【シゴトを知ろう】制作助手 ~番外編~
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「【シゴトを知ろう】制作助手 編」では、松竹撮影所の小田切悠伎さんに、製作部の仕事の具体的な内容やどのようにして映画業界に入られたかなどについて伺いました。番外編では、映画製作の現場でのエピソードを中心に、より知られざる製作部についてのお話をしていただきました。
この記事をまとめると
- 普段からジャンルを問わず映画をたくさん見ている
- 自主映画の制作をする中で、どのように映画に関わりたいかが明確に
- ラインプロデューサーとして現場を仕切れるようになるのが目標
オフにも楽しみと勉強を兼ねて映画をたくさん見る
――仕事をしていくにあたって、普段から気をつけていることや心がけていることはありますか?
服装や身だしなみは、清潔感が出るように気をつけています。現場では基本、動きやすいものでTシャツなどが中心ですが、うちの暗黙のルールで、極力Tシャツでもなぜか襟つきじゃないとだめというのがあって(笑)。なので、夏場はポロシャツが多いです。
というのも、製作は対外的な仕事が多いので、きっちりするところはきっちりしないといけないということです。
また、日頃から映画はできるだけたくさん、ジャンルを問わず見るようにしています。本やマンガを読んだり、スマホでもニュースを見たりなど、できるだけ情報収集するように心がけています。
――休日はどのように過ごされていますか?
撮影明けは一日中寝ていることが多いですが、普段の休みは、山などへ出かけることがあります。福島や新潟に好きな山小屋があって、そこでビールを飲みながら映画を見たりしています。他に人もいなくて、とても静かに過ごせます。あとは、一日中映画館をはしごして1日で5本見たり、友だちや先輩とご飯を食べに行ったりしています。
――スタッフ同士の横のつながりは密なのでしょうか?
プライベートで気の合う年代の近い人とは飲みに行ったりもします。
映画の撮影中には、休みの前日に「助手会」が開かれたりします。助手たちだけで交流する会で、偉い人たちは来ちゃだめなんです(笑)。
自主映画制作の経験で、自分がどう映画に関わりたいかが見えてきた
――映画製作にはさまざまな部門がありますが、どうして製作を選ばれたのでしょうか?
大学生の最初の頃は映画監督になりたいと思っていたのですが、実際に自主映画の監督をしたところ、全く楽しく感じなかったんです。特に脚本を書くのがつらくて。そこで製作側に回ってみたところ、すごく楽しく感じました。
この経験から、フィクションを書き起こしたり、演出をしたりすることは、全然別の興味と適性のものなのだと思い、自分はみんなで一つの作品を作り上げる上でのまとめ役のような製作の仕事が大好きなのだと気づきました。
現場の全てをよく知ることがいい仕事につながる
――これまでで印象深かった仕事のエピソードをお聞かせください
製作を始めて1作目の現場が『クリーピー 偽りの隣人』(黒沢清監督)で、本当に貴重な経験をさせてもらいました。
例えば、撮影中強烈に印象に残っていたあるシーンがあったのですが、車中の映像はスタジオで撮影し、車窓から見える景色を合成する「スクリーンプロセス」という特撮技法の撮影に参加した時に、同じ黒沢監督作品の『Cure』に出てくるバスのシーンもこうやって作られていたんだと分かって感動しました。
他にも、黒沢清監督特有の異様な部屋の内装が、CGではなくて美術さんの手でこだわりを持って緻密に作られていることにも驚かされました。硬そうにみえる部屋の壁が実は発泡スチロールだったんです。また、爆発のシーンがどのように撮られているかといった撮影の裏側が見られるのも面白いなと思います。
――今後取り組んでみたいこと、やってみたいことがあればお聞かせください。
ラインプロデューサーとして、きちんと現場を仕切れるようになりたいと思います。そして現場で十分経験を積んだら、機会があればプロデューサーも目指していきたいです。
今は、プロデューサーと言えば企画というイメージがありますが、自分は、現場を知ることもとても大事だと思っています。何にどのくらいお金を使うかといったことをはじめ、映画作りの仕組みや、監督の演出や役者の演技を間近で見ることもとても勉強になります。
多くのプロフェッショナルが多種多様な関わり方をして1本の映画が出来上がっているのだということが改めてよく分かるお話でした。
映画の仕事に興味を持っている人は、自分がどんな性格で、どういった作業に向いているのかという適性もふまえて、より深く映画作りの仕組みについて調べてみてはいかがでしょうか。
【profile】松竹撮影所 東京撮影部 製作部 小田切悠伎
松竹撮影所ホームページはこちら
この記事のテーマ
「マスコミ・芸能・アニメ・声優・漫画」を解説
若い感性やアイデアが常に求められる世界です。番組や作品の企画や脚本づくり、照明や音響などの技術スタッフ、宣伝企画など、職種に応じた専門知識や技術を学び、実習を通して企画力や表現力を磨きます。声優やタレントは在学しながらオーディションを受けるなど、仕事のチャンスを得る努力が必要。学校にはその情報が集められています。
この記事で取り上げた
「制作助手」
はこんな仕事です
制作担当の助手として働くのが仕事。制作担当の仕事自体が映画製作において、予算管理面の役割を担うことが多いが、その「助手」に当たるのが制作助手の仕事内容だ。しかし、映画作りの現場の空気に触れ、臨場感ある撮影シーンを間近に見られる仕事であることに変わりない。撮影スタッフに弁当を配ったり、ちょっとした買い出しに走ったりといった雑用も行うが、映画業界の志望者にとっては撮影現場の様子を感じ取れる貴重な機会となる。映像系の学部で学ぶ大学生でも、アルバイトで制作助手をするチャンスはある。