【シゴトを知ろう】パークレンジャー ~番外編~

「【シゴトを知ろう】パークレンジャー 編」では、上士幌自然保護官事務所の原澤翔太さんに、自然を保護する仕事では、自然を好きな気持ちだけではなく人との関係を築くことも重要であると聞きました。
こちらの番外編では、原澤さんが勤めている職場の雰囲気や、達成感を感じたエピソードを伺いました。
この記事をまとめると
- パークレンジャーの勤務地は国立公園だけに限らない
- 事務所の職員は少人数だが、協力してくれるボランティアが100人ほどいる
- 深刻な山の環境問題への対策プロジェクトを始動できた
素晴らしい景色に、つい見とれてしまう
――パークレンジャーは、志望して就けるとは限らない狭き門だと聞きました。この仕事をしていることについて、周囲からはどんなイメージを持たれていますか?
周囲には「大自然の中で仕事ができて楽しそう」と、ポジティブなイメージを持たれています。かくいう私も、「パークレンジャーになれば、毎日、山や川を駆け回りながら仕事ができるんだ!」と思っていました(笑)。それも間違いではなく、私は自然が好きなので楽しんで働いていますが、実際には、皆さんが抱いているイメージ以上に事務業務も多いと思いますよ。
また、パークレンジャーが「狭き門」、または「国立公園などの限られた場所にいる」という印象から、普段あまり見かけない仕事だとも思われていますね。しかし、パークレンジャーの配属先は、私がいるような大自然の中の事務所だけではありません。環境省本省や、地方の都市にある地方環境事務所で働くパークレンジャーもいるんです。全てのパークレンジャーが自然のすぐそばで働いているわけではないという事実は、意外と知られていません。
――パークレンジャーをやっていてよかったと思う瞬間はありますか?
野外業務で山に登ったとき、天候に恵まれ素晴らしい景色に出合える瞬間です。秋の青空と紅葉で真っ赤に染まった山のコントラストや、冬の日光が反射して輝く雪山の絶景と出合うと、仕事で登山をしているのかプライベートで登山をしているのか分からなくなるほど、気分が高揚してしまいます(笑)。
年齢が離れていても山好き同士なら分かり合える
――本編で、ボランティアの方々との連携が大切だと聞きましたが、実際の職場の雰囲気はいかがですか?
私がいる自然保護官事務所は、常勤職員の私と50代の非常勤職員の2人体制です。あまりの少人数に驚かれるかもしれませんが、この他に、登山道の整備や外来種防除などをサポートしてくれるボランティアの方々が100人ほどいます。
ボランティアの方々と私とでは、親子でもおかしくないほど年齢が離れていますが、山が好きな人たちの集まりだから現場はいつも楽しい雰囲気で、業務が終わるとみんなでほのぼのとおしゃべりを楽しんでいます。いろいろな経験談や知識を聞かせていただけるので、私にとっても非常に良い機会です。
ひとつの問題に向けてみんなが協力し合える
――最後に、お仕事の中で達成感を感じたエピソードを教えてください
現在、私が担当している地域にあるトムラウシ山では、キャンプ地における登山者のし尿の散乱、ティッシュペーパーの残置といった、いわゆる「山のトイレ問題」が深刻です。私が担当する前から、深刻な状態であるにもかかわらず、効果的な対策できていない問題だと聞いていましたが、着任後初めて現場を訪れた私は、想像していた以上の衝撃的な光景に言葉を失いました。高山植物の美しい花畑の中にティッシュペーパーが落ちているのを見て、「今すぐ、動き出さなければならない!」と、関係する行政機関や地元の山岳会にトイレ問題の対策について働きかけを行いました。山が雪で閉ざされている間に何度も会議を重ね、平成29年度からトムラウシ山のトイレ問題解決を目指すプロジェクトが、ようやくスタートしたのです。
この一件では、さまざまな立場の人たちが同じ問題の解決を目指し、みんなで具体的なスタートを切れたことに、一つの達成感を感じました。しかし、問題が解決するには、あと何年もかかると思います。これからが本当の頑張りどころ、気を緩めずに協力してくれる皆さんと頑張っていきたいです。
人が山に与える影響に危機感を抱いていた原澤さんだからこそ、トイレ問題解決への初めの一歩を踏み出せたのですね。
自然が好きだという人は、「自然に対して、自分は何をしたいか?」と考えてみてはいかがでしょうか? 山の景観を守りたい、川の水をきれいに保ちたいといった希望があるならば、そのために今どんな勉強ができるのか、調べてみてくださいね。
【profile】環境省 上士幌自然保護官事務所 原澤翔太
この記事のテーマ
「環境・自然・バイオ」を解説
エネルギーの安定供給や環境問題の解決など、自然や環境を調査・研究し、人の未来や暮らしをサポートする仕事につながります。また、自然ガイドなど、海や山の素晴らしさと安全なレジャーを多くの人に伝える仕事もあります。それぞれ高い専門性が求められる職業に応じて、専門知識や技術を学び、カリキュラムによっては資格取得や検定も目指します。
この記事で取り上げた
「パークレンジャー」
はこんな仕事です
全国の国立公園を保護するためにパトロール・調査などを行う仕事。環境省が全国に設置する自然環境事務所・自然保護官事務所などに勤務する国家公務員で、「自然保護官」とも呼ばれる。登山者が安全に山を楽しむための登山情報を発信したり、調査のために生息する動物に標識を付けたりするのもパークレンジャーの仕事だ。国立公園の管理業務のほかに、動植物の保護、里山の保全、開発行為の許認可審査、ビジターセンターやトイレの整備、美化清掃・環境再生・環境教育の推進など幅広い業務を行う。
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