【シゴトを知ろう】アーユルヴェーダセラピスト ~番外編~
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インドに何千年も伝わる伝統医学であるアーユルヴェーダ。それは単なる健康法ではなく、何のために生まれてきたのかという問いの答えを探すことができる、哲学的な要素も含んだ教えだそうです。日本にアーユルヴェーダを広める活動をしている佐藤真紀子さんに、その奥深いアーユルヴェーダの世界についてさらに詳しく伺いました。
この記事をまとめると
- 今流行りの健康法には、実はアーユルヴェーダ発祥のものが多い
- 日本の医療資格を一つでも取っておくと活動しやすい
- 家の一室を利用して独立開業も可能
アーユルヴェーダには、生活に取り入れやすい習慣がたくさんある
――アーユルヴェーダの施術においては食事指導も大切な要素だそうですが、どんな食べ物がおすすめなのでしょうか?
食べたものが血となり肉となり精神となりますので、食べるものは重要です。同時に消化のしやすさも大切です。添加物が多く入っていたり、固すぎたり古すぎたりする食べ物は、消化しづらいのでおすすめしません。
アーユルヴェーダでは、その人の体質や性格の傾向によって「ヴァータ」「ピッタ」「カパ」という3つのタイプに分類し、それぞれにおすすめの食べ物は異なります。共通していえるのは良い油を摂ること。人間の体の8割は水でできているといわれますが、サラサラな水というわけではなく少し油を含んだ水なのです。細胞壁も脂質でできていますから、日々摂取する油の質は重要です。アーユルヴェーダでは無塩バターを煮詰めてつくる「ギー」という油をよく使います。最近はモデルさんが美容のためにギーを摂っているという話も聞きます。
――ギーだけでなく、モデルさんが健康や美容のために「白湯(水を沸騰させて冷ましたもの)」や「オイルプリング(白ごま油を使ったうがい)」を習慣にしているという話もよく聞きます。それらは全てアーユルヴェーダの健康法だそうですね。
「舌磨き」や「ベビーマッサージ」もそうです。アーユルヴェーダの全てを学ぼうとすると大変ですが、一つひとつの要素は生活に取り入れやすいものばかりで、アーユルヴェーダに関心を持つきっかけになると思います。
そうした健康法は科学的なエビデンス(証拠)を求められることもありますが、アーユルヴェーダはインドで何千年も受け継がれ、検証され続けてきたもの。インドの人たちは実効性を重視しますから、良さを実感できないものを続けているとは思えません。
私がアーユルヴェーダの活動を始めた20年くらい前は、領収書に「アーユルヴェーダと書いてください」とお店の人に言うと「クラムチャウダーですか?」と聞き返されるくらいでしたから(笑)、今のブームは感慨深いですね。
これから学ぶ人にはインドのアーユルヴェーダ医師の資格を取ってほしい
――アーユルヴェーダの仕事をしたいなら、やはりインドで学ぶのが良いのでしょうか?
もし高校生でこれからアーユルヴェーダの仕事を目指す人がいるなら、ぜひインドの大学に通い、アーユルヴェーダ医師の資格を取ってほしいなと思います。インド大使館が奨学金制度を設けていますから、これを使わない手はありません。ぜひ問い合わせてみてください。座学で学ぶだけでなく、腕の良い先生を見つけてその人の下で働きながらたくさんの症例を観察・検証することが大切です。とにかく数をこなすことです。
――語学力も必要なのでしょうか?
サンスクリット語で書かれた原典が読めるに越したことはありませんが、ほとんどの文献は英語で読めますので、アーユルヴェーダを仕事にしたいなら英語を勉強しましょう。また、日本ではアーユルヴェーダは医療資格として認められていないため、看護師や鍼灸師など何か一つ医療資格を得ておくと仕事がしやすいと思います。
――アーユルヴェーダセラピストを育成する講座の運営もされているそうですが、受講者はどのような方が多いですか?
一番多いのは30〜40代の女性です。自分自身の不調をきっかけに来られる方が多いですが、赤ちゃんがほしいという方やお料理が好きという方もいらっしゃいます。
うちのスクールでは自宅で独立開業できるやり方を教えています。お金をかけてゴージャスなサロンを作らなくても、正しい知識を持って指導ができれば、家の一室を利用したサロンであっても口コミで評判は広まっていきます。セラピーだけでなく、付随して商品を販売したり、薬草の使い方や料理講座などの事業展開もできます。
――インドによく行かれるそうですが、日本との違いを感じるのはどんなところですか?
インドの人はとにかく明るいですね。自分に自信を持っています。あまり子どもを叱らない文化も影響しているのかもしれません。また、今のインドの経済状況は日本の昭和30~40年代と似ていて右肩上がり。昨日よりも良い明日が待っているという状況ですから、若い人も生き生きしていますね。高校生の皆さんも刺激を受けにぜひ一度行ってみてほしいなと思います。
自分の体質や気質を知り、そのコントロール法を学ぶことができるアーユルヴェーダは、勉強や運動に打ち込む高校生にもおすすめだそうです。はかどらない原因が意外なところに見つかったり、考え方を転換する方法を覚えることで負の感情に振り回されずに済んだりというメリットもあるようです。興味を持った方はぜひ学んでみてはいかがでしょうか。
【profile】Satvik 代表 佐藤真紀子
http://satvik.jp
この記事のテーマ
「エステ・ネイル・リラクゼーション」を解説
ネイリストやエステティシャンといった美容のスペシャリスト、アロマテラピストなどリラクゼーションのスペシャリストとして活躍する仕事です。いずれも高いホスピタリティや接客能力が求められるだけでなく、自ら学び続け、新しい技術やトレンドを取り込む好奇心やセンスが必要となります。
この記事で取り上げた
「アーユルヴェーダセラピスト」
はこんな仕事です
インドの伝統医学「アーユルヴェーダ(生命の科学)」に基づいた施術で、健やかでバランスの取れた体質へ導くのがアーユルヴェーダセラピストの仕事。薬草オイルやトリートメントなどを使用しながらマッサージを行い、身体の毒素を排出。さまざまな体質に適した施術を行うために、アーユルヴェーダはもちろんハーブなどに関する知識も身に付けておくとよいだろう。アーユルヴェーダ専門のエステティックサロンをはじめ、近年ではアーユルヴェーダの思想に基づいたヨガスクールなどもある。