【シゴトを知ろう】タイル職人 〜番外編〜
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タイルの制作から施工までを手掛ける、タイル職人の白石普(しらいし・あまね)さん。私たちがさまざまな場所で目にするタイルを形にする現場のことを「【シゴトを知ろう】タイル職人 編」でお話いただきました。今回の番外編では、タイルについてのさらに深い話や業界用語、白石さんの今後の目標・夢に関して伺いました!
この記事をまとめると
- タイルは耐候性や耐水性に優れ、装飾もできる万能の建材
- いかに空間を美しく見せるかがタイル職人としての腕の見せ所
- 優れたタイル職人は、職人である前に人間性に優れ慕われる人
タイルを自在に加工する技術に加えて、経験と感性も重要
――タイルは私たちにとって馴染み深いものですが、タイルとは何かと聞かれると答えに迷う人も多いと思います。白石さんがお仕事で扱われるタイルは、どのような素材なのでしょうか。
タイルは主に陶磁器製で耐候性や耐水性に優れ、建物を守る役割がありつつ装飾もできる万能の建材です。鉄やコンクリートよりも固く、タイル職人はそのタイルを切ったり、穴をあけたりと自在に加工する技術が必要です。また、世界各国にはいろいろなタイルがあり、小さいものは5ミリ、大きいものは3メートルもあり、それらのタイルを現場に合わせて割り付けて、剥がれないように張ることはもちろん、いかに空間を美しく見せるかもタイル職人の腕の見せどころで、経験と感性が重要なのです。
――手先の器用さだけではない、感性も大切なお仕事なのですね。タイル職人としてお仕事をされている中で、印象に残っていること・お仕事の魅力を特に感じたエピソードをお聞かせいただけますか?
ウマ、ネコ、トンボ、モンキー、カラスなど、工事現場には動物の名前の道具がいっぱいあります。「おい、ネコ持ってこい!」と新人に言ったらどこかに行ってしまい、しばらくして本当に猫を捕まえてきたという話を聞いたことがあります。「ネコ」とは砂などを運ぶために使う一輪車のことですが、職人から職人へ、技術と一緒に言葉も伝承しています。怒鳴られても笑って吹き飛ばす工事現場の雰囲気は良いものです。今の時代、パソコンに向かう仕事が多いですが、体を使ってモノをつくることで人間らしく生きることのできる職人仕事は魅力的な職場といえるでしょう。
――他にも、タイル職人ならではの業界用語や常識はありますか?
平面を揃えることを「ゾロ」といい、「ゾロで仕上げる?」というように使います。また、壁など仕上げ面に隙間をあけずにぶつけて施工することを「ドン」といい、「壁ドンで」と言ったりします。
また、タイルのカットは、地球上でタイルよりも固い唯一の素材であるダイヤモンドを使って行っていると聞くと驚かれるかもしれませんね。
休日もアイデア探し・代表を務める「タイルびとの会」ではイベント開催も
――お仕事の息抜きには、どんなことをされていますか?
美術館によく行きます。また歴史的に価値のある建造物を観るのも好きです。休日の息抜きとしてではありますが、その中にも新しいアイデアを求めています。映画を観る時も、ストーリーよりも背景のタイルデザインを探してしまいます。もう少し年老いたら、ゆっくり休もうと思います。
――同じタイル業界の方と会って話をされたりすることはあるのでしょうか?
タイルを作るタイルメーカーとタイルを施工するタイル職人の間には、今まで一切交流がありませんでした。私がタイル職人でありながらタイルを作り始めたことでメーカーの方々からも興味を持たれ、現在「タイルびとの会」という会を作り、イベントを開催したりしています。
――業界内には、どんな性格の方が多いですか?
細かい、理屈っぽい、負けず嫌いの人が大多数ですね。自分もそうです。「負けず嫌いだ」ということでも負けたくないです(笑)。
一つの仕事が完結した瞬間・お客様のうれしそうな顔を見た瞬間、すべての苦労が癒される
――白石さんが考える、優れたタイル職人とはどういう人でしょうか?
職人である前に人間性に優れ、人に慕われる人。仕事が終わらないかもしれないと思ったときに自然と仲間が集まり、助け合って終わらせることがあります。職人から慕われる職人は優れた職人といえるでしょう。
――白石さんが今のお仕事に就いてよかったと感じる瞬間は、どんな時でしょう?
タイルを張り終わった瞬間……つまり一つの仕事が完結した瞬間と、その完結した作品をお客さまが見て、うれしそうな顔を見せてくれる瞬間です。その達成感、充実感、喜びはすべての苦労を癒してくれます。
――今後の目標、お仕事における夢は何でしょうか?
目標や夢はどんどん変わり大きくなるので特に設定していませんが、海外進出はしたいです。もともとタイルは海外発祥ですし、歴史も文化も違います。日本にはタイルの歴史も文化も無いに等しいので、メイドインジャパンで全世界に発信できるタイルを作りたいです。
タイル職人でありながら自らタイルを作り、現在ではタイルに携わる人たちをつなげる会も主宰される白石さん。知れば知るほど奥が深いタイルの世界に興味を持った人は、白石さんのWebサイトを訪れてみてはいかがでしょうか。白石さんが手掛けた美しいタイル作品の写真とともに、タイルの魅力をさらに知ることが出来ますよ。
【profile】タイル職人・陶芸家 白石普
http://euclid-inc.jp/
「タイルびとの会」http://tilevito.jp
この記事のテーマ
「デザイン・芸術・写真」を解説
デザインは、本や雑誌、広告など印刷物のデザイン、雑貨、玩具、パッケージなどの商品デザイン、伝統工芸や日用品などの装飾デザインといった分野があり、学校では専門知識や道具、機器を使いこなす技術を学びます。アートや写真を仕事にする場合、学校で基礎的な知識や技術を身につけ、学外での実践を通して経験やセンスを磨きます。
この記事で取り上げた
「タイル職人」
はこんな仕事です
ビルや家屋の外壁や床、トイレやバスルームなどにタイルを貼って、美しく装飾したり耐久性を高めたりする仕事。タイル貼りは、1枚がほんの少しずれただけで、徐々にずれが大きくなって全体のバランスが崩れてしまう。したがって緻密な計算を行って手作業で作業を進める。正確に貼るためには集中力に加え、美的センスも求められる。「タイル張り技能士」は国家資格になっているほど奥深い職人の世界でもある。タイル工事を扱う会社、熟練の職人のもとで修業をするのが一般的だが、職業訓練学校のタイル施工科などのコースで学ぶ人もいる。