【シゴトを知ろう】医療事務員 ~番外編~
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資格が取れる事務の仕事として人気の高い「医療事務」。病院特有のレセプト業務(診療報酬請求業務)はかなり大変なお仕事のようですが、どのようなことを行うのでしょうか。金沢西病院の小児科に勤務する社会人2年目の月野佑梨さんにお話を伺いました。
この記事をまとめると
- 月に一度のレセプト業務は1週間で集中的に行う
- 病名や処方される薬の名前は覚えておくと良い
- 医療事務の資格は必ずしも必須ではないがあると優遇されることも
レセプト業務の期間はプライベートの予定も入れない
――この仕事を始めてから一番驚いたことはどんなことですか?
たくさんあったと思いますが過ぎてしまうと忘れてしまうものですね(笑)。最初はレセプト(診療報酬明細書)の膨大な量に驚いた覚えがあります。小児科のレセプトの確認作業を私1人で行っているのですが、例えば今月は220枚くらいを7日間で処理しました。レセプトに誤表記がないか細かい文字を追って確認していくのですが、間違っているかもしれないという目線で見る作業にはかなりの集中力を要します。受付業務が終わってからの作業になるので、疲れていて見落とす場合もあります。そのため日を改めての二重チェックは欠かせません。レセプトは月末に発行され、月初の提出期限までの1週間でまとめて対応するのですが、遅れることができないのでこの期間はプライベートの予定は一切入れないようにしています。
――小児科にはどのような症状を抱えた子が来るのでしょうか
熱・咳・鼻水などの症状が出ている子が多いですね。冬ならノロウイルスなどによる下痢・嘔吐やインフルエンザを発症して来る子もいます。あとは予防接種を受けに来る子ですね。予防接種は生後2カ月~中学3年生の子どもが公費で受けられるものだけでも9種類あります。それ以外でもロタウイルス感染症やおたふく風邪の予防接種もあり、年齢によって摂取量が違ったり、自治体が配布する無料チケットが使える期間が決まっていたりするので慎重に確認しなければいけません。
――医療事務の仕事に就くには資格が必要なのでしょうか
求人情報では「資格は問いません」と書かれていることも多いですが、持っていたら優遇されることもありますし、病院によっては必須という場合もありますね。
――あった方が良い知識にはどんなものがありますか?
病名やそれに処方される薬の名前は覚えておいた方がスムーズです。医師によって「この病気ならこの薬」という方針が大体決まっているので、働きながら自然に身に付いていきます。私も最初の頃は医師に言われた薬の名前を全てノートに書き出して、数カ月かけて覚えました。たまに外部から来た医師から違う薬が処方されることがあるため、その都度調べて覚えることもあります。病名も今では受付で症状を聞いた時点で何となく見当がつくようになりました。医療の知識が増えていく楽しさがあるのもこの仕事の魅力ですね。
――医療事務の資格以外にあると有利な資格やスキルはありますか?
私は短大時代に秘書検定準1級の資格も取ったのですが、オフィスでのマナーや敬語の使い方を学べたことは大きかったですね。お茶の出し方や上座・下座の違いなど、知っているつもりでも意外とできないことは多いですから。掲示物を作ることも多いのでワードやエクセルのスキルを短大で学んでおいたのも良かったと思います。
求人はあるが新卒はなかなかタイミングが合わない場合も
――医療事務員は求人の多い仕事なのでしょうか
地域によると思いますが、私が就活をしたときは新卒の医療事務員の求人は少なかったですね。求人が出る時期も遅くて、秋冬あたりにやっと出てくるという状況でしたので、医療事務の資格を取った子でも早く就職先を決めたくて他の職種へ転向した子もいました。
ヤングハローワークに通ったり、いろいろな病院に電話して募集がないか聞いたりもしましたが、求人が出ても「空きが出たからすぐに来てほしい」ということが多く、前もって就活することが難しかったです。最終的には、その状況を見て心配してくださった大学の先生から、今の病院に勤務していた大学の先輩を紹介していただき、たまたま空きが出て採用していただくことができました。
――医療事務員の方はどのようにキャリアアップしていくのでしょうか
1年目は主事補という立場で、1年間キャリアを積むと主事になります。その次は主任といってその科のトップに立つことになります。その上はセンター長や事務長になります。この構造はどこの病院でも同じだと思います。
――ブランクがあっても続けられるお仕事なのでしょうか
続けている人は多いですね。うちの病院は産休・育休の制度も充実しているので、子どもを何人も生んで復帰されている方もいます。診療報酬は原則として2年に一度改訂されますので、その都度覚え直すことはありますが、大幅に変わるものではないのでブランクがあっても続けやすい仕事だと思います。
――病院で働いていると自分が病気になったときも安心なのではないでしょうか
そうですね。それにうちの病院では職員が風邪をひいたときなどの診療費や薬代は福利厚生として実質負担ゼロになりますので、ありがたいですね。就職したての頃は慣れない仕事にストレスを感じ、胃カメラ検査をしたこともあるのですが、何万円もの治療費を負担せずに済んだのは助かりました。通常の会社員の方だと会社を休んで病院に行かないといけないと思いますが、私たちは休憩時間などを利用して受診できるのも良いところです。
自分や家族が病気になったとき、医療の知識があると心強いものです。医療事務は、仕事を通してそれらの知識が増えていくという喜びもあるようです。万一病気になったときの費用や受診の負担を抑えられるという点も、他の職場にはない大きなメリットですね。
【profile】金沢西病院 医療事務 月野佑梨
http://www.knh.or.jp
この記事のテーマ
「医療・歯科・看護・リハビリ」を解説
医師とともにチーム医療の一員として、高度な知識と技術をもって患者に医療技術を施すスペシャリストを育成します。医療の高度化に伴い、呼吸器、透析装置、放射線治療などの医療・検査機器の技師が現場で不可欠になってきました。専門的な技術や資格を要する職業のため、授業では基礎知識から医療現場での実践能力にいたるまで、段階的に学びます。
この記事で取り上げた
「医療事務員」
はこんな仕事です
医療事務員の主要な仕事は、診療費を算出して請求するレセプト業務である。個人負担分以外の診療費を病院が健康保険組合などへ請求するのに必要で、病院経営の基盤になる。この業務は、医師のカルテを基に処置名や薬名を健康保険の点数に換算。診療報酬請求明細書を作成する。レセプト業務以外にも、受付や会計、入退院などの手続き、患者の呼び出しなど仕事は多岐にわたる。特に資格は必要ないが、知識や経験を積んでいる人が就業しやすい。勤務形態は、正規社員や派遣社員、パート、アルバイトとさまざまである。
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