【シゴトを知ろう】版画家 編

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【シゴトを知ろう】版画家 編

2017.05.26

提供元:マイナビ進学編集部

【シゴトを知ろう】版画家 編

芸術作品の表現方法の一つ、版画。銅や木などの版に手を施し、それをさまざまな手法で刷って作品を生み出すのが版画家です。
今回お話を伺ったのは、版画家として活動を続けて約30年になる中村桂子さん。版画家としてのお仕事や日常についてなど、いろいろとお話しいただきました。

この記事をまとめると

  • 作品の構想から作品が売れた後の経理処理まで、制作活動だけではなく現実的な仕事も多い
  • 版画と出合ったのは美術大学1年生の時。重なり合った色の美しさに引かれのめり込んだ
  • 思い描いているイメージとは左右反転の世界を作る版画家。辛抱強くイメージを追い求める人が向いている

版画家と大学教授、二足のわらじを履く生活

Q1. 仕事概要と一日のスケジュールを教えてください

版画家として活動する傍ら、大学の美術科版画コースの教授もしています。大学では週4日間学生たちに指導を行い、空いた時間を使って、自宅や大学で版画の制作をしています。
家族と住んでいる自宅は神奈川にあるので、火曜日に大学のある山形へ行き、大学での仕事を終えた金曜日の夜に神奈川に戻るという生活です。
画廊などで個展を開いて作品が売れると、それが収入となります。画廊が個展の企画や販売など作家をサポートしてくれますが、作家自身も画廊との交渉や経理的な処理など、制作以外のことを自分自身で行います。

<ある一日のスケジュール>
08:00 大学へ出勤、授業準備、事務、会議など
11:30 昼休み
12:30 講義授業、または研究室にて事務仕事など
14:00 学生に演習の指導
21:00 帰宅


Q2. 仕事の楽しさ・やりがいは何ですか?

やっぱり、ものづくりの楽しさです。版画は、イメージしている完成形を左右反転させて版を制作します。刷り上げるまで結果が分かりません。実際に版を紙に刷る時は、ワクワクとドキドキが交錯します。「思っていたのと違う!」なんてことも多々ありますが、たまにうまくいった時の喜びは他に代わるものがありません。

もう一つ魅力だと感じているのは、版画を通して私が何者かというアイデンティティを示せることです。
美大時代に版画を始めた時、たくさんの色を使って刷ったところ、いろんな色が重なり合った複雑な色に刷り上がりました。とてもきれいな色だと思ったのですが、その色を「きれい」と感じるのは、伝統的に繊細な色の感覚を持つ日本人だからだと思ったんです。版画というのは自分のアイデンティティを確認でき、それを表現できるツールでもあると考えています。


Q3. 仕事で大変なこと・つらいと感じることはありますか?

大学で教えているので思ったように制作活動の時間が取れず、それをつらいと感じることがあります。でももっとつらいのは、いいと思えるものが作れない時ですね。

版画家の仕事だけで食べていくのは難しいことです。国内の版画家の中で作家収入だけで生活されている方は、1割程度かもしれません。
版画は複数芸術といって、「版」があるので同じ作品が複数作れます。そのため、油絵などと比較すると作品1点あたりの値段はかなり安くなります。画廊が企画した個展で売れた場合、その半分ほど(画廊との契約によります)を画廊へ支払い、残りの半分が自分の取り分となります。多くの作家さんが、私のように別の仕事と兼業しながら制作活動を続けています。

最初の夢は小説家!? より自分の力を生かせる美術の道へ進む

木版画とスクリーンプリント、針金を使った中村さんの作品『in between 13-1』

木版画とスクリーンプリント、針金を使った中村さんの作品『in between 13-1』

Q4. どのようなきっかけ・経緯でこの仕事をはじめましたか?

高校生の頃、会社という組織の中の駒になるのがイヤで、自分から何かを仕掛ける仕事がしたいと思っていました。そこで小説家を志望していたのですが、ある時、自分にはプロになれるほどの技量がないことに気づいてしまったのです。「じゃあ、自分が他人に提供できることって、あと何があるだろう?」と考えた時、残っているのは小学生の頃から好きだった美術でした。

高校1年生の時から美術大学受験のための予備校へ通い、2年浪人して美術大学の油絵科へ入学。大学1年生の時に版画と出会い、「版画っておもしろい」「もっと本気でやってみよう」と3年生からは版画を専攻し制作活動にのめり込みました。卒業後は研究生としてさらに1年間勉強を重ね、修了後はデザイン会社などでアルバイトをしながら版画家としての制作を続けました。
定期的に個展を開催したり、美術館で行っている版画教室の講師アシスタントや出身大学での非常勤講師を務めたりして、33歳の時には五島記念文化賞(*)の新人賞をいただき、1年半イギリスに滞在しました。

*五島記念文化賞:公益財団法人五島記念文化財団が授与している賞。芸術文化の分野の向上や発展を目的として、優れた芸術活動を行っている人を表彰、助成している。


Q5. 大学では何を学びましたか?

美術大学の油絵科では、油絵や版画、立体などいろいろと勉強しましたが、1・2年生の時に受けた版画の授業がおもしろく、版画制作のための機械が使えるのは大学に在籍している間だけということもあって、版画コースに進みました。
最初は難しくていい作品が作れませんでしたが、ある時、「きれいな色!」と思える作品ができたんです。それで版画の楽しさに目覚めましたね。それからはアトリエにこもり、制作活動に没頭していました。


Q6. 高校生のとき抱いていた夢が、現在の仕事につながっていると感じることはありますか?

つながっているといえばそうですが、ストレートにつながっているわけではありません。高校生の頃に抱いていた「小説家になりたい」という夢は早々に断念しましたからね(笑)。けれど、自分を客観的に見て、その道で必要な力がないことに気づき、もう一つ興味のあった美術の道へ進んでみようと思ったことが現在につながっています。

熱中できるものがあれば、人生が豊かになる

Q7. どういう人が版画家に向いていると思いますか?

絵画の中でも特に版画は、頭の中にある完成形を形にしていくのではなく、完成形を反転したものを一生懸命に作る作業が続きます。見えない結果を想像して作っていくのです。さらに、版を刷ってみて、一回で思った通りの作品ができ上がることはごくまれです。なので、辛抱強く諦めない人、根性のある人が向いていると思いますね。


Q8. 高校生に向けたメッセージをお願いします

どんな世の中になっても、「自分はこれが好き!」といえるものを見つけてほしいです。私にとっては版画でしたが、プロの作家を目指すもよし、自分を癒すもの、家族に見せたいなど目的はそれぞれでいいと思います。ただ、とりこになるくらい熱中できるものが一つあるだけで、人生がとっても豊かになるはずです。ぜひ、そういうものを見つけてほしいです。


版画のおもしろさは、油絵などと違って完成形そのものを作っていくのではないところにあるとおっしゃっていた中村さん。版を刷る時に色を変えれば、すぐに色違いのものが出来上がることも、他の絵画にはない醍醐味だと教えてくださいました。
芸術に親しむ場合、画集を見てどんな作品があるのか、自分の好みはどういうものなのかを知るのもいいですが、生で作品を鑑賞するからこそ伝わってくる魅力があります。美術が好きで、版画や油絵などに興味のある人は、ぜひ画廊や美術館に足を運んでみてはいかがでしょうか。個展が開かれているときは、制作した作家が在廊している場合がありますので、作品について話を聞けるかもしれませんよ。


【profile】版画家 中村桂子

この記事のテーマ
デザイン・芸術・写真」を解説

デザインは、本や雑誌、広告など印刷物のデザイン、雑貨、玩具、パッケージなどの商品デザイン、伝統工芸や日用品などの装飾デザインといった分野があり、学校では専門知識や道具、機器を使いこなす技術を学びます。アートや写真を仕事にする場合、学校で基礎的な知識や技術を身につけ、学外での実践を通して経験やセンスを磨きます。

「デザイン・芸術・写真」について詳しく見る

この記事で取り上げた
「版画家」
はこんな仕事です

さまざまな版材に彫刻などの細工を施して製版し、インクや絵の具で紙・布に印刷した絵画を制作する仕事。材質によって木版画、石版画(リトグラフ)、銅版画(エッチング)、シルクスクリーンなどの技法がある。日本の浮世絵は、多色刷りの木版画として世界の美術愛好家に人気が高い。美大や専門学校で学んだ後に芸術家をめざす一方、絵本やイラストレーションの原画などの分野で、装丁家やイラストレーター、デザイナーと組んだ仕事を行う道もある。美大や専門学校の講師、絵画教室の運営などを、並行して行う人も多い。

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