見た目や匂いによって味が変化!? バーチャルで楽しむ食事ってなに?

最近、VR(バーチャル・リアリティ)という言葉がテレビなどで紹介されています。VRとはコンピューターがつくる3D映像で、現実とは異なる空間・現実に似せた空間に入り込んだ感覚を体験できるもの。
さまざまな領域で使われているVRですが、今回は食事自体の味を変化させたり、誰かと一緒に食事をしている気分が味わえたりする、VRの活用事例を紹介しましょう。
この記事をまとめると
- 香りや画像を変化させて、クッキーの味を変えるVRが登場
- おばあちゃんとVRで食事できる「バーチャン・リアリティ」も生まれている
- 今後、VRが私たちの食生活を大きく変えるかもしれない
普通の味のクッキーが、レモン味やイチゴ味に次々と変化!?
東京大学の廣瀬・谷川・鳴海研究室では、「Meta Cookie」という人間の感覚の特性を活用したシステムをつくりました。このシステムを体験した人は、普通の味のクッキーを食べているはずが、「レモン味のクッキーになり、次の瞬間には、イチゴ味のクッキーに変化した」と感想を述べています。
Meta Cookieには、ヘッドマウントディスプレイ(*1)とカメラ、香りを出すディスプレイが搭載されています。ARマーカー(*2)が印字されたクッキーをカメラで読み取ると、普通のクッキーが、ディスプレイ上ではリアルなレモンクッキーの画像に変化。そして、エアポンプから素早くレモンの香りが噴出されるので、本当にレモンクッキーを食べているかのように錯覚してしまうのです。
皆さんの中にも、鼻がつまっているときに食べるご飯はあまり味がしない……という経験をしたことがある人もいるかもしれません。人間は純粋な味覚だけでなく、嗅覚や視覚なども使って、食べ物の味を感知しているのです。Meta Cookieは、そのような脳の特性を利用して開発されました。
Meta Cookieが実用化されれば、ダイエットや食物アレルギーによる食事制限が必要な人でも、食べたいものを食べているかのような感覚で食事を楽しめます。また病院などの食事でも、風味を高めることができそうです。今後、さまざまな使い道が期待されている装置です。
*1 ヘッドマウントディスプレイ:頭部に装着するディスプレイ装置。
*2 ARマーカー:カメラで読み取ると、特定の情報を表示する画像。「QRコード」もARマーカーの一種。
「バーチャンリアリティ」で、おばあちゃんと一緒に食事
他にも、こんなVR技術の応用があります。都会では、一人きりで食事を摂る人が増えたといわれています。誰とも話さずに食事するのは寂しいという人のために、おばあちゃんと一緒に食事ができるVRが登場しました。その名も、「バーチャン・リアリティ」!
料理を用意し、バーチャン・リアリティを専用機器で再生すれば、目の前の画面には田舎の家屋の空間が広がり、おばあちゃんが登場します。おばあちゃんの作った玉子焼き、昔から好きやったやろ?・味噌汁も、ようさん(たくさん)おあがりなどと、やさしく声をかけてくれるので、一人での食事もきっと寂しくなくなるはず。さらに、朝ごはん篇・夜ごはん篇など、シチュエーション別の動画も用意されているという徹底具合です。
バーチャン・リアリティを製作したのは、兵庫県南あわじ市。実際には存在しない誰かと食事ができる試みは、今までにない面白い食事体験といえるのではないでしょうか。
VRを研究するなら、情報工学でコンピュータの応用技術などを学んでみよう
VRにはさまざまな活用法があるといわれており、今回紹介したもの以外にもさまざまな製品が発表されています。
このVRについて研究できる学問の一つが、「情報工学」です。情報工学とは、コンピューターを構成する機器にあたるハードウェアの設計、コンピュータを働かせるためのプログラムにあたるソフトウェア開発の研究、また、コンピュータの応用技術の研究などをメインとする学問。研究対象は幅広く、学校によってはVRについて学ぶことも可能です。
この記事で取り上げたMeta Cookie、バーチャン・リアリティーともに、食に関する問題を解決するためのヒントが含まれていました。現代社会が抱える食の問題はさまざま。解決するため、新たなテクノロジーを使ったサービスをつくりたいと感じた人は、情報工学について調べてみてはいかがでしょうか。
バーチャン・リアリティーは、インターネット上で動画が公開されているので、興味を持った人はぜひ観てみてください。Meta Cookieは、残念ながら実用化されていませんが、いつか私たちも使えるようになるとうれしいですね。
今後、VRが私たちの食生活を大きく変えることになることは確実でしょう。日々、進化するVR技術に興味が湧いた人は、ぜひ日々のニュースなどに注目してみてくださいね。
この記事のテーマ
「情報学・通信」を解説
情報通信産業には、通信業、放送業、情報サービス業、インターネット付随サービス業、映像・音声・文字情報制作業の5分野があります。近年は各分野の垣根が取り払われつつありますが、なかでも注目されているのが、インターネットに代表されるコンピュータを介した情報通信工学でしょう。高度に情報化が進んだ現代において、安全保障や経済政策はもちろんのこと、日常生活に至るあらゆるシーンで必要とされる、活躍の場の広い学問です。
この記事で取り上げた
「情報工学」
はこんな学問です
情報工学の研究対象は、コンピュータ端末のハードとソフトに始まり、情報通信を数学的に考察する情報理論、さらにさまざまな通信技術、マルチメディア技術に及ぶ。研究する分野も幅広く、コンピュータを設計してコンピュータシステムを構築する「計算機工学」、情報システムの設計・プログラミング・データベースなどを扱う「ソフトウェア」、現実の問題をコンピュータと数学を用いて解決する「数理情報工学」などがある。
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