【シゴトを知ろう】板金工 編
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事故などで破損した自動車の車体を修理する仕事、「板金工」。破損の状態に応じて、新しい部品に取り換えたり、車体をつなぎ合わせたり、塗装を行ったりと、さまざまな手法で車を元の状態に修復する仕事です。
今回は、大阪府高槻市で事故車修理や中古車の注文販売、レンタカー貸出などの事業を行う会社「Jocar」の代表を務め、自らも板金工として長いキャリアを持つ田中勇輔さんに、板金工の仕事について詳しくお話を伺いました。
この記事をまとめると
- 必要に応じて、車のゆがんだフレームを直したり、パーツを交換したりする
- 自動車が直ったときのお客さんの笑顔や「ありがとう」の言葉がやりがいになっている
- 修理を行う上で、探究心や好奇心が一番重要
事故で破損した自動車の状態に応じて修理を手掛ける
Q1. 仕事概要と一日のスケジュールを教えてください
私の会社では、自動車の車検・整備から、事故で破損した車の修理、板金・塗装全般などを行っています。板金工としての仕事では、事故車のゆがんだフレームを直したり、必要なパーツを交換したり、状態に応じて車の修理を行います。また、雨の跡や汚れを付きにくくしたり、傷からも守ったりしてくれるカーコーティングを自動車に施すことも仕事の一つです。
<ある一日のスケジュール>
09:00 出社 FAX、メール確認・スタッフミーティング
09:30 作業開始。打ち合わせ・車検、整備・板金・色合わせなど
12:00 昼食
13:00 スタッフミーティング
13:30 午後作業開始。見積り作成・納車準備・掃除など
15:00 休憩
15:30 作業開始。部品発注・塗装など
19:00 業務終了。業務報告・反省会、帰宅
Q2. 仕事の楽しさ・やりがいは何ですか?
事故で破損した状態で持ち込まれた自動車が元通りになったことで、お客さんが笑顔を見せてくれたり、「ありがとう!」と言葉をかけてくれたりすることが、この仕事の一番のやりがいになっています。また、スタッフみんなで一丸となって修理をやり遂げたときの達成感や楽しさも、やりがいの一つですね。
Q3. 仕事で大変なこと・つらいと感じることはありますか?
板金・塗装の仕事は、時代とともにいろいろな変化があります。鉄板の材質の変化に伴い、修理に使用する道具、材料などの進化など、変化は急速に進んでおり、それらに対応するのが大変なこともあります。
正直、仕事は毎日が大変ですし、つらいこともたくさんあります。ですが、仕事とは、人生の大半を占める物だからこそ、どれだけ真剣に取り組む事ができるかでその先の人生も違ってくると思うんです。だからこそ、大変でも自分にしかできないことや、自分を選んでくれたお客さんに心から喜んでいただける仕事をすることで、大変なことでもやりがいにつながると考えています。
最初は見習いから始まり、雑用の合間に自分で作業を見て学んで仕事を覚えていった
Q4. どのようなきっかけ・経緯で板金工の仕事に就きましたか?
私はもともと細かい作業が大好きで、車や物にスプレーガンを使って絵を描く「エアブラシアーティスト」の仕事に憧れていました。しかし、経験もなく、なかなかその職に就くのが難しかったということもあり、その仕事は諦めるようになりました。そんなとき、「勉強になるのでは?」と、たまたま知人に紹介していただいたのが板金・塗装の仕事でした。その出来事がきっかけで、この会社で働くようになりました。
Q5. 板金工になる過程では、どんなことを経験してきましたか?
最初は見習いから始まりました。その頃は、いきなり修理の作業などはさせてもらえないので、雑用の合間に、他の板金工の作業を見て学んでいました。私はもともと車の塗装に興味がありましたが、板金を間近で見ることができて、車の修理の仕事をその目で実感することができました。
Q6. 学生時代に抱いていた夢が、現在の仕事につながっていると感じることはありますか?
10代のころから、エアブラシアーティストなど、車の塗装を行いたいと考えていたので、当時の夢は現在の仕事につながっています。車のことだけでなく、これまでに積み重ねてきたいろいろな経験が、現在の自分につながっていると思います。
探究心や好奇心を持つことが重要!
Q7. どういう人が板金工の仕事に向いていると思いますか?
板金工の仕事では、車に対しての探究心や好奇心が一番重要じゃないかなと思います。ほぼ全ての作業は、これまでに培った知識や経験、またその応用の積み重ねが大切になってきますので、物や作業の意味を理解し、一度覚えたことを次回の作業に適応することのできる向上心の強い人は、特にこの仕事に向いていると思います。
Q8. 高校生に向けてメッセージをお願いします
板金工の仕事に限らず、特にここ最近では、時代の変化とともに需要なども変わりつつあります。現時点で自分に何ができるのか、何になりたいのかが分からないという人も多いと思いますが、とにかくいろいろなことにチャレンジしてみるのがいいと思います。最近は、職業体験型施設や中学校の授業で行われている職業体験などにより、これまで興味すらなかったことや、自分の価値観とは違う仕事に簡単に触れてみることができるようになったのではないかと思います。その中で、本当の自分や新しい自分との出会い、そしてこれまでの学校生活で学んだ知識、経験、人脈、考え方などが思わぬ形で役に立つ日が必ずくるものだと思います。
田中さんが「お客さんの笑顔がやりがい」と答えてくださったように、「壊れたものを直す」板金工の仕事は、修理を通して人と人をつなぐ役割のある仕事でもあるのですね。自動車に興味がある人だけでなく、ものを直すことで人の役に立ちたいと考えている人にとっては、板金工はとてもやりがいのある仕事ではないでしょうか。
【profile】板金工 田中勇輔
【取材協力】Jocar
http://jocar-jikoshuri.com/
この記事のテーマ
「自動車・航空・船舶・鉄道・宇宙」を解説
陸・海・空の交通や物流に関わるスキルを学びます。自動車、飛行機、船舶、鉄道車両などの整備・保守や設計・開発、製造ラインや安全の管理、乗客サービスなど、身につけるべき知識や技術は職業によってさまざまで、特定の資格が求められる職業も多数あります。宇宙については、気象観測や通信を支える衛星に関わる仕事の技術などを学びます。
この記事で取り上げた
「板金工」
はこんな仕事です
事故などで破損した自動車の車体を修理する仕事。工場に運ばれてきた自動車の状態をチェックし、ハンマーやペンチを使って元のカタチに修復。場合によっては新しいパーツに取り換えたり、溶接技術により車体をつなぎ合わせたりすることもある。また、小さなへこみやすり傷を直すことも業務の一つであり、こうして修正した車体の塗装も行う。必須資格などは特になく、現場を経験しながら技を磨いていく仕事である。手先の器用さや体力、技術習得に対する向上心があるとよいだろう。
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