【シゴトを知ろう】POPライター ~番外編~
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総合ディスカウントストアのドン・キホーテで、14年間POPを作成しているベテランPOPライターの伊藤雅子さん。ペンを多用するPOPライターならではの職業病やドン・キホーテ特有の丸文字の裏話などについてお話しいただいたので、番外編としてご紹介します。
この記事をまとめると
- 丸みが特徴の「ドンキ文字」。試験や勉強会を行い、全国の店舗で統一を図っている
- なじんだペン先を使い続けるための裏技など、POPライター同士で情報交換
- POPには旬がある!? お客さまの心を捉えるため、鮮度が落ちたPOPは廃棄する
手作業がメイン。品質だけではなく、効率や生産性も求められる
――POPライターにはどういう性格の人が多いのでしょうか?
とにかく手作業をする仕事なので、アナログな作業が好きな人が多いですね。字を書いたり、はさみを使ったりするなど、手を動かしてモノを作ることがおっくうじゃない人です。
といっても、美術系の学校やデザイン学校を卒業してこの職に就いている人だけでなく、未経験からスタートしている人も多いです。
――ドン・キホーテはどの店舗に行っても同じような雰囲気のPOPがありますが、決まりがあるのでしょうか?
入社したばかりの人は、見本を見ながら練習します。文字や数字の書き方、書き順は独自のルールがあるんですよ。弊社のPOPは丸みのある文字が特徴ですが、あの書体、私たちは「ドンキ文字」と呼んでいるんです。まずはそのドンキ文字を書けるようになることが基本ですね。
長年POPライターをしていると、だんだんドンキ文字に自分の癖が入ってきてしまうことがあるので、時々、試験や勉強会をすることで、全国どこの店舗でも統一された均一の品質を保てるようにしています。
そういう面からも、自分の色を出そうとするよりも、ルールにのっとって仕事をできる素直さが必要です。
▼YouTube「ドンキチャンネル」職人技のPOP作成
自宅にペンが300本! でも、ペン売り場に行くと欲しくなる……
――POPライターならではの職業病はありますか?
休みの日などに、大きな文房具売り場に行くともう大変なんです(笑)。ペンの売り場にいるだけであっという間に1時間近くたってしまいます。
会社には備品のペンがありますが、「こういうペンが使いたい」と思ってよさそうなペンがあるとついつい買ってしまいます。いつの間にか自宅には300本近いペンが集まってしまいました! その中からお気に入りのペンを会社に持ち込んで、POP作成に使用することもありますよ。
――POPライターさん同士で情報交換などはするのでしょうか?
数年前までは、弊社の各店舗には1、2人しかPOPライターがおらず、他のPOPライターと交流する機会はほとんどありませんでした。でも最近、社内体制が少し変わったことと私が地区リーダーになったこともあって、他のPOPライターと交流して情報交換する機会が増えましたね。
例えば通常は、ペンのインクがなくなったら新しいペンを使いますよね。でもPOPライターが使っているペンの場合、ペン先にはその人独特の癖がついているんです。
新しいペンだとペン先が固く、なじむまでに時間がかかります。いつもと同じPOPに仕上げるためには癖がついているペン先の方が使いやすいので、ペンを分解して今まで使っていたペン先を外し、新しいペンに付け替えています。
こういうことができることを知らないPOPライターもいるので、教えてあげることもありますよ。
キャッチコピーを考えることも。旬の言葉に敏感です!
――一般の人が知ったら驚くようなことはありますか?
POPを作成するとき、基本的に下書きをしないことは驚かれるかもしれませんね。どこにどういう飾りを入れて、どのくらいの大きさでどこに文字を書くかというレイアウトは、依頼書を見ながらすぐに頭の中で決め、そのままペンで書き始めます。
下書きをしてから作成する人もいますが、後輩たちには下書きをしないで作ることを目標に持ってもらっています。万が一、自分の中で気に入らない部分があっても、依頼された内容を満たしているのであれば書き直すのはNGです。求められているのは、新鮮なPOPを必要とされているタイミングで提供するスピード性なんです。
あとは鮮度を保つため、店内のPOPは使い捨てなんですよ。大型のものなどはまれに保管しておくこともありますが、書かれているキャッチコピーなどにはその時の旬の言葉が反映されていて、少しでも時期がズレるとお客さまの心に響かないものになってしまうので、使い捨てにして鮮度をキープしていますね。それだけ会社はPOPを重要なものと考えていて、経費をかけています。
――キャッチコピーもPOPライターさんが考えるんですか?
依頼書に書いてほしい言葉が指定されている場合もありますが、口頭で「○○の商品、こんな感じでよろしく!」とざっくりとした指示だけで作成する場合もあります。そういうときは、自分でキャッチコピーを考えますね。
その際に重要なのが、お客さまに響く言葉を選ぶことです。そのためにも、テレビCMで使われるフレーズやTwitterなど、今、皆さんがどういう言葉に反応しているかといったことや気になる言い回しなどをキャッチできるよう、常にアンテナを張っています。
お客さまの心に響く旬のPOPを作り出すだけではなく、仕事道具のペンの節約や作業効率を考えながら仕事をしているPOPライターの人たち。「会社にとって、POPの役割がどういうものなのかを考えることが大切」と伊藤さんはおっしゃっていました。
POPライターは店頭に立って接客しないからといって、人とのコミュニケーションが希薄なわけではありません。売り場や商品をより魅力的に見せるPOPを作るためには、現場やお客さまの反応をよく知るスタッフとのコミュニケーションが欠かせないからです。
また、世の中の動きや流行を常にキャッチできるアンテナを張り巡らせて、お客さまの心をつかむ言葉を選び抜くセンスも求められています。
言葉で人を動かす広告の仕事に興味がある人やデザインに関心がありイラストが得意な人は、POPライターになったつもりで、お気に入りの商品のPOPを作ってみてはいかがでしょうか?
【profile】株式会社ドンキホーテホールディングス POPライター・京葉支社リーダー 伊藤雅子
総合ディスカウントストア「ドン・キホーテ」 http://www.donki.com/
この記事のテーマ
「マスコミ・芸能・アニメ・声優・漫画」を解説
若い感性やアイデアが常に求められる世界です。番組や作品の企画や脚本づくり、照明や音響などの技術スタッフ、宣伝企画など、職種に応じた専門知識や技術を学び、実習を通して企画力や表現力を磨きます。声優やタレントは在学しながらオーディションを受けるなど、仕事のチャンスを得る努力が必要。学校にはその情報が集められています。
この記事で取り上げた
「POPライター」
はこんな仕事です
手描き文字やイラストを使用し、店頭販売用の広告・値札を作成するのがPOPライターだ。スマートな百貨店の売り場よりも、小売店、スーパー、ドラッグストア、電器店などの賑やかな売り場作りで活躍。商品の魅力をどう説明するのか、訴求ポイントを整理するのか、それを考えて作業に着手。太い文字をフチで囲んだり、ハイライトを入れたり、ラミネートを作ったり、客が商品に気付いて購入意欲が刺激されるようにする。商品の特性と消費者のニーズを読み取り、的確に表現するイラストや文字装飾の技量を高めたい。