【シゴトを知ろう】整形くつ技術者 ~番外編~

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【シゴトを知ろう】整形くつ技術者 ~番外編~

2017.06.06

提供元:マイナビ進学編集部

【シゴトを知ろう】整形くつ技術者 ~番外編~

本場のドイツで整形くつ作りの技術を学んだ大関悠人さん。ドイツでは専門学校ではなく会社に入って技術を学ぶ職業教育システムがあります。大関さんは入社させてもらえる会社をドイツに行ってから探したそうですが、言葉の壁もある中、一体どうやって入ることができたのでしょうか。

この記事をまとめると

  • ドイツには会社に入って技術を学ぶ職業教育のシステムがある
  • 外国語を習得するには恥ずかしいという気持ちを取っ払うことが大事
  • 整形くつを作れる人は日本では少ないが必要としている人はたくさんいる

商工会議所の入り口で座り込んだ

――ドイツの会社で訓練したそうですが、その会社にはどういう経緯で入ったのですか?

ドイツに渡った当初は知人もいないしドイツ語も全く話せなかったので、半年間は語学学校へ通いました。最初は観光ビザで行きましたが、1年間の語学留学ビザを取得できたので、その間に受け入れてくれる会社を探そうと考えました。

日本の学校で作った整形くつをいくつかの会社に持ち込んで、ジェスチャーで「働かせてほしい」ということを伝えましたが、立て続けに断られました。想像ですが「うちはダメだけど商工会議所に行けば助けてもらえるのでは?」と言われた気がしました(笑)。日本にいたときにたまたま「商工会議所」という意味のドイツ語を聞いたことがあって覚えていたんです。

そして商工会議所の場所を調べて行ってみたのですが、これも想像なのですが「言葉のしゃべれない君には無理だ。帰れ」と言われました。でもなんでこの人に僕の人生を決められなきゃいけないんだろうと思って、居座ることにしました。すると面倒に思ったのか電話帳のような本を持ってきて、「a」から順に整形くつの会社に電話してくれたんです。3社くらいに話だけは聞いてもらえることになり、そのうち1社に受け入れてもらえることになりました。

そこまではトントン拍子で進んだのですが、職業訓練が適用されるビザへの切り替えに手こずり、それがドイツで一番大変な出来事でした。まずドイツ人やEU圏の人が優先されるのは当たり前かもしれませんが、他の国の人が働くためのビザ申請にはなかなか許可が降りませんでした。しかもビザの担当者が「明日からバカンスに行くから1カ月後に来い」と言うので、仕方なく1カ月後待ったんですが、結局もらえなくて……。たまたま現地で知り合った少し日本語がわかるドイツ人が助けてくれました。一緒に外人局に行って、既に会社と契約書を交わしてしまったことを説明してもらい、最終的には会社から一筆書いてもらうことでやっとビザを出してもらえることになりました。その間2カ月、何も進まなくてもどかしい思いをしました。


――最初は言葉も分からなくて大変だったのでしょうね。その後ドイツ語はどうやって覚えましたか?

働きながら覚えました。修行は職人の隣に座って見よう見まねで靴を作るところから始まるのですが、一つの工程を何度も繰り返して覚えるので、目の前にある物を指す言葉を何回も聞くことになり、単語はだんだんと覚えていきました。最初は声のトーンや表情で「今怒られているんだな」ということを感じ取っていました(笑)。

あとは工房内にあるお店のおばちゃんにかわいがってもらいました。「これ食べる?」と言ってドイツのお菓子をくれたり、バーっと一方的にしゃべって最後に「分かった?」と聞いてくるのですが、その単語だけは分かったので「分からない」と答えていたら面白がってくれて(笑)。毎日のようにそれを繰り返しているうちに、次第に耳が慣れて拾える単語が増えていきました。

また、分からないときは絵や字で書いてもらうこともありました。最初は電子辞書を持ち歩いていたのですが、相手の言っていることは理解できても単語を知らないからこちらから言葉を発せないんです。その都度辞書で調べていたら時間がかかって会話になりません。それよりもまず、恥ずかしいという気持ちを取っ払って何か言葉を発することが大事だと気づきました。それは最初は勇気のいることでした。でも何も言わなければ、こちらが理解しているかどうかかも相手は分かりません。何か返事できれば、その内容が合っていれば会話が続きますし、間違っていれば正してもらえますから。

ドイツではあらゆる仕事に訓練が必要

――ドイツでは仕事に就く際は訓練が必要になるそうですね

はい。ほとんどの仕事で就労のための訓練が必要となります。スーパーのレジ打ちの仕事にも訓練があります。小学校・中学校くらいで大学を進学する人と専門職を目指す人とに分かれます。家業を継ぐ人などは15歳くらいで弟子入りして訓練を始める人もいます。


――日本よりも早い段階で「働く」ということを意識するのでしょうか

早いですね。ほとんどの仕事に資格が必要となりますから。そのため途中で職業を変えようと思うと大変ですが、プロフェッショナルになりやすいシステムともいえます。訓練期間は職種によってさまざまです。仕事の質の基準値を下げないための制度でもあります。


――ドイツの印象深い思い出はありますか?

修行先の会社で僕を最初に面接してくれた部長が、ドイツ人ではなくロシア圏から両親と共にドイツに移住してきた移民の方でした。僕がある程度ドイツ語を理解できるようになってから教えてくれたのですが、その方もドイツに来たときは僕と同じように全く言葉が分からなかったそうです。「自分も同じ経験があったから、やりたいことがあって異国に来たお前を言葉が通じないという理由だけで追い返すことはできなかった」と言われました。行く先々で出会う人に恵まれたなと思います。

また、訓練を初めて1年後から一緒に仕事をすることになった職人さんとの出会いも大きかったです。それまでの人には僕に理解力がないと思われていたのかあまり教えてもらえなかったのですが、その人は言葉の壁を超えて手取り足取り教えてくれました。言っていることの全てはまだわからなかったのですが、その熱意が嬉しかったです。

ほとんどの人は自分の足のサイズに合っていない靴を履いている

――日本とドイツでは「足の健康」に対する考え方が違うのでしょうか

向こうでは靴のまま部屋に上がるので、一度履いたら脱ぐ機会があまりありません。日本では靴の脱ぎ履きが多いので、脱ぎ履きしやすい靴が楽な靴だと思っている方が多いと思います。もちろん脱ぎ履きのしやすさも重要なポイントですが、それ以上に靴を履いている時の快適さはより重要だと思います。ドイツでは自分の足に靴を合わせるという考え方が基本で、根本的な価値観が違います。靴は本来5mm単位でサイズがあるくらいですから、服よりもサイズ選びにはシビアになるはずですが、実際は日本では自分の本当の足のサイズを分かっていない人が多いと思います。ドイツでは子どもの頃からきちんと足のサイズを測り、しっかりとした靴を履かせていた親御さんが多かった印象があります。


――確かに足のサイズを正確に測ったことのある人は少ないかもしれませんね

サイズの合わない靴を履くことで足の痛みやトラブルの原因になってしまうこともあります。サイズの合った靴を履くだけでかなり楽になりますよ。また、紐靴の紐をゆるく結んだ状態のまま脱ぎ履きしている人も多いですが、それも足を痛める原因の一つだと考えています。面倒でも履く度に紐をきちんと締め直すことで歩きやすさはかなり改善されます。


――ドイツのほうが日本に比べて整形くつの技術が発達しているのはどうしてなのでしょうか

障がい者への意識の違いもあるのかなと思います。足が不自由になったり痛くて歩きづらくなると外に出かけるのが億劫になりがちだとは思いますが、向こうの人は松葉杖をついたり車椅子に乗ったりして積極的に外に出かけます。足が悪くても装具や整形くつを履くことで自分の足である程度は歩けるようになるので、それを利用してどんどん外へ出ていきます。障がい者の方以上に、周りの人たちもオープンです。足のことに限らず「健常者」「障がい者」というくくりが少ないと感じました。
日本では「恥ずかしい」という気持ちが本人にあるのかなとも思います。周りの人もそれを察して気を使わなきゃと思ってしまったり、関わりを避けたりする人もいて、それが恥ずかしいという気持ちにさせている原因なのかもしれません。


――日本では「整形くつ技術者」のニーズはどれくらいあるのでしょうか

義肢装具会社で整形くつを作っているところはありますが、まだまだ多くはないと思います。健康靴を売っているお店で、保険はきかないけれど足の問題を抱えている人のためにインソールや靴をオーダーで作っているところもあるようです。お医者さんと連携しているお店が信頼できると思います。

技術者の数は少ないですが必要としている人はたくさんいると思いますし、義肢装具会社にとって「自社で整形くつも手がけている」ということはステータスにもなります。患者さん側にまだまだ知られていないというのが現状なので、認知度を高めていかないといけないとも思います。


――今後チャレンジしたいことはありますか?

ずっと目標にしているのは地元で自分の店を開くことです。高校生の頃に思っていた「靴屋になりたい」という夢からは少し変わりましたが、足や靴の悩みを抱えている人をサポートすることができる店を開きたいなと思っています。



ドイツで発達した「整形くつ」の技術は日本ではまだ認知度が低いようですが、生活の質を高めるために大事な「足の健康」への注目はこれからの時代、ますます高まっていきそうですね。大関さんのように自分で道を切り開いて活躍の場を作っていこうとするフロンティア精神も求められるのかもしれませんね。


【profile】ergofoot!(株式会社御茶ノ水義肢装具) 大関悠人
https://www.ochasogu.com

この記事のテーマ
医療・歯科・看護・リハビリ」を解説

医師とともにチーム医療の一員として、高度な知識と技術をもって患者に医療技術を施すスペシャリストを育成します。医療の高度化に伴い、呼吸器、透析装置、放射線治療などの医療・検査機器の技師が現場で不可欠になってきました。専門的な技術や資格を要する職業のため、授業では基礎知識から医療現場での実践能力にいたるまで、段階的に学びます。

「医療・歯科・看護・リハビリ」について詳しく見る

この記事で取り上げた
「整形くつ技術者」
はこんな仕事です

足が不自由な人や変形などの悩みを抱える人のために、医学的観点から歩行補助・変形矯正のための靴をつくる仕事。シューズメーカーなどに勤務して業務にあたる。製作するのは、一人ひとりの状態に適合させたオーダーメイドの靴で、これらを「整形くつ」と呼ぶ。必須資格はないが、足の構造、疾患、歩行機能の仕組みといった人体に関わる専門知識・技術と、ファッションとしてのデザイン性に関わる専門知識・技術を兼ね備えている必要があり、医療福祉系の学校などで体系的に学ぶことが必要だろう。

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