【シゴトを知ろう】同時字幕制作者 編
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テレビのリモコンボタンについている「字幕」ボタンを押すと、テレビで流れている音声に字幕がついている状態で番組を見ることができます。同時字幕制作者とは、独自システムを使い、音声をリアルタイムで字幕にする仕事です。
今回は、主にニュース番組やスポーツ番組のリアルタイム字幕制作を行う株式会社フェイスの北村泰孝さんに、お話を伺いました。
この記事をまとめると
- ニュース番組などの日本語音声をリアルタイムで日本語字幕化する仕事
- 放送局とインターネット回線を通じてデータのやりとりを行う
- スピードを要求される作業スキルと共に、事前の下調べが重要となる
主に聴覚に障がいのある方や高齢者に向けて日本語の音声を字幕にする
Q1. 仕事概要と一日のスケジュールを教えてください。
テレビがデジタル放送になってから、多くの番組が字幕付きで見られるようになりました。ここでいう字幕制作者は、出演者が話している日本語音声をリアルタイムで字幕にする仕事です。千葉県松戸市のオフィスで、放送局とインターネット回線で結び、作業を行っています。
現在、テレビの生放送のニュース番組・スポーツ番組・バラエティー番組など、多岐にわたる番組の字幕を請け負っています。
ニュース番組では話している内容全てに正確な字幕をつけますし、バラエティー番組ではテロップを生かした字幕をつけるなど、番組の内容によって異なる対応をしています。
<一日のスケジュール>
10:00 出社 FAXで届いたニュース原稿を確認、放送前の準備、放送局との機材通信テスト
11:50 ニュース番組本番
本番終了 データ管理(正しく放送されたか、タイミング・重複などを確認)
13:00 休憩
14:00 業務再開 反省会、夕方のニュースの準備
17:30 ニュース番組本番
本番終了 データ管理
19:00 帰社
Q2. 仕事の楽しさ・やりがいは何ですか?
生放送は1回勝負なので、張りつめた空気の中での仕事になりますが、終われば「やりきった!」という達成感があります。自分が作った字幕が放送で広く世の中に流れることはすごいことだと思いますし、仕事を通じて聴覚に障がいのある方をはじめ、人々の役に立てることはうれしいです。
Q3. 仕事で大変なこと・つらいと感じることはありますか?
バラエティー番組では、複数の出演者の声が入り乱れますので、音声を拾うことが難しいです。また、スポーツ番組などでは、アナウンサーと解説者の掛け合いを聞きながら、不要な言葉を適宜カットし、できるだけ分かりやすく字幕にする必要があります。言葉の取捨選択を常に考えながら字幕にするので大変疲れます。さらにスポーツ番組は長時間番組が多いので、それなりの体力が必要です。
他にも、放送局によって表記のルールが異なるので、放送局毎の仕様を覚え、当てはめるのですが、これも簡単ではありません。
子どもの頃からニュースは身近な存在。要約の勉強が仕事の面で役に立っている
Q4. どのようなきっかけ・経緯でその仕事に就きましたか?
字幕の仕事を始めて12年になります。初めは営業職でした。たまたま人手が足りない時に制作を手伝ったことをきっかけに、徐々に字幕制作をするようになりました。
ゼロからのスタートで、最初は技術も何もありませんでしたので、リアルタイム字幕ではなく、DVDに録画した作品の字幕を付けることから入りました。
Q5. 大学では何を学びましたか?
国際関係学部でした。世界情勢に強い関心があり、この学部を選んだのです。ですから、学生時代からニュースは好きでした。子どもの頃から両親にも「ニュースは見ておくように」と言われて育ちましたし、家のテレビでもニュース番組が流れていることが多い家庭だったので、ニュースはいつも身近なものでした。
Q6. 高校生のとき抱いていた夢が、現在の仕事につながっていると感じることはありますか?
高校時代は部活でスポーツに励んでいました。進学の際、学校推薦型選抜で受験する大学の試験内容が面接と小論文でした。そのため受験対策として、小論文を書く文章要約の練習をかなりやりました。その経験が、現在字幕制作の仕事をする上で役に立っていると思います。発言者の言葉の中から、重要な部分をピックアップするという作業の訓練になったようです。でも、将来の職業については、高校生の頃にはまだ具体的には考えていませんでした。
自分の知識に自信を持って取り組むことができるのがスキルの高い技術者
Q7. どういう人が同時字幕制作者に向いていると思いますか?
ニュースを取り扱う仕事なので、ニュースを見たり読んだりして調べることが好きな人の方が向いていると思います。
実は同時字幕制作の仕事って、事前に調べることの割合がとても高いんです。タイピングをはじめとした操作スキルももちろん必要ですが、同時字幕制作者の技能の高さは、自分の知識にどれだけ自信を持って取り組めているかが大きく左右すると思います。
例えば「イージス艦」と言われて、何も思い浮かばなかったら、正しい表記をタイピングすることもできないですよね。ですから、語彙が豊富で漢字を知っている人、調べものが苦にならない人が望ましいです。
もちろんタイピングは早い方がいいです。採用時には、応募者にタイピングのテストをしています。そこで早さと正確性を見るというのも一つの判断基準になっています。
その他では、生放送の字幕は番組の放送時間に合わせて作業する必要があるので、不規則な勤務時間になることがままあります。そのため、体力がある人が向いているとは思います。
耳の良さに関しては、ごく普通のレベルで大丈夫だと思います。音声の聴き取りに関しては、スタッフみんなで協力して必死に聴き取っていますね。
Q8. 高校生に向けたメッセージをお願いします。
自分の興味に従って分からないことを自分なりに調べたり、いろいろな人にどんどん話を聞いた方がいいと思います。物事の調べ方や知識を深める方法を知っていれば、調べる分野が変わっても応用が利くと思います。また、この仕事では特にそうですが、そもそも無駄な知識などないと思います。
何事もやり続けることで形になると思います。みなさんも勉強を一所懸命頑張ってください。
リアルタイムで音声を字幕化していくためには、字幕制作者の語彙や知識の引き出しと理解力、さらにスピーディーな作業スキルがものをいうことがよく分かりますね。聴覚に障がいのある方や高齢者のための字幕をつける字幕制作者は、広く世の中の役に立つ重要な仕事です。
【profile】株式会社フェイス 字幕ソリューション事業部 制作1課 課長 北村泰孝
株式会社フェイスhttp://www.faith-up.com/
この記事のテーマ
「マスコミ・芸能・アニメ・声優・漫画」を解説
若い感性やアイデアが常に求められる世界です。番組や作品の企画や脚本づくり、照明や音響などの技術スタッフ、宣伝企画など、職種に応じた専門知識や技術を学び、実習を通して企画力や表現力を磨きます。声優やタレントは在学しながらオーディションを受けるなど、仕事のチャンスを得る努力が必要。学校にはその情報が集められています。
この記事で取り上げた
「同時字幕制作者」
はこんな仕事です
携帯電話などで利用できる、ワンセグやデジタルテレビ、講演会などリアルタイムに字幕化するために活躍する職業。映画の字幕・翻訳とは役割が大きく異なる。主に高齢者や聴覚障害者のために必要とされる。話し手のスピードと同じ速さで字幕化するため、300字以上の入力を1分間でこなさなければならない。言葉や発音を正確に聞き取って入力する技術や集中力、同音異義語を瞬時に理解し、正しい漢字へと当てはめる。雇用形態は正社員から在宅までさまざまだが、多くは映像会社や字幕制作会社、速記事務所などに所属する。
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