【シゴトを知ろう】音楽評論家 編

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【シゴトを知ろう】音楽評論家 編

2017.07.04

提供元:マイナビ進学編集部

【シゴトを知ろう】音楽評論家 編

CDのライナーノーツや、音楽雑誌などで目にする“音楽評論家”というお仕事。さほど興味のなかったアーティストでも、評論家の一言で「聞いてみよう」と思ってみたり、世の音楽リスナーに大きな影響を与える憧れです。でもこの方々、一体どんな経緯で音楽評論家になっているのでしょうか? 音楽ライター養成講座などでも講師をしていらっしゃるこの道30年の小野島大さんに、高校生へのアドバイスをたっぷりお伺いしました。

この記事をまとめると

  • 自分の思いや伝えたいことを的確に文章化できたときが一番うれしい
  • 世の中の仕組みやお金の流れを知ることが、その後の社会人生活にとても役立つ
  • 海外文化への興味を持つことや英語力の習得が仕事の幅を広げる

この仕事の喜びは「感じたことが的確な言葉で伝わること」

Q1. 仕事概要と一日のスケジュールを教えてください

出版社やレコード会社、時にはアーティストから直接依頼を受け、音楽の批評やCDレビュー・コラム・アーティストのインタビュー・ライブレポートなどの記事の執筆が主な仕事です。その他にもラジオ番組の構成やパーソナリティ、音楽専門学校やジャーナリスト講座の講師、クラブDJなどもしています。

今や音楽はレコード会社から発売されるものだけでなく、おびただしい数の楽曲が動画サイトやSNS経由で発信されています。専門として仕事をしている僕たちでさえ全ての音源を聞くことは不可能なのに、一般の人たちは何を聞くべきで、聞く価値があるのはどのアーティストなのか、この音楽をどう聞けばいいのか迷うこともあると思います。我々の仕事は、そのガイドや理解の手助けになるような意見や情報を提示する、という役割だと考えています。

<一日のスケジュール>
10:00 メールチェック、ニュースチェック、情報収集など
11:00 執筆
12:00 食事
13:00 執筆、取材準備など
16:00 取材、打合せなどで外出
19:00 ライブ取材
22:00 帰宅、夕食
23:00 執筆
4:00 就寝


Q2. 仕事の楽しさ・やりがいは何ですか?

自分の思ったこと、感じたこと、伝えたいことが的確に文章化できたとき。そしてそれがうまく読者に伝わったという手応えを得たときは、うれしいですね。文章を書く楽しさも苦しさも、全てその部分に集約されている気がします。

ただ僕の仕事で一番悩ましいのは、読者にとっての利益とアーティストにとっての利益は必ずしも一致しないという点。読者はビターかつ率直な意見、つまり「このCDを買う価値があるかどうか」の基準を示してほしいと思っているけれど、アーティストはどんな作品でも味方になってほしい訳です。感じたことを歯に衣着せぬ物言いで書くと、アーティストと衝突することもありますし、逆にアーティストからの評判がいいライターが、読者から信頼されているかというと必ずしもそうでもない。これはいつまで経っても平行線の話で、要はバランスなんだと思います。

今やCDの出来・不出来に関して辛辣(しんらつ)な物言いができる媒体自体が減っています。からすぎても仕事の依頼が来なくなりますが(笑)、言いたいことがいえないのではライターの名折れですからね。辛辣なことを言っても、アーティストを納得させうならせるような文章を書けるかどうかが物書きの“芸”の見せどころ。もう亡くなった尊敬する先輩は「最終的にはアーティストではなく、読者を納得させるために書く」と常々言っていて、その言葉だけは肝に命じています。

実際、読者の反応は僕の耳に届きにくいのに対し、アーティストの反応は直で返ってくるので、油断するとコメントがアーティスト寄りになりやすい。付き合いのあるアーティストには情も移りますし、本人から「あのレビューよかったね」などと褒められるとうれしいものです。ですが、アーティストに褒められるだけがライターの喜びではないということは、これから音楽ライターや評論家を目指す人には覚えておいてほしいですね。


Q3. 仕事で大変なこと・つらいと感じることはありますか?

取材した後のインタビュー起こし、これは録音したインタビューを再度聞き直して文字に起こす作業のことですが、実際の取材時間の数倍もかかるので実に面倒です。あと、締め切りが重なって時間的にも精神的にも余裕がなくなるとき。またレコードやCD、資料類が際限なく増えて自宅スペースをどんどん占領していくので、その収納場所の確保に苦労しています。

また必要経費の多さも悩みで、支出に対しての収入が少ないと感じます。もちろんライブは招待で入れることもありますし、CDもサンプルがもらえる場合もありますが、自腹で払うことも多いです。仕事に直接結び付かなくても情報収集のためには惜しまずに費用を投入しますが、それに対する収入は音楽業界全体が縮小していることもあって、決して見合ったものとはいえないのが現状です。

会社勤めで学んだ、社会で生きるための太く確かな基礎力

Q4. どのようなきっかけ・経緯でその仕事に就きましたか?

大学を卒業して9年間レコード会社で働いていたときに個人で音楽ミニコミ誌*を制作していて、それが結構売れていたので「自分1人くらいならやっていける」と独立しました。でも専念して規模を拡大した途端につぶれてしまいまして……その後ライターになったという経緯です。もともと文章を書くのは好きで、大学生の頃は雑文などを書いていましたが、その頃は自分の仕事になろうとは夢にも思いませんでした。

そんな私がここまで評論家・ライターとしてやって来られたのは、時代の流れも非常に大きかったですね。ちょうど会社を辞めた年の春に『いかすバンド天国(通称:イカ天)』という番組が始まって“バンドブーム”の嵐が起こり、ブルーハーツやBOØWY、ジュンスカイウォーカーズ、ユニコーンといったバンドが一気に世に出て、音楽雑誌の数も急激に増えた時期。媒体数が増えれば、当然ライターの需要は増えますので、路頭に迷った私がちょうどそこにハマったんだと思います。ただ空前のバンドブームといっても、せいぜい2~3年。時代の波に乗ったというだけで、30年間音楽で書いて食べていけるほど甘い世界ではないという自負はあります。

*ミニコミ誌:少数の人々を対象にした情報誌のこと。


Q5. 今の仕事に就くために学んだことはありますか?

レコード会社時代の9年間のうち、8年間は営業で全国各地に赴きレコード店に新譜を売って回る仕事でした。レコード会社というと派手な世界を想像する人もいるでしょうが、僕がやっていた営業は、田舎のおじいちゃん・おばあちゃんがやってるような小さなレコード店を一軒一軒回る泥臭い仕事。地方のベタなスナックでお得意さんと朝まで飲んだり、演歌の歌手のドサ回りについて行ってカラオケのテープを売ったりして……もう完全に異次元の世界でした。今はこのような営業自体がナンセンスなのかもしれませんが、あまりにも自分の文化圏とかけ離れ過ぎていてたので、僕は純粋に楽しめました。

でも、この時期に学んだ社会人としての振る舞い方や社会の仕組み、世の中のお金の回り方、年上の人たちとの付き合い方など基本的なことは、音楽評論家・音楽ライターとして仕事をする上で他の何より今の仕事に役立っています。モノをつくってそれを売り、その対価としてお金を得る、そんな当たり前なことが理解できているか否かが、社会人として生きていく上で意外と肝になるんです。社会経験を持たずにライターになる人がいたら、こういう部分でつまずくんじゃないかと思いますよ。

例えばお金の動きで言えば、僕が高校・大学時代に夢中になっていたマニアックな洋楽ロックは、日本全国で1,000枚しか売れていなくて、「俺がこんなに好きなのに、これかよ」と愕然とする訳です。では音楽業界を支えているのは誰かというと、何百万枚も売り上げるアイドルグループだったり、生徒にCDを配布する全国各地の民謡の先生だったりするんです。そういう世の中の大きなお金の回り方を理解しているかどうかが非常に重要で、これはどんな会社でも一度社会に出て働いてみれば身に染みて分かることです。だから、音楽評論家や音楽ライターになりたかったのに音楽とは関係のない会社員になってしまった……という場合でも落ち込む必要はないですよ。社会で生きていく上で一番大切なことを学べるチャンスなんですから。

中学・高校生の時期は好きな事に徹底的に没頭したほうがいい

Q6. 高校生の時に抱いていた夢が、現在の仕事につながっていると感じることはありますか?

勉強はそっちのけで、本を読み音楽を聞くことに没頭し過ぎて、大学受験はことごとく失敗しました。これが良かったか悪かったかは分かりませんが、高校時代に蓄積して育んだ知識や感性は間違いなく今につながっています。あんな風に徹底的にものごとに没頭できるのは、中学・高校生の特権ですからね。大学時代の4年間もお金はなかったけれど時間だけはあったから、得たものはとても大きかったと思います。

高校生の皆さんには、自分の得意なことや好きな事だけでなく、偉い人が勧めてるとか、好きなアーティストが影響を受けたとか、何でもいいから半径1m以上のものに興味を持って片っ端から見聞きしてみてほしいです。これが信じられないくらい将来の糧になります。感性が定着する前の高校生の頃に吸収したことは、ただの肥やしじゃなく、ものすごく質のいい肥やしになります。今は分からなくても、10年経ったら分かることってたくさんありますからね。アンテナを広げてえり好みや食わず嫌いはせずに、トライしてみてほしい。いや絶対しろ!という感じです。

向いているのは「ひとこと言いたくなる性格の人」

Q7. どういう人が音楽評論家に向いていると思いますか?

好奇心があって、新しいものに接した時に吸収したりトライすることにためらいがない人。音楽だけでなく、さまざまな分野に興味を持ち、知識を吸収しようとする人。また、どんなことに対しても、ひとこと言いたくなる性格の人、でしょうか。

この「ひとこと言いたくなる性格」というのは、人の意見を「人によっていろんな意見があるから」とスルーできる人よりも、何か引っかかる人の方が向いていると個人的には思うんですよ。
ライターの仕事はアーティストのように自分の内面と向き合うと同時に、世間や社会との能動的かつ積極的な関わりも重要です。評論やライティングは、好きな音楽を聞いて“いいな”“好きだな”だけで終わらせず、“どうしてこの音楽を自分が好きなのか”“何が自分の心を捉えるのか””なぜこの音楽はこんなに美しいのか"を考えて、こねくり回して文章化する仕事ですから、「なぜ」「どうして」と深堀りする好奇心が希薄な人にはつらいと思います。


Q8. 高校生に向けたメッセージをお願いします

重複しますが、できるだけたくさんの本を読み、音楽を聞いてください。好きな、よく知っている音楽を何度も聞き込むことも大事ですが、あまり知らない、自分とは関係なさそうな音楽でも積極的に聞くことが大事です。この時期に吸収したものはあなたの人生の基礎をつくり、一生あなたを支えてくれます。特に洋楽、というか海外の文化全般に興味を持つことがとても大切です。

また音楽に関する仕事に就きたいなら、英語能力はあるに越したことはありません。辞書片手でも英語が読めること、片言でも英語で会話ができることが大事です。海外アーティストをインタビューする時、1時間のインタビューも通訳が入れば実質30分になってしまいますが、相手の話していることが概要でも理解できれば40分に増やすことができるかもしれない。どんなに優秀な通訳の方が入ってくれても、アーティスト本人が語る言葉をダイレクトに理解する以上のことはありませんし、通訳への費用が必要なくなれば依頼は増える可能性もあります。海外の音楽サイトの情報収集も容易になるし、英語力を培うことは仕事の幅を広げることにつながります。僕も高校時代もう少し英語の勉強を真面目にやっておけば良かった、と後悔しています(笑)。



「読むのは高校生なんだよね」と、何度も確認をしながらお話をしてくださった小野島さん。読み手に響く、役に立つ情報を提供しようという職業柄ともいえるサービス精神で「とにかく好きなことに没頭しろ」「好奇心の半径を広げろ」「人の意見に引っかかりを持て」と明快なアドバイスが満載のインタビューでした。“ものごとの良し悪しがまだ分からない尊い時代”のど真ん中にいる高校生のみなさん、ふるいにかけて選ぶのはまだまだ先の話。今は片っ端から詰め込んで吸収する時期ですよ!


【profile】音楽評論家 小野島大

この記事のテーマ
音楽・イベント」を解説

エンターテイメントを作り出すため、職種に応じた専門知識や技術を学び、作品制作や企画立案のスキル、表現力を磨きます。音楽制作では、作詞・作曲・編曲などの楽曲づくりのほか、レコーディングやライブでの音響機器の操作を学びます。舞台制作では、演劇やダンスなどの演出のほか、舞台装置の使い方を学びます。楽器の製作・修理もこの分野です。

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この記事で取り上げた
「音楽評論家」
はこんな仕事です

音楽全般、あるいは特定ジャンルの知識や造詣に基づき、アーティスト活動や新しい楽曲、シーンについて評論を展開する仕事。研究・分析するテーマは、音楽雑誌記者や編集者と同じではあるが、評論家としての一段高い見識を示す必要がある。音楽系媒体などを発表の場にしている人が多いが、一般誌の音楽コーナー、CDや映像作品に付くライナーノーツの執筆など活動範囲は広域。楽曲やコンサートの批評、アーティストへのインタビュー対談、講演も行う。音楽編集者から評論家になる人、アーティストから転身する人もいる。

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