。共感できる話を聞き、より療育について学びたいと相談したところ、その先生の職場で実習をさせてもらえたのです。その中で子どもの感覚を伸ばすために適した環境があると知りました。療育に限らずどんな子どもにも当てはまる考え方だと思い、一人でも多くの子どもの成長に生かしたいと今の仕事に就きました。
Q5. 大学では何を学びましたか?
文学部に通い、日本の現代文学や古文、心理学を学びました。中でも心理学では児童心理学や発達心理学といった子どもたちと触れ合う上で役立つ知識を学びました。また、ご両親とより良い関係を築く上で欠かせないコミュニケーションにも心理学の知識が生きています。
Q6. 高校生のとき抱いていた夢が、現在の仕事につながっていると感じることはありますか?
高校生の頃は小学校か中学校の先生やカウンセラーを目指していました。小学校の先生の授業がとても楽しくて、自分も子どもと接する仕事に就きたいと思ったのです。また、通っていた高校の敷地内に修道院があり、乳児院の子どもたちと遊ぶ機会もありました。私にとって子どもとの交流は日常的なものだったのです。子どもたちの成長という点では、教師とナニーにはつながりがあるかもしれませんね。
一人前のナニーになるためには、たくさんの子どもと接する必要がある
Q7. どういう人がナニーに向いていると思いますか?
やはり子どもが好きという気持ちが何よりも重要です。また、伺う家庭の生活スタイルは十人十色。自分の考えとは合わないご家庭に立ち会う場合もありますが、悲観したり驚いたりせずに柔軟に対応し、子どもと楽しく過ごすことが大切です。明るくタフで優しい方に向いている仕事だと思います。
Q8. 高校生に向けたメッセージをお願いします。
公園や児童館といった子どもが集まる場所に足を運んでみてください。そしてよく観察して、子どもはどんなことをして遊ぶのか、どんなことがあると喜ぶのかを知ると自然に子どもとの接し方が理解できると思います。
しかし子どもにはさまざまな個性があり、最適な接し方は一つではありません。経験を重ねるほど豊富な幼児教育の知識を得られます。一人前のナニーになるまでには大変なこともあるかと思いますが、子どもたちの成長をお父様やお母様と一緒に感じて、感動を共有できるやりがいのある仕事ですよ。
自身が子育てをするのをきっかけに、育児や幼児教育に関心を持ったと教えてくれた本田さん。アシスタントとして働きたいと保育園に声を掛けたり実習を受けたりと積極的に行動した結果、幼児教育の知識を身に付けたのですね。
皆さんも勉強や部活動に取り組むときには積極的に周囲の人に話を聞いてみてはいかがでしょうか。一人で取り組む以上の結果を得られるかもしれませんよ。
【profile】株式会社シェヴ 本田里紗
この記事のテーマ
「保育・こども」を解説
乳幼児から小学生までのこどもの生活を保護し、心身の成長を促すための専門知識を身につけます。こどもの心身の発達や行動、保健・衛生、基本的な読み書きや情操教育、体操といった体力向上教育など、学びの分野は多岐にわたります。保育士の資格取得者の職場は保育園だけでなく、企業内の保育施設などにも広がりつつあります。
この記事で取り上げた
「ナニー」
はこんな仕事です
乳幼児の日常の世話をはじめ、勉強やしつけ、個性や創造性を育む教育などを行う、育児と教育のスペシャリスト。イギリス発祥の職業で、欧米を中心に発展し、最近では日本でも企業が養成教育を行うなど広がりを見せている。利用者の家庭を訪問、もしくは住み込みで働くこととなる。同じく乳幼児の世話を行うベビーシッターとの違いとして、よりよい乳幼児教育を授ける専門家としての役割も求められる。近年の保育園不足や早期教育への期待によって、ナニーに対する需要が徐々に高まりつつある。
-
PICK UP! 「ナニー」について学べる学校
-
保育・こどもについて学べる学校

