【シゴトを知ろう】医療コンシェルジュ 編
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医療コンシェルジュは、病院に訪れた患者さんを速やかに案内し、より親切で効率的な医療サービスの提供を実現させる存在です。時にはセカンドオピニオンを求める患者さんと医師の橋渡しをする役目も担います。
今回は、株式会社PLUS F、株式会社クラウドクリニックの代表を務める、医療コンシェルジュの川島史子さんに、仕事内容や学生時代の経験について詳しく教えていただきました。
この記事をまとめると
- 外来の患者さんを案内、誘導しスムーズに診察できるようサポートする
- 学校の実習や病院でのアルバイト経験が患者さんへの対応に役立っている
- 相手の気持ちを読み取り、共感できる人に向いている仕事
患者さんの目線に立ち、より良いサービスを提供する
Q1. 仕事概要と一日のスケジュールを教えてください。
私は株式会社PLUS Fと株式会社クラウドクリニックの代表として、医療に関わる課題解決の手助けを行っています。医療コンシェルジュの仕事は患者さんへの接遇から事務作業まで多岐に渡りますが、病院内で行う主な業務には、初めて受診される方のご案内やご相談の対応をし、各診療科へとつなぐことが挙げられます。他にも、症状に最適な医療機関の選定や、患者さんが医師に言いづらい本音をヒヤリングし代弁するなど、双方が納得いく診療を行えるよう幅広いサポートを行っています。
また、医療コンシェルジュは患者さん目線で病院を見つめ直す立場でもあるので、コンサルテーション(客観的に観察して問題点を指摘し、助言することで組織の発展を助ける業務)を行う場合もあります。例えば、クリニック内のポスターの貼り方や文字の書き方、診察券の表記など、現場にいる医師や看護師が気付かないような点を指摘します。実際、待合室に座ってみたり診察室へ入ってみたりして、細かい分析をしながらより良いサービス提供に導きます。
<ある一日のスケジュール>
08:00 出勤、準備
09:00 外来患者の受付・誘導、来客対応
12:30 休憩
14:00 午後の診療の対応、資料作成
18:00 退勤
Q2. 仕事の楽しさ・やりがいは何ですか?
医師や看護師、患者さんに喜んでいただけること、頼りにされることが一番のやりがいです。その一例として、こんな出来事がありました。
ある日、病院に対し怒りをあらわにされる患者さんがいらっしゃった際に、私はそれをクレームとして片付けてしまうのではなく、患者さんの怒りに理解を示し、どこが引っかかっているのかを一つずつひもといていったのです。すると、自然に患者さんの気持ちも落ち着き、最後には笑顔で帰って行かれました。その後も、院内で顔を合わせると声を掛けて下さるようになりました。
このように患者さんの信頼を得られたとき、医療コンシェルジュとしてのやりがいを感じますね。
Q3. 仕事で大変なこと・つらいと感じることはありますか?
医師や看護師とともに仕事をするため、医療機関特有の略語や知識を勉強し続ける必要があります。医療コンシェルジュには各部署をつなぐ役割もありますが、病院の仕事はそれぞれの専門性が高く、複数の領域に渡って学ばなければならないのは楽しくもあり大変です。
また、近年では医療情報のIT化が急速に進んでいますが、機関によって使っているツールやシステムが全く違うので、そのときに関わっているクリニックに合わせて一から覚えなければならないことも、努力がいる点ですね。
生徒会長や文化祭実行委員長を務めた高校時代
Q4. どのようなきっかけ・経緯で医療コンシェルジュの仕事に就きましたか?
思い返すと、幼少期から福祉や医療について考える経験が多かったのが、今の仕事につながっていると思います。小学生の時、祖母の影響でボランティアに興味を持ち、中学から手話教室に通いました。そこで出会った聴覚障がいのある方々の生き生きとした姿に感銘を受け、「自分にない輝きを持った人々についてもっと知りたい!」と思ったのです。
福祉系の大学を卒業後、精神科がある病院に就職しケースワーカーになりましたが、その後知り合いの医師から医療コンシェルジュの資格を紹介され、取得しました。これが、私が医療コンシェルジュになった一番のきっかけです。
Q5. 大学では何を学びましたか?
福祉系の大学に進学したのですが、実は第1志望だった社会福祉学部に落ちて2年次までは経済学部に在籍していました。福祉だけでなく社会の仕組みやビジネスについて学べたことは、今振り返ると良い経験だったと思います。
3年次から念願の社会福祉学部に転部し、改めて福祉や介護について学びました。学校での実習に加え、夏休みにも多種多様な医療介護の現場に足を運んでいました。また夜間学部だったので、日中は学校のアルバイト求人で見つけた病院の精神科で看護助手のアルバイトを始めました。明るくたくましい看護師たちの働きを間近で見ながら、患者さんに対する配慮や接する際の心構えなど、多くを学べました。
Q6. 高校生のとき抱いていた夢が、現在の仕事につながっていると感じることはありますか?
高校でも福祉の道に進みたいと考え、親友、妹と一緒に近所の児童館で行われていた手話講座に通っていました。
同時に、学校で仲間と一緒に過ごす時間が何よりも楽しかった記憶があります。親友の影響を受け、地元の私立高校生フェスティバルでは実行委員として積極的に参加しました。また、3年生になると厳しい校則を改善するために、文化祭実行委員長や生徒会長を務めました。友人とともに目標に向かって奔走した経験は自信になり、その後働く上での原動力につながっていると思います。
さまざまな経験をし、相手の気持ちになって考えられる人間に
Q7. どういう人が医療コンシェルジュの仕事に向いていると思いますか?
相手の立場になって考え、気持ちを察して共感できる人が向いています。病院に来る患者さんは特に、どう表現していいのか分からない悩みを持っていたり、不安な点を医師に伝える勇気がなかったりする方も多いです。そういった思いを読み取り、患者さんの立場になって課題を解決したいという使命を感じられる人には、ぜひ医療コンシェルジュという仕事に興味を持ってもらいたいです。
Q8. 高校生に向けたメッセージをお願いします。
高校生の皆さんには、たくさんの経験を通し、世界にはさまざまな人がいると知ってほしいです。医療コンシェルジュの仕事に限らず、「相手の気持ちになって考える」ということは一見簡単そうですが、相当の想像力や経験値が必要です。
まずはどんなことでもいいから挑戦し、周りにいる人たちに関心を持ってみてください。きっとその後の糧になりますよ。
情報が多く、専門知識が必要な医療の世界では、患者さんに分かりやすく診療内容を説明する医療コンシェルジュの必要性が高まっています。川島さんのお話を聞いてこの仕事に興味を持った方はぜひ、医療や福祉について学べる学校について調べてみてくださいね。
【profile】株式会社PLUS F/株式会社クラウドクリニック 代表 川島史子
この記事のテーマ
「医療・歯科・看護・リハビリ」を解説
医療の高度化に伴い、呼吸器や透析装置、放射線治療などを取り扱う医療・検査機器の技師がますます求められています。この分野の仕事は、高度な知識と技術をもって患者に医療技術を施すスペシャリスト。めざすには、基礎知識から医療現場での実践能力に至る段階的学びが必要となります。
この記事で取り上げた
「医療コンシェルジュ」
はこんな仕事です
病院を訪れる患者がスムーズに診療・治療が受けられるようアドバイスや手配代行をするなど、医師の業務をサポートする仕事。患者へのアドバイスや案内を主とする場合を「メディカルコンシェルジュ(MC)」と呼び、医師のサポートを主とする場合を「エクスパートメディカルアシスタント(EMA)」と呼ぶ。いずれも必須ではないが認定資格があり、取得しておくと役立つ。困っている患者への積極的な声掛けなどコミュニケーション能力も必要。医師のサポートでは書類整理や管理など、忙しい医師の業務を減らすための仕事を行う。
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