為替相場って変動する必要はあるの?

為替の固定相場制と変動相場制の違いを見ながら、どちらのシステムがその国にとって適しているのかを考えていきましょう。
この記事をまとめると
- 変動相場制ではどのように為替相場が決まるのか
- 固定相場制の概要と適した国は
- 国にとって最適な為替システムとは何なのか
通貨の需要と供給のバランスでレートが決まる
海外旅行が好きな人はもちろん、海外に行ったことのないような人でも外国為替相場、日本では特にドル・円相場の変動を肌で感じたことがある人は多いと思います。
自国通貨の価値が外国通貨の価値に対して変動する為替システムのことを変動相場制といい、通貨の需給によってレートが決まるメカニズムです。例えば日本円の需要が低ければ円安に、円の需要が高くなれば円高になります。
しかし時として急激な為替の変動は、安定的な経済活動を脅かす原因になります。それではなぜその国の経済にとって最適と思われるレベルに為替を固定することができないのでしょうか?
日本もかつては固定相場制だった
日本は1949年4月に1ドル=360円と設定されて以来、固定相場制をとっていました。
固定相場制の下では自国通貨をある他国通貨に対して一定のレベルで固定するため、安定的な経済活動が行えるという利点があります。また、比較的経済基盤の弱い国にとっては自国通貨の信用が低いか、その需要が極端に小さいため、安定した強国の通貨に自国通貨を固定した方が自国の経済を守りやすいということもあります。
その一方で、経済発展が進み自国の経済が強くなっても為替相場はその経済格差から生じる貿易不均衡を相場変動によっては吸収しないため、自国の通貨が本来あるべき価値よりも安く設定されている状態になります。そうすると貿易相手国では安い輸入製品ばかりが売れて、自分たちの製品は売れないという不公平感を生みます。
戦後の急激な経済発展により日本円の需要は急激に高まり、円の国際的信用力は強固なものとなっていきました。逆にそれまでの基軸通貨とされてきた米国ドルの需要は低下していきました。そのため縮小した経済格差から生まれる貿易不均衡を是正するべく、1973年に日本は変動相場制へと移行しました。
その後、米国がドル安を容認する姿勢をとったことでドルの下落傾向が続き、円は1ドル=300円前後から250円を割り込む水準にまで上昇し、1985年の「プラザ合意」による先進5か国のドル売り協調介入で相場は2年以内で一気に1ドル=140円に、そして95年には円は史上初めて対ドル80円割れまで値を上げました。
最適な為替システムとは?
これまで世界を取り巻くさまざまな情勢が為替に影響を与えてきました。近年ではヨーロッパ経済圏のユーロのような地域ブロック共通通貨の導入を検討する動きも見られます。
また共産主義圏といわれるロシアはユーロとドルに連動する固定相場制から、政治環境や短期的な為替の値動きから儲けを得ようとする投機的な動きに揺さぶられ、2014年に変動相場制に移行しました。
また中国は2005年より管理変動相場制をとっていますが、このシステムは人民元の取引を特定の銀行に限定し、通貨当局が管理を行うものです。このように為替システムは経済だけでなく、政治環境も多大な影響を受けます。
経済学では過去の危機を検証しながら為替市場をどのような制度の下で運用していくのが最適か模索してきました。今後も時代とともにそのあり方は変化していくでしょう。
この記事のテーマ
「経済・経営・商学」を解説
そもそも「どうすればお互いにとって必要な物資が手に入れられるか」という極めて単純な動機から始まった商取引が、極めて高度に煩雑化してしまいました。だからといって、すでに引き返すことができないのは事実であり、現状を正確に把握して最適な選択をするのが私たちの役割でしょう。しかも、単純に取引価格だけですべてが決まる時代ではありません。国家間の争いや異常気象など、カバーしなければならない要素が目白押しです。
この記事で取り上げた
「商学」
はこんな学問です
企業と消費者を結び付けるビジネスそのものを学ぶ学問。経済学が企業を取り巻く経済活動を研究し、経営学が企業内の経営管理を主な研究テーマとするのに比べて、商学は、商業という個別の企業と消費者の関係に注目する。たとえば、マーケティングでは、消費者との持続的な関係をいかに築くかがテーマとなり、ターゲットである消費者の特性に応じたアプローチが研究される。また、商取引に関わる分野としては、ほかに貿易、金融などが挙げられる。
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