【シゴトを知ろう】歩荷 編

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【シゴトを知ろう】歩荷 編

2017.08.30

提供元:マイナビ進学編集部

【シゴトを知ろう】歩荷 編

福島県、群馬県、新潟県の境にある尾瀬の高原では、大きな箱を大量に背負った人を目にします。彼らは「歩荷(ぼっか)」と呼ばれ、ときには重さ100kgを超える荷物を運ぶ、山小屋にとって欠かせない存在です。

今回は、歩荷の仕事の内容ややりがいについて、株式会社本多の渡部努さんにお話を伺いました。

この記事をまとめると

  • 10km以上離れた山小屋に、食料など必要な物品を歩いて運搬する仕事
  • 必要なのは体力や筋力よりも、無事に荷物を届けようとする責任感
  • 山、植物、天体など自然に関心があるとより楽しく仕事ができる

100kgの荷物を背負いながら10km以上の道のりを歩く

Q1. 仕事概要と一日のスケジュールを教えてください。
 
歩荷は、尾瀬などにある山小屋へ、食料や売店に置く商品を運ぶ仕事です。多くの山小屋はヘリコプターを使って荷物を受け取っていますが、ヘリコプターが飛ぶのは月に2回と決まっています。また、運べる荷物はガスボンベなどの燃料や、日持ちする食料と限られている場合がほとんどです。そのため、急を要する物品や、鮮度が重要な野菜や卵といった食料は、歩荷が頻繁に届けているわけです。荷物を運ぶ際は、木を組み合わせた「背負い梯子(しょいばしご)」という道具を使います。小学校の校庭にある二宮金次郎像が背負っているアレ、といえばイメージしやすいかもしれません(笑)。

当社の場合、現在6人の歩荷で10軒の山小屋を週5〜6日かけて回っています。遠い小屋だと拠点である鳩待峠(はとまちとうげ)から12kmも離れていて、その距離を60〜100kgの荷物を背負って歩くのです。尾瀬の山小屋は4月下旬から11月上旬まで営業していますので、僕たちもその時期に合わせて稼働しています。その期間以外は、歩荷とは別の仕事をしている人もいますね。僕自身も、11月から4月の間は、酒蔵の製造をしています。

<一日のスケジュール>
06:00 荷物を車に積み鳩待峠へ出発
07:00 鳩待峠に到着
08:00 鳩待峠を出発
11:00〜12:00 山小屋に到着。昼食
15:00 鳩待峠に到着。明日の荷物を用意して帰宅
 
 
Q2. 仕事の楽しさ・やりがいは何ですか?
 
まず、自然の中で仕事ができることです。尾瀬は高原にあるため気温が低く、10月には雪が降り始め、5月下旬にようやく春を迎えます。つまり、半年で四季を堪能できる環境なのです。業務が始まる4月上旬は残雪と澄んだ空のコントラストが美しく、7月はニッコウキスゲの時期になります。ニッコウキスゲはユリに似た黄色い花で、尾瀬の広大な土地一面に咲く様は「黄色いじゅうたん」ともいわれているのです。そして9月には紅葉、10月下旬には雪がちらちらと降る初冬の景色を楽しめます。

山小屋の方々とのコミュニケーションも仕事のやりがいにつながっています。荷物を届けた際に「ありがとう!」と声をかけてもらうたびに、明日もしっかり時間通りに届けようと前向きな気持ちになれるのです。


Q3. 仕事で大変なこと・つらいと感じることはありますか?
 
天候に大きく左右される仕事なので、雨や風が強い日は苦労します。重い荷物を背負っているので、悪天候の中歩き続ける場合には体力の使い方に注意しています。

また、尾瀬の水芭蕉は有名で、6月はたくさんの観光客が訪れます。尾瀬は木道(湿原を歩くための丸太でできた遊歩道)しか歩けないため、非常に混雑してしまいます。観光客の皆さんも道を譲ってはくれますが、出発時刻を早めたり、歩くスピードを速めたりといった工夫も必要ですね。
 
 

山小屋で働いていた経験から、歩荷の重要性に気付いた

Q4. どのようなきっかけ・経緯で歩荷の仕事に就きましたか?
 
僕が育った福島県会津若松市の周りには、磐梯山や飯盛山といった山が多くあります。そのため、小さい頃から遊びの一環として山登りを楽しんでいたのです。高校では山岳部に入部。活動の中で山小屋に度々お世話になり、「ここで働いてみたいな」と考えるようになりました。

その後、山小屋で働き始め歩荷の存在を知りました。山小屋の業務は一般の旅館と大きく変わりませんが、歩荷がいないと新鮮な食料や、今すぐ欲しいものを得ることはできません。山小屋の従業員としてのさまざまな業務を通して、歩荷の重要性に気付いたのです。それから数年後、仲の良い友人に誘われて歩荷の仕事に応募しました。

 
Q5. 山小屋の業務が歩荷の仕事に生きていると感じることはありますか?
 
山小屋にとって、歩荷が必要不可欠な存在だと知ったことですね。現場で学んだ山小屋と歩荷の関係性が、現在でも仕事への姿勢につながっています。

最近は減りましたが30年ほど前は、これくらい運べるぞ!と力自慢をしたがる歩荷もいました。しかし、重い荷物を無理に持ち上げるといずれ怪我をしてしまいます。すると、僕らを待っている山小屋の方々にも荷物が届かないかもと心配をかけてしまうのです。山小屋にとって歩荷が不可欠なのは、荷物をたくさん持てるからではなく、荷物を確実に届けてくれるから。山小屋で働いていたからこそ、本来の目的を見失わずに荷物を運べています。
 
 
Q6. 高校生のとき抱いていた夢が、現在の仕事につながっていると感じることはありますか?
 
山小屋で働きたいと思う一方、海外の山にも行ってみたいと思っていました。国民栄誉賞を受賞した有名な登山家の本を読み、ヒマラヤ山脈やヨーロッパの山々へ憧れがあったのです。その登山家は「冒険とは、生きて帰ることなのである」という言葉を残し、僕も山岳部では大会の順位よりも安全を第一に考えて活動していました。この安全への意識が、先ほどお話した歩荷としての心がけにもつながっていると思います。
 
 

仕事の中に自分なりの楽しみがあることが重要

Q7. どういう人が歩荷の仕事に向いていると思いますか?
 
この仕事をしていると体力や年齢が影響しそうといわれることが多いですが、実はそれほど関係ありません。もちろん体力は無いよりもあったほうがいいと思いますが、どんな人でも歩荷の仕事をしているうちに少しずつ身体が慣れてきます。僕は歩荷になって30年が経ちますが、筋肉ムキムキ!というわけではありません(笑)。一緒に働いているメンバーも、木道ですれ違う方々から「なんでその身体つきで大荷物が運べるの?」と言われているのを目にします。

自然の中で働きたいと考えている人には向いています。荷物を運ぶだけではなく景色まで楽しめると、ワクワクとした気持ちで働けると思います。
 
 
Q8. 高校生に向けたメッセージをお願いします。
 
歩荷の仕事が気になる人は、山に限らず自分の好きな自然について調べてみてはいかがでしょう。仕事上の役割と並行して得られる自分なりの楽しみがあれば、仕事にも前向きに取り組めます。僕も、山や海に囲まれた田舎でのんびりと暮らしたいと思うほど自然が好きです。皆さんも花や鳥・虫・雲・天体・鉱物など、さまざまな自然に目を向けてみてください。

そして歩荷になって初めのうちは体力や技術の心配はせず、先輩のアドバイスを聞きながら仕事を覚えるといいと思います。
 
 
山小屋にとって、必要な物品や食料を臨機応変に届けてくれる歩荷の存在は欠かせないもの。歩荷側にもその自覚があってこそ、安全、確実に役目を果たせるのですね。皆さんも将来の職業選択の際は、業務内容だけではなく、その最終的な目的まで調べてみてはいかがでしょうか?
 
 
【profile】株式会社本多 渡部努
【取材協力】公益財団法人 尾瀬保護財団

この記事のテーマ
環境・自然・バイオ」を解説

エネルギーの安定供給や環境問題の解決など、自然や環境を調査・研究し、人の未来や暮らしをサポートする仕事につながります。また、自然ガイドなど、海や山の素晴らしさと安全なレジャーを多くの人に伝える仕事もあります。それぞれ高い専門性が求められる職業に応じて、専門知識や技術を学び、カリキュラムによっては資格取得や検定も目指します。

「環境・自然・バイオ」について詳しく見る

この記事で取り上げた
「歩荷(ぼっか)」
はこんな仕事です

難所のある山岳などにおいて徒歩で荷を運ぶ仕事で、エベレスト登山の話題などに登場する「シェルパ」もほぼ同様の仕事である。車が通れる道路のない険しい山や渓谷を越えて、背負子(しょいこ)と呼ばれる道具に、多いときは100kg近い荷を積んで運搬する。ヘリコプターが使えるようになるなど、近代化に伴って歩荷を専門的に営む人が存在するのは、群馬県・新潟県・福島県の県境に広がる尾瀬など限られた地域のみとなっているが、現在でも山小屋のスタッフやアルバイトとして歩荷の仕事をする機会がある。

「歩荷(ぼっか)」について詳しく見る