【シゴトを知ろう】装丁家(ブックデザイナー) ~番外編~

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【シゴトを知ろう】装丁家(ブックデザイナー) ~番外編~

2017.05.09

提供元:マイナビ進学編集部

【シゴトを知ろう】装丁家(ブックデザイナー) ~番外編~

どんなに素晴らしい本を出しても気づいてもらえなければ意味がありません。たくさんの本がある中で目に留めてもらい、さらに手に取って開いてもらうために、装丁家(ブックデザイナー)は自らの知識の蓄積と編集力を生かして、その本の魅力が伝わるデザインを考えます。ですが装丁家の佐藤亜沙美さんは「デザインし過ぎないことも大切」と言います。それはどういうことなのでしょうか?

この記事をまとめると

  • 本の設計書である「造本プラン」がその後のデザインの指針に
  • 制限がある中で工夫したほうがシャープなものが出来上がる
  • 本は読者が想像して拡張していける余地の多いメディア

常に心を開いて明るい気持ちで作品に向き合いたい

――装丁家には「売れるデザイン」を意識することが求められるのでしょうか

もちろん、買っていただくことが大きな目的ですから意識します。でもそのために媚びたり、思ってもいないうそをついても見抜かれますから、自分自身がその作品に感じた魅力をデザインに反映するようにしています。

『Aさんの場合。』(祥伝社)

『Aさんの場合。』(祥伝社)

――本編でおっしゃっていた「読者の気持ち」も反映されるのでしょうか

やはり読者の目線に寄り添いたいので、私が読者として初見で抱いた感想をベースに、すてきなところはより強く、デザインでもう少し強く押し出さないと伝わらないかなという部分は、うそでない形で強めたりもします。

最近担当した作品で『Aさんの場合。』という、同じ職場で働く未婚のAさんと子育て中のBさんが、それぞれの視点で見た日常を描いたコミックがあります。Aさんは子どものお迎えで早く帰るBさんに不満を抱き、Bさんは自分だってもっと働きたいのにというジレンマを抱えています。『Aさんの場合。』というタイトルから考えれば、卑屈になっているAさんのコマを取り上げて「なんで私ばっかり」というコピーにすれば一定の共感を呼ぶのかもしれません。でもこの作品にとって大切なことは、人には多様な立場があり、それぞれの立場から見たら同じシーンにもあらゆる側面があるということだと思ったので、裏表紙に同じ大きさで「Bさんの場合。」のカバーをデザインしました。ちなみにカバーをめくったソデという部分には「あの子の場合。」という特別編も掲載しました。

作品が一番大切にしていることは何だろうかと考えて、まだ表に出ていない部分をビジュアル化することが私のお仕事だと思っています。そのためにも作品に対して常に心を開いて明るく向き合うことを大切にしています。

『梅ヶ谷ゴミ屋敷の憂鬱』(ポプラ社)

『梅ヶ谷ゴミ屋敷の憂鬱』(ポプラ社)

――装丁の仕事は誰から依頼があり、どのように進んでいくのでしょうか

主に出版社の編集者からご依頼をいただきます。今も仕事の進め方は試行錯誤していますが、私は最初の打ち合わせを編集者のご意向と私の感想のすり合わせの場にもしたい気持ちがあるので、事前に原稿ゲラ(ゲラ刷り=試し刷り)の送付をお願いすることも多いです。やはり編集者の方がその作品について考えている量が多いので、できるだけ自分も同じ目線で話せるようしておきたいと思っています。

本の大きさ・ページ数・紙の種類・デザインの方向性などが固まったらそれをまとめた「造本プラン」という本の設計書のようなものを作ります。そこに編集者との食い違いがなければ、イラストレーターさんや印刷所などに依頼・発注をします。この造本プラン作りが最も大切な工程かもしれません。そこに書かれた方針に沿って本が出来上がっていくのですが、方針がないとデザインの背骨がブレますし、デザインの方向が揺れやすくなります。印刷・加工のなかでいろいろな課題が出てきたときに、いつでも立ち戻れるポイントを共有するものでもあります。

その後「束見本」(つかみほん/実際と同じ用紙・厚みで製本された見本)ができあがり、色校という印刷や加工を見るための校正紙を確認します。校正紙を束見本に巻いて、書店へ行き店員さんにお願いして並べさせていただくことも多いです。そこで読者の気持ちになってデザインを客観視します。問題がなければ印刷に進みます。時には印刷に立ち会うこともあります。印刷や製本の現場でもたくさんの方が関わるのですが、現場の方の美意識には毎回驚きます。そうして最後の工程を経て見本が届きます。本が実際に書店に並んだら、当初思っていた“違和感”を持たせられているか、それが効果的に発揮されているか、検証しに行きます。 

『「ポール・デルヴォー版画展」図録』(第17回共同巡回展実行委員会)

『「ポール・デルヴォー版画展」図録』(第17回共同巡回展実行委員会)

――長い道のりなのですね。一冊の本の装丁にはどれくらいの期間がかかるのでしょうか?

案件によります。1カ月ほどの短いスパンで終わるものもあれば、1年以上かかることもあります。例えば美術展の図録などは国や市の案件であることも多く、その分関わる人も多いので時間がかかることもあります。


――装丁家にはどんな知識や経験が必要とされるのでしょうか

何を強みにしたいかは人それぞれなので、何が必要かということも一概にいえないのですが、私が以前在籍していたコズフィッシュという事務所では、あらゆる印刷・加工を経験させていただいたので、私の場合はそこで得られた知識や経験が何にも替えられない貴重な財産となりました。その経験を生かして印刷・加工も含めた“物質感”を大切にしてデザインしています。
今は所有しなくてもシェアで済ませられる時代。大量生産された安価な物の魅力は低下しています。読者に特別な気持ちで手元に置いておきたいと思ってもらえる“物質感”があるものを作りたいとは思っていますが、なかなか簡単にはいきません。印刷所の方とのつながりも大切ですし、紙やインクの特性や価格帯、加工に対する知識、日進月歩で進化する技術面も日々勉強させていただいています。でもやはり、現場の方の声を聞くのが一番の蓄えになります。インターネットに載っていない生の声はいつでも貴重です。それを裏付けに本の魅力を肉付けすることはとても楽しいものです。手法ばかりが目立つのではなく、その作品に合った印刷・加工を考えることが大切だと思っています。

デザインし過ぎないことも大切

『PR視点のインバウンド戦略』(宣伝会議)

『PR視点のインバウンド戦略』(宣伝会議)

――本の表紙やカバー以外の部分をデザインをすることもあるのでしょうか

それもデザイナーによって異なると思うのですが、私は本文のノンブル(ページ番号)や柱(版面の外に記される書名や章名など)などの設計も行います。デザインを始めるときは一番小さな要素であるノンブルから決めています。いろいろなノンブルの書体の候補を眺めてピンと来たものをピックアップする作業から始めるのですが、そうするとなぜ自分がその書体を選んだのか、まだ顕在化していない心の声が聞こえてくるんです。それを選んだ理由を明確にしていくことで直感が形になります。それを拡張していくようにその後のデザインを進める方法が一番やりやすいですし、密度の高いものが積み上がっていくようにも思えるんです。


――小さなところから作り始めて広げていくんですね。それにしてもデザインというのは終わりのない作業のように思えますが、どこかで区切りをつけるようにしているのでしょうか

締切があるので、終わります(笑)。複雑な設計の話をしておいてなんですが、私はデザインし過ぎないことも大切だと思っています。隙間なくガッチリ固めきったデザインにしてしまうと、見る人が入る隙がなくなってしまうように思うんです。あくまでイメージなのですが、息を吐き終わるまでやるのではなく、息を吸ったところでパッとデザインに落とし込むような感覚です。あえて完結せずに終わらせたほうが、見た人が「何だろう?」と思う隙間を残せるように感じています。レイアウトのことを言うと、先ほどの『Aさんの場合。』の表紙では帯のコピーをあえて途中で区切って、表紙をめくらないとわからないという隙間を残しています。超完璧人間よりも少し隙がある人の方がコミュニケーションをとりやすいというイメージでしょうか。

――予算や期間が決まっている中でベストを追求する大変さもあるのでしょうか

無駄にお金を使わないことは大切です。一枚の紙を最大限に利用できる設計にしたり、4色刷りではなく蛍光色の2色刷りにすることで同じ金額でも目を引く仕様にしたり……そうしたやりくりは日常的に行っています。「いくらでもお金を使っていいよ」という案件がうまく行くわけではありませんし、定められた運命を大事にしたいですね。むしろ制限のある中で工夫したほうが必然的なものができるようにも思います。


――佐藤さんは「本」の魅力はどういうものだと感じていますか?

画像も音声も動画も全て載っているスマホと違って、本は自分の想像力で補わないといけないメディアです。逆に言えば自分でどんどん拡張していけるメディアでもあります。本を読み、それを自分の中に取り込むことは体力が要ることですが、とてもクリエイティブな作業でもあります。私自身、悩みを抱えていた高校生の頃も、そして今でも、つらいときこそ本が救いになっています。
みなさんもぜひ書店へ行き、本に触れてみてください。



作品に対して常にフラットな気持ちで向き合うには心身の健康も大切。体の具合が悪いと作品のネガティブな部分に引きずられてしまうこともあるそうで、佐藤さんは走ったりすることで、健康維持にも努めているそうです。今後は展覧会のアートディレクションなど規模の大きな仕事にも意欲があるそうで、佐藤さんの手がけた仕事をいろいろな場所で目にする機会も増えて行くかもしれませんね。


【profile】装丁家 佐藤亜沙美
http://www.satosankai.jp/

この記事のテーマ
マスコミ・芸能・アニメ・声優・漫画」を解説

若い感性やアイデアが常に求められる世界です。番組や作品の企画や脚本づくり、照明や音響などの技術スタッフ、宣伝企画など、職種に応じた専門知識や技術を学び、実習を通して企画力や表現力を磨きます。声優やタレントは在学しながらオーディションを受けるなど、仕事のチャンスを得る努力が必要。学校にはその情報が集められています。

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この記事で取り上げた
「装丁家(ブックデザイナー)」
はこんな仕事です

本の表紙やカバーなどのデザインを具体化していくのがブックデザイナーの仕事。編集者や著者から依頼され、企画意図に合うようイメージをふくらませる。コスト、技術、時間などの制約のなか、試作を繰り返してベストに近い作品づくりをめざす。本の内容に合わせて、文字の書体や組み方、大きさを考え、写真、絵、イラスト、デザインを決めていく。ブックカバーは、実際に読者が手に触れるものなので、紙の材質や風合いにもこだわることが重要。視覚的、触覚的に訴求し、書店で売れるデザインにすることが要求される。

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