【シゴトを知ろう】玩具(カルタ、凧、双六)職人 編

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【シゴトを知ろう】玩具(カルタ、凧、双六)職人 編

2017.08.21

提供元:マイナビ進学編集部

【シゴトを知ろう】玩具(カルタ、凧、双六)職人 編

日本伝統の玩具は、最近は目にする機会も減り、それを作る職人も減少傾向にあります。しかし、日本独自の伝統文化としての魅力は大きく、最近では海外・外国人向けの美術品としての需要が増え、その価値が見直されています。
今回は、東京都練馬区の「工房風切」で江戸錦絵凧制作をしておられる上野優さんに、和凧職人の仕事について伺いました。

この記事をまとめると

  • 伝統の絵柄から糸巻きに至るまで、素材の調達も含め完全手作業
  • 昔の絵柄を再現するには、歴史や文化に対する知識と理解が大切
  • 凧は際物(きわもの)。ダブルワークで、妥協なく仕事を追究できた

素材調達に始まり、全てをとことん納得いくまでこだわって作る

Q1. 仕事概要と一日のスケジュールを教えてください。

自宅兼工房で和凧の制作をしています。この仕事を始めて30年以上になります。良質の和紙や竹といった素材の調達に始まり、制作から発送に至るまでの全ての作業を一人でこなしています。
凧の絵柄部分に関しては、鉛筆での下絵描き・墨入れ・色入れの順に作業を進めます。
骨組みとなる竹素材も、時間をかけて乾燥・削り加工し、耐久性があって、狂いのない良質なものに仕上げていきます。

また、現在ではなかなか見ることのなくなった伝統の糸巻きも、ひのき木材の切り出しから組み立て・漆塗りの仕上げに至るまで、完全手作業で制作しています。
凧は「際物(きわもの)」。季節のもので、正月前後に集中して売れます。正月前の期間はとても忙しく、早朝から深夜まで制作が続きます。

それ以外の期間は、下絵を描きためたり、竹素材の手入れ・加工などの仕込みをする期間にあてていますが、最近では正月以外の時期にも、雑誌の取材・テレビドラマなどの映像作品の中で使われる小道具(特に大凧)・海外向けの注文がくることも多いです。

<一日のスケジュール>
8:00 起床、制作開始
    合間に簡単に食事などをとりながら
23:00 制作終了、就寝
    日が変わるまで集中して制作することも


Q2. 仕事の楽しさ・やりがいは何ですか?

制作中は、時間を忘れて没頭しています。それが快感なんですね。お金は二の次で、とことん納得いくまで時間をかけています。後世に作品を残すとか、そんな大それた思いはなく、頼んでくれたお客さんが満足してくれるものを作りたいという思いで取り組んでいます。

また、和凧の世界は、自分なりのオリジナリティーを追究できるという点も気に入っています。
叔父が能面師だったのですが、能面師とは「写しに始まり写しに終わる」仕事。オリジナリティーを完全に否定した世界です。でも、自分は同じものは作りたくないんです。和凧はすべて一点もの。そういう自由なものが自分には合っていると思います。


Q3. 仕事で大変なこと・つらいと感じることはありますか?

師匠などには付かず一から独学で始めたので、最初は手探りでした。和紙・画材・筆など、それまでやってきた油絵とはずいぶん技法も違います。ですが、基本が凝り性なので、自分なりに調べて追究していくということを楽しめるほうだと思います。

また、ずっと会社勤めもしていましたから、両立させる苦労は当然ありました。時には寝る時間を削って作業していましたが、好きでやりたいことですから、つらくはありませんでした。
会社では営業職でしたので、暮れの季節には取引先の方に自作の和凧を配って喜んでもらって、お返しに仕事をいただいたり、うまい具合に利用していた部分もあります(笑)。

子どもの頃からの興味と知識の蓄積が和凧制作につながる

Q4. どのようなきっかけ・経緯でその仕事に就きましたか?

子どもの頃から絵画を見るのも描くのも好きで、よく図書館で印象派の画集を借りては眺めていました。また歴史や文学も好きで、活字中毒でしたね。
もともとは油絵を描いていました。どうして和凧に転向したのかというと、日本史が好きだったことに加えて、今、世の中に出回っている和凧の質が悪く、あまりに粗雑なものが多かったことから、じゃあ自分が作ってやろうと思い立ったのがきっかけです。

 
Q5. 大学では何を学びましたか?

子どもの頃、読んだ画集の最後の部分には大抵、画家の生涯を紹介した簡単な読み物がついていました。いろいろな画家の生きざまに関する文章を読んだことが、芸術の世界に興味を持つきっかけになったとともに「絵描きっていうものはそれだけで食べていけない商売なんだ」ということを子ども心に悟りました。

一貫して絵画への思いは抱きながらも、社会人として自立しなければならないという考えから、自分の判断で経済学部に進みました。企業に就職して経済的に自立した環境を持ちながら、二足のわらじで30年以上自分の好きな和凧制作に継続して打ち込んできました。


Q6. 高校生のときの経験が、現在の仕事につながっていると感じることはありますか?

絵を描くにあたっては、歴史的背景を正しく踏まえたうえで絵柄を表現することが必要になります。
例えば武者絵は、源平ものをはじめとして、長く生き残ってきた伝統の絵柄があるわけですが、その背景にある物語や、登場人物のおかれた状況への理解の深さによって、武将の表情も変わってきます。
家紋やその武将ならではの槍(やり)の形状なども、分かった上で再現しています。

虎の絵一つとっても、昔の絵師は実物の虎を見たことがなくて、想像で描いているのですよね。だから架空の生き物みたいな味わいがある。現代のように、実物の虎を知っていて描くのとは全然違うわけです。そういう背景も理解して描くことが大切です。
私は高校生の頃から今もずっと日本史や文学が好きで、時代物の小説や、絵巻なども含めた歴史文献を幅広く読んできたので、その蓄積が今につながっていると思います。

決められた仕事以外にも、もう一つの顔を持つということ

Q7. どういう人が和凧職人に向いていると思いますか?
 
こういう仕事は、経済・生活という面では単体で成り立つのが難しいので、就職という面で捉えるのはちょっと違うと思います。

また、伝統工芸としての和凧を後世に伝えたいという気持ちもなくはありませんが、特殊な才能の世界なので、親から子に伝えられるものでもありません。
歌であれダンスであれ、芸術の才能があったなら、それは抑え込めるものではないんじゃないですか。そういう人は何らかの形で表現活動をしていくはずです。
和凧に関しては、先ほどからお話しているとおり、絵を描く能力に加え、手先の器用さ、歴史が好きなことが大事だと思います。


Q8. 高校生に向けたメッセージをお願いします。
 
仕事というのは、自分と自分の家族が生活するということですから、しっかり勤めなくてはならないと思います。そうした中、多少でも何かの才能のある方は、もう一つの顔をお持ちなさい、と勧めたいです。決められた仕事だけに押しつぶされてしまうのではなく、もう一つの顔を持つことで、人生は豊かなものになります。人生を楽しんでください。



社会人としての経済基盤を持ちながら、妥協することなく和凧制作を追究してきた上野さん。お話を伺っていると大変博識で、幅広い知識と旺盛な好奇心をエネルギーにして制作活動をしておられることが感じられました。
和凧のような日本の伝統文化の分野に限らず、何らかの表現を志す人にとっては、上野さんのお話はとても参考になるのではないでしょうか。
 
 
【profile】江戸錦絵凧 工房風切 上野優
工房 風切 ホームページ http://kazekiri.com/index.html

この記事のテーマ
デザイン・芸術・写真」を解説

デザインは、本や雑誌、広告など印刷物のデザイン、雑貨、玩具、パッケージなどの商品デザイン、伝統工芸や日用品などの装飾デザインといった分野があり、学校では専門知識や道具、機器を使いこなす技術を学びます。アートや写真を仕事にする場合、学校で基礎的な知識や技術を身につけ、学外での実践を通して経験やセンスを磨きます。

「デザイン・芸術・写真」について詳しく見る

この記事で取り上げた
「玩具(カルタ、凧、双六)職人」
はこんな仕事です

日本伝統の玩具、カルタ、凧、双六をつくる職人。いずれも16世紀ごろに庶民の遊びとして定着したものだが、最近は目にする機会が減って「古きよき正月の遊び」といったイメージとなっている。伝統的な製法では、丈夫で水に濡れても破れない和紙を用いて職人が一つひとつ手作業でつくり上げていたが、印刷技術の発展などによってこうした職人も姿を消し、たとえば凧職人も今やわずかに残るばかりだ。しかし、伝統的な技術を継承し、現代的な加工技術やセンス、アイデアを加味することで新たな魅力を形成できる余地もある。

「玩具(カルタ、凧、双六)職人」について詳しく見る