【シゴトを知ろう】環境アセスメント調査員 編
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「環境アセスメント」という言葉は、皆さんも公民の授業などで聞いたことがあるかもしれませんね。主に、大規模な開発事業などによって生じる環境への影響を事前に調査し、予測することを指します。
今回は、環境調査、分析を専門にする株式会社オオスミで、環境アセスメント調査員として働いている原口拓也さんに、仕事の内容ややりがい、志したきっかけなどを伺いました。
この記事をまとめると
- 環境を保全すると同時に、人々の生活の安全も守る仕事
- 大学で動植物の研究をする中で、自然環境が抱える問題に気が付いた
- 身近な自然に目を向け、その変化の原因や影響を考えることが勉強になる
環境を守ることは、人々の生活を守ることにつながる
Q1. 環境アセスメント調査員の仕事内容を教えてください
私が勤めているのは、自然や産業にまつわる環境中の物質を採取し、それらを分析した結果をレポートとして発行する会社です。所属する部署では、例えば、大気に含まれる有害物質、自動車や工場から出る排気ガス、河川や海洋に流れる排水、工場や建設現場から発生する騒音や振動などの、調査と測定を行っています。
調査をすることで、「開発によって環境にどのような影響が出るのか?」「人々の生活は、脅かされていないか?」といった問題に対する結果をレポートにし、お客様に提出するのです。こういった調査や分析を行うことで、環境を保全しつつ、人々の生活も守るお手伝いができると考えています。
この仕事では、現場に足を運んでデータを採取する日と、社内でデータをまとめる日があります。データをまとめる日は一日中社内にいますが、現場へ行く日はその都度、一日のスケジュールが異なります。だいたい8時から17時まで調査する日が多いかもしれません。
Q2. 仕事の楽しさ・やりがいは何ですか?
難度の高い調査や測定をやり遂げ、お客様に報告できると、「やりきった!」という達成感があります。特に、お客様が抱える問題の原因を調査によって特定し、改善策の提案までできた時に「ありがとう! 助かりました」などのお言葉をいただくと、とてもやりがいを感じますね。
また、一般の方々は入れない工場内や事業所内に入ることができるので、まるで潜入調査をしているような気分を味わえるのも、楽しみの一つかもしれません(笑)。
Q3. 一方、仕事で大変なことはありますか?
屋外での業務が多いので、雨や暴風時には調査ができません。なので、スケジュールが天候に左右されてしまう点は大変です。特に、夏のゲリラ豪雨は予測ができないので、調査が予定通り終わらないなど苦労も多いですね。
また、調査の際は、事前に現場の状況について資料をもらい、準備を整えてから行くのですが、たまに現場に着いたら事前に聞いていた状況と全く違うこともあります。その場合、用意していた計画が使えなくなってしまうんです。その場で計画を変更することは骨が折れますが、すぐに現場担当者と打ち合わせをしたり、会社の技術グループや担当営業らと連絡を取ったりして、対応するように努力しています。
動物が好きだった学生時代を経て、動物や人の暮らす環境を守る仕事に
Q4. どのようなきっかけ・経緯で環境アセスメント調査員の仕事に就きましたか?
私はもともと自然や動物が好きで、高校時代の理科では生物を選択していました。
高校卒業後は、「野生動物について学びたい」と思い、農学部がある大学に進学し、遺伝子にまつわる学問や動物行動学(生物の行動を研究する分野)、生態学(生物と環境の間の相互作用を扱う分野)などを勉強しました。
就職活動をする際も、動植物の生態調査や、動物に関わる仕事がしたいと考えていました。しかし、研究を続けていく中で「世界では、地球温暖化や環境汚染、河川汚染などさまざまな環境問題が起こっている」と思い、動物だけではなく、環境全体の保全のために仕事をしたいと考えを変えて、今の仕事に就きました。
Q5. 大学では何を学びましたか?
大学では、農学部に籍を置き、動植物に関する学問を研究していましたが、勉強以外の学びも多くありましたね。
例えば、研究や発表などが立て込み、綿密なスケジュールを立てることの重要さを知りましたし、一方で、その場の状況を見て対処しなければいけない時には、自分が持てる限りの知見や経験を基に、その時々に応じた判断をする難しさも学びました。
また、たった一つの結論を出すにために、その物事をあらゆる角度から検証する必要があることも、研究で試行錯誤を繰り返した大学時代に学んだことです。今では、そのときに学んだことが、お客様に提出するレポートや現場での判断力につながっています。
Q6. 高校生のとき抱いていた夢が、現在の仕事につながっていると感じることはありますか?
高校生のころは、動物に関わる仕事として獣医師、またはパークレンジャーになる夢を持っていました。
現在は、動物だけではなく、環境調査を通して自然環境と人間社会、工業社会をつなぐ架け橋として日々まい進していますが、「動物に関わる仕事がしたい」という思いを持ち続けていたからこそ、この仕事に出合えたのかもしれません。
日々の生活にも、環境アセスメント調査員になるための学びはある
Q7. どういう人が環境アセスメント調査員の仕事に向いていると思いますか?
環境アセスメント調査員は、現場に出てデータを採取、さらにそれを解析し、解析結果に基づいてレポートを作成するなど、業務の幅が広い仕事です。なので、体力がある人はもちろん向いていると思います。私も、正しい食生活や、適度な睡眠と運動を意識して、健康を維持しているんです。
また、何事にも疑問も向けて、「なぜこうなったんだろう?」「どうしてこのような結果が出るんだろう?」と、結果だけで満足せずに、細かく考えていける人にもぴったりですね。
Q8. 高校生に向けたメッセージをお願いします
まずは、花の開花や紅葉など、自然のちょっとした変化に意識を向けて、その原因やメカニズムを調べてみることが一番の勉強になると思います。環境アセスメント調査員に興味が湧いたら、環境省や自分が住んでいる自治体のホームページに掲載されている「環境情報」をのぞいてみてください。環境省が発表している「そらまめ君(大気汚染物質広域監視システム)」などのデータを見て、急に数値が上がった(下がった)理由を、自分なりに考察してみるのもいいと思います!
環境問題が深刻化する近年、環境アセスメント調査員の仕事はますます活躍の場が増えそうですね。
自然や動物に関わる仕事が気になる人は、生物や環境にまつわる学問にはどんなものがあるのか調べてみるのもいいでしょう。自分の興味が湧いた学問を勉強してみると、そこから将来への道が広がるはずですよ。
【profile】株式会社オオスミ 調査第二グループ 原口拓也
この記事のテーマ
「環境・自然・バイオ」を解説
エネルギーの安定供給や環境問題の解決など、自然や環境を調査・研究し、人の未来や暮らしをサポートする仕事につながります。また、自然ガイドなど、海や山の素晴らしさと安全なレジャーを多くの人に伝える仕事もあります。それぞれ高い専門性が求められる職業に応じて、専門知識や技術を学び、カリキュラムによっては資格取得や検定も目指します。
この記事で取り上げた
「環境アセスメント調査員」
はこんな仕事です
道路・河川(ダム)・鉄道などの開発が行われる際に事業主体となる団体から依頼を受けて、環境への影響を調査して問題がないかを評価する仕事。環境コンサルティング会社に勤務し、行政機関や企業からの依頼を受けて活動する。具体的には、大気(騒音・振動・悪臭を含む)・水・土壌などの状態や、開発地域に生息する動植物などを調査、予測し、最終的に評価する。対象となる事業は国によって定められており、道路・河川・鉄道・飛行場・発電所・廃棄物最終処分場・埋め立て・干拓のほか、住宅市街地の造成など13種類ある。
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