【シゴトを知ろう】テレビプロデューサー ~番外編~
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テレビ番組制作における総責任者であり、企画のアイデアを出すことから人事・予算管理まで、多岐にわたる業務に関わるテレビプロデューサー。「【シゴトを知ろう】テレビプロデューサー 編」では、株式会社SOMEの染谷智(さとる)さんに、その仕事内容や魅力を伺いました。今回は番外編として、番組収録当日にはどのようなことをされるのか、番組企画での高校生との出会いについてなど、気になるエピソードをさらに詳しく伺いました。
この記事をまとめると
- 面白くないことにも面白さを見つけていく仕事の楽しさ
- チームの雰囲気を良くする努力ができる名プロデューサーの手腕
- 自ら変化を求めて挑戦すれば、自分自身を変えることができる
テレビ嫌いから見つけた仕事の楽しさ・やりがいは本物だと確信
――染谷さんがテレビ業界でお仕事を始められたのは、敬遠していたテレビに関わる仕事にあえて挑戦したからと伺いましたが、どのような理由からテレビが嫌いだったのでしょうか?
私がそれまで続けてきた音楽活動におけるライブというのは、お客さまとつくる空間であり、演目が同じでも毎回変わるエンターテインメントでした。
しかしテレビから送られてくるのは一方的な情報で、生放送でなければ編集も自由で、切って貼ってつくられたものです。そういう部分が好きになれなかったのだと思います。コントなど最初からフィクションだと分かっている番組に関しては純粋に楽しめたのですが……。
――それでもその中に面白さを見つけ、テレビプロデューサーとして視聴者を楽しませる番組制作をされてきたことは、本当にすごい挑戦ですね。
私にとって面白い仕事というのは存在せず、普通にやっていては面白くないことにも面白さを見つけていくことが仕事の楽しさだと思っています。テレビの仕事の楽しさ・やりがいは、もともとテレビ嫌いだったところから見付けたものなので、それは自己満足ではない本物だと確信しています。
良い番組づくりのためには、まず良い雰囲気づくりが重要
――染谷さんの一日のスケジュール例について、番組収録の前日の場合を教えていただきましたが、当日のことについても少し伺えますか?
本番当日は番組収録のスタジオに行き、まず楽屋がしっかりと手配されているかなどを確認します。そして出演者が到着したら、最終的な打ち合わせをし、楽屋を盛り上げ、出演者が良い気分で番組に臨めるような空気感をつくります。
本番が始まった後は、ディレクターの仕事を見守りながら、時々アドバイスをしたり多少の軌道修正をすることもあります。
――出演者の楽屋を盛り上げるというところまでされるのですね。
良い番組づくりのためには、まず良い雰囲気づくりが重要です。出演者の表情一つ、雰囲気一つでも視聴者には感情が伝わるものなので、プロデューサーとしては特に意識するべきところです。なので楽屋から出演者の気分を盛り上げて、そのまま送り出すということも大切な仕事の一部ですね。
そして当日の出演者に限らず、スタッフたちも同じです。どんなスタッフも人間なので、現場の雰囲気によって多少なりとも、力の発揮具合も変わります。日頃から番組チームの雰囲気を良いものにしていく努力ができる人こそが、名プロデューサーだといえるのではないでしょうか。
印象的なのは、番組企画を通しての高校生たちとの出会いとその後のつながり
――染谷さんが今までお仕事をされてきた中で、印象的だったエピソードを教えていただけますか?
高校生が「史上最大のドミノ倒し」と銘打った、ドミノの世界記録に挑戦する番組企画を担当したときのことです。当時夏休み中だった高校生が山の中の体育館にこもってドミノを毎日並べていくのですが、その間スタッフと生徒たちはずっと一緒なので、次第に先生と生徒のような関係性になっていきました。実際にディレクターのことを先生と呼ぶ生徒もいて。最終的に無事に世界記録を樹立することができ、生徒もスタッフもチーム一体となって大きな達成感を味わうことができました。
そして、そのときの高校生たちから年賀状をもらったり、今でも何かとお付き合いがあります。「最近結婚しました」「会社で課長になりました」などと報告を受けるととても感慨深いですし、こうした出会いやその後のつながりを経験できるというのはこの仕事ならではですね。番組の企画が彼ら、彼女らの人生の中で財産になれたということもうれしかったです。
出演してくれた高校生たちは、ドミノ倒し自体がやりたい・世界記録を達成したいというより、とにかく何かに挑戦して自信を付けたいという子が多かったですね。どのようなことでも、自ら変化を求めて挑戦することで、自分を変えることができるはずです。
ユーモアを交えて話を盛り上げながらも、高校生の皆さんに伝わりやすい内容を、と丁寧に語ってくださった染谷さん。今回のお話で、テレビプロデューサーのイメージが変わった人もいるかもしれません。視聴者を楽しませる企画を考えることも大切ですが、それと同じくらい周りを気遣い、現場の雰囲気を良くすることが良い番組プロデュースにつながるのですね。
【profile】株式会社SOME 代表取締役・テレビプロデューサー 染谷智
この記事のテーマ
「マスコミ・芸能・アニメ・声優・漫画」を解説
若い感性やアイデアが常に求められる世界です。番組や作品の企画や脚本づくり、照明や音響などの技術スタッフ、宣伝企画など、職種に応じた専門知識や技術を学び、実習を通して企画力や表現力を磨きます。声優やタレントは在学しながらオーディションを受けるなど、仕事のチャンスを得る努力が必要。学校にはその情報が集められています。
この記事で取り上げた
「テレビプロデューサー」
はこんな仕事です
自分が担当するテレビ番組の総責任者として、番組制作を管理。仕事の範囲は広く、企画立案や制作スタッフの決定、出演者の交渉、予算の管理、スポンサーへの営業など、番組作りだけでなく側面支援的な仕事も担当する。大部分のテレビ番組は、テレビ局と番組制作会社が協同で制作しており、プロデューサーも双方に存在している。いずれの立場であっても、番組制作の現場で下積みから経験を重ねながら、徐々に成長して大きな役割を任されるようになるケースがほとんど。番組制作の全般を取り仕切れる充実感が得られる。