【シゴトを知ろう】メディカルアロマセラピスト 編
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精油(*1)を用いたジェルやクリームなどを使うことによって、体や精神の不調を改善する効果が期待できるメディカルアロマテラピー。精油の正しい知識や使い方を伝え、西洋医学で使用されている薬の代替手段の一つになることを知ってもらうために活動しているのが、メディカルアロマセラピストです。
日本メディカルアロマテラピー協会のセルフケアセラピスト講師である吉岡幸枝(ゆきえ)さんに、仕事内容やメディカルアロマテラピーに興味を持ったきっかけなどについてお話を伺いました。
この記事をまとめると
- フランスでは医療現場で用いられているメディカルアロマテラピー。でも、日本ではまだ認知度が低い
- 初めて使ったのは風邪予防ジェル。効果を実感し、メディカルアロマセラピストの道へ
- 口コミや紹介が次の仕事につながることも。コミュニケーション力を磨こう!
植物のパワーが凝縮されている精油。香りを楽しむだけじゃなかった!
Q1. 仕事概要と一日のスケジュールを教えてください
アロマテラピーには、大きく分けてイギリス式とフランス式の2種類があります。イギリス式は主に精油の香りを楽しみリラックスすることを目的としていますが、フランス式のメディカルアロマテラピーは治療を目的としています。
日本で病院に行ったとき、病状によっては治療に薬ではなく漢方薬を選ぶことができる場合があるように、フランスでは治療法の一つとしてメディカルアロマテラピーが取り入れられているんですよ。
西洋医学の代替療法としてのメディカルアロマテラピーについて広く知ってもらうための活動が、メディカルアロマセラピストの重要な仕事です。主に精油の正しい知識を伝え、メディカルアロマテラピーを自分で楽しむための基礎知識を身に付けることができるセルフケアセラピストの資格を取得できる講座を開いたりしています。
*1 精油:植物の有効成分を抽出したオイルのこと。植物によって香りや成分が異なる。
<一日のスケジュール>
09:00 仕事開始
09:30 講座の下準備
10:00 メディカルアロマテラピー講座(所要4時間)開始
12:00 昼休憩
13:00 メディカルアロマテラピー講座
15:00 メディカルアロマテラピー講座終了、後片付け
16:00 メール対応
17:00 仕事終了
Q2. 仕事の楽しさ・やりがいは何ですか?
お渡ししたアロマクラフト(*2)がその人に合って、体の調子がよくなったという報告をいただいた時が一番うれしいです。役に立ててよかったと思いますね。
薬に頼りっぱなしになることが心配な方、皮膚疾患の治療でステロイドを使いたくない方、妊娠されていて薬を飲めない方などに、症状を改善する選択肢の一つとしてメディカルアロマテラピーがあることを知っていただきたいです。
*2 アロマクラフト:精油を使ったジェルやクリームのこと
Q3. 仕事で大変なこと・つらいと感じることはありますか?
好きな仕事なのでつらいことはあまりないですが、メディカルアロマテラピーに西洋医学に代替する力があることを知らない方が多いので、「本当に効果があるの?」と聞かれる時は少し残念に思います。
私が所属している協会では、厳しい検査を受け農薬を使っていない植物から抽出した安全な精油を使用しています。その精油を使って作るジェルやクリームの有効成分の配合の比率は、研究を重ねて決めています。だからこそ安心して使っていただけるものになっています。
一般に流通している精油との違いや精油の正しい使い方に関する知識が浸透していないため、メディカルアロマテラピーに警戒心を持たれることがあるのが残念です。だからこそ、メディカルアロマセラピーの正しい知識を多くの人に知ってもらえるように伝えていこうと思っています。
子育てをしている時、メディカルアロマテラピーに出合った
Q4. どのようなきっかけ・経緯でこの仕事に就きましたか?
メディカルアロマテラピーに興味を持ったのは、子育てをしている時でした。私は心配性で、ちょっとした不調でも子どもを病院に連れていっていたのですが、その度にたくさんの薬が出され、それらの薬を飲み続けることに「このままでいいのかな」と迷っていたんです。
そんな時に職場の先輩からメディカルアロマテラピーを勧められたのが、この道に進んだきっかけですね。
初めに使ったのは「風邪予防ジェル」でした。「効果があればいいな」とお守り代わりにしていたのですが、気がつけば、使いだしてから風邪をひかなくなっていました。
効果があるのかもしれないと思い、日本メディカルアロマテラピー協会のセルフケアセラピスト講師の資格を取って、メディカルアロマセラピストの活動を始めました。
Q5. 大学では何を学びましたか?
大学では幼児教育について学び、小学校教諭と幼稚園教諭の免許や保育士の資格を取りました。教育の仕事を選んだのは、高校時代に大好きだった先生に、「君は先生になるといいよ」と言われたからです。先生がそう言うのならやってみたいと思ったんです。
大学の教育実習では小学校や幼稚園などに行き、自分には幼稚園が合っていると思ったので幼稚園の先生になりました。
Q6. 高校生のとき抱いていた夢が、現在の仕事につながっていると感じることはありますか?
高校時代は先生になりたいと考えていたので、メディカルアロマテラピーについて教える現在の仕事にもつながっていると思います。もともと物を作ることが好きだったので、アロマクラフト作りは楽しい作業ですし、メディカルアロマテラピーに使う精油の成分表を見るのが好きなのは、高校時代、生物の授業が大好きだったからかもしれませんね。
奥が深い植物の世界。もっと知りたいという気持ちを大切に
Q7. どういう人がメディカルアロマセラピストに向いていると思いますか?
クリームやジェルなどのアロマクラフトを作ることが多いので物作りが好きな人、人と接することが好きな人が向いています。
また、精油の種類ごとの成分表があり、それぞれの精油がどんな症状に効果があるのかが分かるようになっているので、そういった成分の含有量や分子量、植物関係の話に興味がある人は、メディカルアロマセラピストの仕事を楽しめると思いますよ。
Q8. 高校生に向けたメッセージをお願いします
「なぜだろう」「もっと知りたい」と探求する気持ちを大事にしてほしいです。高校時代は、探究心の赴くまま、自分が納得するまで深く追い求めることができる時じゃないかと思います。
あと、勉強はもちろん大事ですが、対人関係を大切にしてほしいですね。人との関係やつながりを保つこと、コミュニケーションがきちんと取れるかどうかは、社会に出てからとても重要になってきます。口コミや紹介で仕事につながることもたくさんあるんですよ。
そして、家族や周りの人に感謝する心を忘れずに高校生活を楽しんでください。
現代のように西洋医学が発展する前、植物の持つ力で体の不調を緩和していた時代がありました。薬に頼るだけではなく、植物の力を借りて自分自身で回復する力を養えるようになるという選択肢が増えるのが、メディカルアロマテラピーを学ぶことの良いところだと吉岡さんはおっしゃっていました。
子育て中に出合ったメディカルアロマテラピーに引かれ、今はメディカルアロマセラピストとして活躍している吉岡さん。興味を持ったことと向き合うことで、新たな道が開けることがあります。まだ進路についてはっきりとしたイメージを持てない人は、今興味を持っていることを掘り下げてみてはいかがでしょうか。
【profile】日本メディカルアロマテラピー協会 セルフケアセラピスト講師 吉岡幸枝(よしおか ゆきえ)
この記事のテーマ
「エステ・ネイル・リラクゼーション」を解説
ネイリストやエステティシャンといった美容のスペシャリスト、アロマテラピストなどリラクゼーションのスペシャリストとして活躍する仕事です。いずれも高いホスピタリティや接客能力が求められるだけでなく、自ら学び続け、新しい技術やトレンドを取り込む好奇心やセンスが必要となります。
この記事で取り上げた
「メディカルアロマセラピスト」
はこんな仕事です
ストレス緩和、免疫力の向上、バランスの崩れた自律神経の調整など、患者の症状に応じてアロマテラピーを行う仕事。メディカルアロマテラピーは、精油の成分を用いて、体調不良や病気を予防・改善するための代替治療である。薬の副作用なども問題として取り沙汰される中、治療手段の一つとして採用している医療機関も多い。セラピストには、アロマテラピーに関する知識のほかに、メディカルマッサージや薬学、身体・病気に関する幅広い知見と、患者ごとの治療法を判断する能力も求められる。