【シゴトを知ろう】養護教諭 ~番外編~

皆さんにとっても、身近な存在である養護教諭。「【シゴトを知ろう】養護教諭 編」では健康課題を解決するために、養護教諭は学校の衛生管理から外部講師とのやり取りまでさまざまな業務をしていることを伺いました。
今回の番外編では、健康課題の解決だけに留まらない、養護教諭の仕事に必要な考え方について教えていただきました。
この記事をまとめると
- さまざまな人と接する養護教諭の仕事には良好な人間関係の構築が必要
- 生徒のケアには多面的な状況判断をするように意識している
- 保健委員会の活動を経て、生徒が成長するとやりがいを感じる
日常会話を通して、他の教員と良好な人間関係を構築する
――養護教諭になってから驚いたことはありますか?
今まで見た養護教諭の方は子どもたちとしっかり会話をしていたので、ゆったりと仕事をするイメージを持っていました。ですので、こんなに忙しいとは思いませんでした(笑)。働くようになってから、養護教諭の皆さんは子どもを第一優先にして、自分の仕事は影でやっていたのだと実感しました。今では私も子どもの対応を第一に、その次は他の先生に迷惑をかける業務、最後に自分の業務といった優先順位を決めています。
保健室で数時間休んだ生徒は私がバタバタしている様子を見て「保健の先生って忙しいんだね」と意外そうに言っていました(笑)。
――学級担任の教員と情報交換するのは簡単ではないと聞きましたが、連携を取るために心掛けていることはありますか?
私の場合、他の教員との連携で苦労したことはありません。チームワークも良く、協力し合って仕事をしています。ただ、養護教諭も他の教員も多忙ですので、短い時間でも顔を見ながら生徒の情報交換や必要な連携を取る必要があります。そのために、日常生活では挨拶やちょっとした会話を交わして、良好な人間関係を少しずつ構築するようにしています。養護教諭は教員だけではなく、外部講師の方などさまざまな方とやり取りをするので、人間関係のプロにならないと成り立ちにくいと思います。
養護教諭の対応一つで、生徒が元気回復する
――メンタル面をケアするにあたってどのような工夫をしていますか?
生徒が感じる身体の不調の背景にある問題を考えながら接するようにしています。もしお腹が痛いと訴える生徒がいれば、基礎疾患や感染症、排便の有無だけではなく体質や冷え、ストレスなどの原因についても考えます。
教室や部活動での人間関係の悩み・進路の不安など生徒がストレスを感じる要因はさまざまです。来室した生徒の気持ちをしっかり受け止めて適切なアドバイスをすることで、生徒の表情がぱっと明るくなる事も多いです。また必要に応じて学級担任と連携したり専門的な知識を持ったスクールカウンセラーにつないだりすることもあります。メンタル面のケアは授業や学校行事、部活動や個人の事情といったあらゆる角度から生徒が置かれた状況を捉えて、問題解決を経て生徒が成長できるような対応を考えます。
委員会活動の中で生徒の成長を実感できる
――仕事の中で一番の思い出や達成感を感じたエピソードを教えてください。
たくさんありますが、最近では委員会活動の一つである「デカデカ保健指導」が成功したことが嬉しかったです。「デカデカ保健指導」とは、学期に2〜3回ある全校集会で保健委員がステージに登壇し、全校生徒に対してけがの手当ての仕方や生活に関するアンケートの集計結果などを伝える活動です。この活動を通して生徒の学校保健に関する意識の向上がみられました。勉強や部活動などで忙しい保健委員にとってその準備は大変であると思いますが、舞台に立つことで成長し、達成感を得ることができます。発表を終えた保健委員のいい顔を見ると、私もやりがいを感じられます。
また、「デカデカ保健指導」を終えた生徒は人前で話すことが得意になるようで「保健委員の次は、生徒会に入りたい」と次の目標を掲げる生徒や、高校生になってから就職試験の面談がうまくいったとスピーチ力がその後の人生での強みになった生徒もいます。委員会を通じて生徒の成長を感じられるとうれしく思います。
教壇に立つ機会は少ないイメージがある養護教諭ですが、委員会活動や保健指導を通して生徒の成長をサポートできるのですね。委員会の活動に定められた内容はないため、養護教諭自身の企画力も試されそうです。
養護教諭の仕事に興味を持った人は、自分の学校の保健室へ行って直接話を聞いてみてはいかがでしょうか。今まで知らなかった先生の一面に出会えるかもしれませんよ。
【取材協力】全国養護教諭連絡協議会
この記事のテーマ
「教育」を解説
教育機関や子ども向けの施設で、教育指導に関わる仕事を目指します。小・中学校や高等学校の教員を目指す場合、大学や短期大学の教職課程で学ぶ必要がありますが、専門学校の中にも、提携する大学や短期大学の通信教育を受けて、教員免許状を取得できる学校もあります。語学教師や臨床心理士など希望する職種により、必要な資格や免許が異なります。
この記事で取り上げた
「養護教諭」
はこんな仕事です
通常は保健室に常駐しており、子どもたちが学校内でけがをしたり、気分が悪くなったりしたときに応急処置をする。学校では「保健室の先生」と呼ばれている。いじめ問題や児童虐待、生活習慣の不安定化、食品アレルギーの増加など、子どもたちが一人で悩んだりストレスを抱え込むことも多くなっている。養護教諭には、子どもたちに対するメンタル面でのサポートが求められる。また、学校保健のリーダーとして、教職員・保護者・医療機関などを結ぶコーディネーターとしての役割も期待されている。