【シゴトを知ろう】化学系研究・技術者 編
皆さんは「フォトエッチング」という技術を聞いたことはありますか? 例えばスマートフォンのカメラレンズを動かす「板バネ」という重要な部品があるのですが、そうした高精度が求められる極小・極薄部品を作るために、金属を化学的に腐食させて形状加工する技術だそうです。そのフォトエッチング技術で作り出したスマートフォン部品で世界トップシェアを獲っている株式会社協成の研究者・小沢一真さんにお話を伺いました。
この記事をまとめると
- 金属を化学的に腐食させて微細な加工を行うフォトエッチングは今注目の技術
- 化学の応用は基礎を組み合わせたものなので高校時代に学んだことが役に立つ
- コツコツと同じ実験作業を繰り返すことができる人に向いている
フォトエッチングの先端技術を開発
Q1. 仕事概要と一日のスケジュールを教えてください
株式会社協成というフォトエッチング技術を使って金属を加工するメーカーに勤めています。フォトエッチングとは、エッチング加工技術(金属などを化学的に腐食させて加工する技術)に、フォト(photo)、つまり精密な写真技術・精密画像技術をマッチさせた精密加工技術です。当社では主にスマートフォンや自動車などの部品を製造していますが、同じく高精度・高密度が求められる半導体分野や医療分野の製品作りも可能ですし、繊細な表現力を生かして看板やインテリア小物などを作ることもできます。
私は先端技術開発センターに所属しており、新しい形状の加工方法を開発したり、特殊金属材料のエッチングを研究しています。お客様から依頼を受けて開発することもあれば自主的に研究することもあります。
<一日のスケジュール>
8:20 出社
8:45 始業
午前中 メール確認、材料の準備、各工程作業
12:00 昼食
午後 エッチング加工、資料作成、メール確認
17:15 終業
18:00 退勤
Q2. どんなときに仕事の楽しさ・やりがいを感じますか?
今の部署では材料の準備からエッチング加工まで、一連の作業を日々コツコツと行っているのですが、立体形状のエッチングや特殊金属のエッチングなど、今までに取り組んだことのない難しいチャレンジに成功したときにはやりがいを感じますね。
Q3. 仕事の大変さを感じるのはどんなところですか?
先端技術開発の部署なので、これまで誰もやっていないようなことに取り組む日々です。当然スムーズに進まないことも多く、試行錯誤しなければいけないのが大変です。また、極秘情報を扱う部署なので少数精鋭のチームで取り組んでいるのですが、他の部署の社員となかなか交流できないのも少しつらいですね(笑)。
フォトエッチング技術に将来性を感じて転職
Q4. どのようなきっかけでこのお仕事に就きましたか?
新卒で入った会社ではプラントエンジニアとして、薬品を扱う工場などから出る有害な排ガスの処理をする装置を作っていました。今の会社に転職したとき、前職で作っていた装置が工場で使われているのを見たときは驚きましたね(笑)。フォトエッチングの技術は以前から知っていたのですが、転職活動の際にあらためて深く知り、微細な形状を作り出す精密加工技術に魅力を感じ、さらにそれがスマートフォンや自動車などの部品にも使われていると知って将来性を感じました。
Q5. 大学ではどのようなことを学びましたか?
工学部で環境化学工学について学びました。化学工学というのは簡単に言えば物理と化学の両方を学ぶ学問です。主に工場などのガスの配管ルートや排気ルートを設計するプラントエンジニアに必要な知識を学びました。
Q6. 高校生のとき抱いていた夢や経験したことが、現在のお仕事につながっていると感じることはありますか?
高校時代の夢は警察の鑑識の仕事でした。今は全く違う仕事ですが、薬品を扱うという点では少しつながっているでしょうか……。当時から漠然と理系の道に進みたいとは考えていましたが、大学は推薦で決まったところに進学したので、そこまで深く将来について考えていたわけではありませんでした。でも高校生のときに勉強した化学や物理の基本は今の仕事に生きています。特に化学の応用は基礎を組み合わせたものなので、高校で学んだ基礎知識がとても役に立っています。
発想力は磨くことができる
Q7. どういう人がこの仕事に向いていると思いますか?
ものづくりに興味があり、コツコツとめげずに同じ作業を繰り返して行うことができる人でしょうか。化学とはいえものづくりの一環にある仕事なので、最終的に出来上がるプロダクトを念頭に置いた上で自分の役割や作業の意味を考えなければいけません。
発想力も大切です。私の仕事で言えば、どういう薬品を使えば新しい加工技術を生み出せるだろうかという発想が求められます。筋の良い発想をする力は、高校や大学で基礎をしっかり勉強することで磨かれます。今でも「そういえばあのとき先生がこういうことを言っていたな」と思い出して発想が広がっていくことがあります。ある程度見当をつけたら、あとは繰り返しいろいろな条件を試していく作業なので、すぐに放り出してしまう人では厳しいと思います。
Q8. 高校生に向けたメッセージをお願いします
高校時代は勉強したことが将来どう役に立つか分からないものだと思いますが、学んだことは決して無駄にはなりません。大学でも社会に出てからも役に立ちます。面倒に思うこともあるとは思いますが、日々勉学に励んでください。また友達を作ってコミュニケーションをすることも、社会に出るとそうした力がとても大切になるので大事にしてほしいなと思います。
技術の進歩や社会の変化によって化学系研究・技術者の活躍する領域も広がっているようです。どの領域で活躍するにも研究の仕事に求められるのは、やはり小沢さんが言うように根気よく続ける力と豊かな発想力でしょうか。そうした力を生かして企業で働きたい人は注目したいお仕事ですね。
【profile】株式会社協成 先端技術開発センター 小沢一真
http://www.kyoseiltd.co.jp
この記事のテーマ
「機械・電気・化学」を解説
製品を効率よく大量に生産する機械の製造・操作・保守に関わったり、電気、石油やガスなどのエネルギーを安定かつ安全に供給する設備を運営・管理したりするための知識や技術を身につけます。機械や電気、化学物質を取り扱う資格取得を目指すカリキュラムが中心。危険物を扱うことも多いため、仕事への注意力や慎重さも身につける必要があります。
この記事で取り上げた
「化学系研究・技術者」
はこんな仕事です
合成繊維やケミカル、洗剤、医薬品、化粧品、プラスチック製品など、生活密着度の高いこれらの製品は化学製品と呼ばれる。さまざまな化学製品を研究・開発し、製造するのが化学系研究・技術者の仕事になる。品質管理や保証も仕事の一部であり、調査も行わなければならない。チームとして業務を進めるため、チームワークによってプロジェクトをやり遂げたときの達成感は大きい。これまで医薬品メーカーや化粧品会社などが主な職場だったが、現在は多種多様な企業がこの分野に参入しているのも特徴的だ。
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