【シゴトを知ろう】装丁家(ブックデザイナー) 編

  • ようこそ、ゲストさん
  • ログイン
  • メンバー登録(無料)
  • エリア設定
  • 保護者・先生の方へ
MENU
閉じる
  • ようこそ、ゲスト さん

    メンバー登録(無料)

  • 適学・適職診断無料!

    診断を受ける

  • エリア設定

現在4校がカートに入っています。

一度に最大30校までまとめて資料請求することができます。

閉じる

「マイナビ進学」サイトが別タブでが開きます。

【シゴトを知ろう】装丁家(ブックデザイナー) 編

2017.05.09

提供元:マイナビ進学編集部

【シゴトを知ろう】装丁家(ブックデザイナー) 編

本のカバーをデザインする装丁家(ブックデザイナー)。予算や期間などの制限がある中でベストを追求し、人の目に留まらせ、触れて何かを感じるような「売れるデザイン」にするための工夫が求められます。憧れの装丁家の下に通い続けて弟子入りし、今は独立して注目の若手装丁家として活躍する佐藤亜沙美さんにお話を伺いました。

この記事をまとめると

  • 人は何かを目にして3秒以内に好きかどうかを判断している
  • どう“違和感”を持たせるかが装丁家の腕の見せ所
  • どうしたらその職に就けるか考える暇があれば“現場”に行くこと!

一瞬のうちに目に留まるデザインを

『Aさんの場合。』(祥伝社)

『Aさんの場合。』(祥伝社)

Q1. 仕事概要と一日のスケジュールを教えてください

造本といって本全体の設計・制作をしています。私の仕事は編集者から本の原稿をいただいてデザインのご提案をするところから始まります。そしてデザインができあがり本が書店に並べられたら、実際に見に行って自分が思っていた効果が発揮できているか検証をします。
毎月膨大な量の本が刊行され並ぶ中で、どこか“異質なもの”と感じてもらえるものにしたいということは常に思っています。人が何かを目にして好きかどうか判断するまで3秒もないと言われることがあります。忙しいみなさんが書店の棚の前を通り過ぎる一瞬の間に目に留まるよう違和感を持たせるには、どんな表現が効果的であるかを毎日考えています。
基本的には主役である作品が輝くようにデザインを設計するのですが、その落とし込み方は本の内容によって異なります。古風なテーマの本ならクラシカルな装丁にするのが定番のやり方ですが、その定番を踏まえた上で、定番が良いのか、そこから外していくのが良いのか考えることもポイントです。外すというのは、違和感となるもう一つのフックを作るということです。それを見極めるのも装丁家の仕事の大事な部分だと思っています。新鮮に見えても外しすぎてしまうと読者に伝わりづらくなるので、その微妙なラインの検討は何度も重ねますが、いつも一冊に一つは自分のなかで新しいことを取り入れるようにしています。自分がワクワクしないものは、読者にも伝わらないという確信があります。

一日のスケジュールですが、大体朝10時から深夜0時頃まで設計書作成・デザイン・打ち合わせなどを行っています。印刷に立ち会う日は、早朝から印刷所へ行くこともあります。そこから半日〜一日かけて印刷・試作確認を行います。常に10〜20冊程度の仕事を並行して進めているため、その進度によってその日のスケジュールはさまざまですね。

『世界の恐竜MAP 脅威の古生物をさがせ!』(株式会社エクスナレッジ)

『世界の恐竜MAP 脅威の古生物をさがせ!』(株式会社エクスナレッジ)

Q2. どんなときに仕事の楽しさ・やりがいを感じますか?

本を買っていただいた方からの反響を見たり聞いたりして、「届いた!」と思えたときはうれしいですね。また、本のデザインを考えるときは読者層となる具体的な人物像を頭に描くことが多いのですが、たまに想定していた読者層とは全然違う人に届くことがあります。それがすごく面白くてうれしい瞬間です。

『圏外編集者』(朝日出版社)

『圏外編集者』(朝日出版社)

Q3. 仕事の大変さを感じるのはどんなところですか?

とにかくやることが多い仕事です。紙の選定や束幅(書籍の背幅)・重量・印刷にかける費用・印刷の加工内容・発行部数・本の価格とのバランスの見極めなど。一つの本のカバーができあがるまでにさまざまな検討項目があり、それぞれに判断が求められます。作業は部分的に外注することもありますが、細部まで自分で手を入れることも多いので、1日12〜14時間くらい働くことも普通にあります。
「もう十分か」と思う瞬間もありますが、わずかなインクのノリの違いや加工の善しあしを見逃すと、人の目や肌の感覚というのは敏感なので、その妥協が見抜かれてしまうんです。だから「もうひと粘り」と思って取り組むのですが、それがキツイところです。体力勝負でもありますし、眠れない・休めない・風邪を引けない……という精神的なプレッシャーもあります。

“すてきな勘違い”を抱かせてくれたのが本だった

『ババァ、ノックしろよ!』(リトルモア)

『ババァ、ノックしろよ!』(リトルモア)

Q4. どのようなきっかけでこのお仕事に就きましたか?

高校卒業後に福島から上京してデザインの専門学校に入ったのですが、ピンとこなくて1年で辞めてしまいました。辞めた翌日には印刷会社に作品を持ち込み、「今日から働かせてください!」とお願いして入社させてもらいました(笑)。印刷の現場ではデータ不備によるトラブルが頻発していて、現場の人の声を聞くことの大切さを学びました。現場の人に教わったデータの作り方は今に生きています。その後、住宅や旅行のパンフレット制作をする会社に転職したのですが、広告宣伝物を作る仕事は自分には向いていなくて……。何か手触りのある仕事がしたいと思ったときに、本をたくさん読んでいた中でたまたま手にとった梶井基次郎の『檸檬(れもん)』の作中に、書店に“異物”として檸檬を置くシーンがあるのですが、その描写になんだか妙にピンと来て「そうだ! 本だ!」と思い立ったんです。

その後出版社の社内デザイナーとして2年働き、もっと成長したいと思ったときに装丁家である祖父江慎(そぶえ しん)さんのブックデザインに出合いました。祖父江さんは本というメディアの特性を最大限に生かし、あらゆる加工を駆使してその本の本質を表現していました。その面白さにあらためて惹かれ、祖父江さんの講演会がある度に足を運ぶようになりました。あるとき偶然書店で祖父江さんに遭遇したときに「チャンスだ!」と思って名刺をお渡しし、お手伝いを経て入社させていただきました。8年ほど在籍して多くのことを教わり、独立して今に至ります。


Q5.この仕事に就いてからどのようなことを学びましたか?

現場志向だったので学校はすぐに辞めてしまいましたが、働き始めてから足りない知識を補いたくて学ぶようになりました。大学のメディア論の授業を聴講したこともあります。大学や本から物事のルーツや本質について学んだことは、デザインを考える際に役に立っています。例えば今お仕事としてご依頼いただく作品やカルチャーにも必ずルーツとなる流れがあると思うのですが、それを知らずに今見えているものだけを捉えてしまうと、表層的な表現になってしまうと考えています。過去をさかのぼれば必ず源流があり、今起こっている理由があります。祖父江さんにもそうした話はたくさん聞かせてもらいました。とくに80年代からの文化について当時のお話を聞けたことは今でも貴重な財産になっています。


Q6. 高校生のとき抱いていた夢や経験したことが、現在のお仕事につながっていると感じることはありますか?

高校生の頃は東京に憧れていました。地元では手に入らない雑誌などを東京から送ってくれる友人がいたのですが、スマホのない時代でしたからそれが貴重な情報源で、一言一句、食い入るように見ていました。何もない環境でしたが当時吸収した情報が今、自分の血肉となっていることを感じています。
高校生の頃は家庭環境の悩みなどもあり、強い孤独を感じていました。絶望的な状況の中で本は私にとって一筋の光でした。それほど読書家だったわけではないのですが、本を読めば何者でもない自分が、想像することで違う世界に飛んで行けました。「ここに行けるといいな」という希望、すてきな勘違いとも言うのでしょうか。それを抱かせてくれたのが本でした。今も本のデザインをするときは「あのときの自分に届け!」と思っています。

批判精神を持つこともデザインには大切

雑誌『装苑』(文化出版局)

雑誌『装苑』(文化出版局)

Q7. どういう人がこの仕事に向いていると思いますか?

自分が向いているのかもいまだに分からないので、どういう人が……とはいえないのですが、私が大切にしている感覚は二つあります。「すごく面白い本だから見て見て!」という気持ちと、「ここは最高だけど、ここは共感できないかな」という気持ちです。本当に大好きで仕方がないものとの向き合い方が一番難しくて大変です。作品を大切にするあまり、どこか思い切れなかったり、思いが強すぎて初見の読者へ届かない表現になってしまったりします。お引き受けさせていただく作品は大尊敬しているものがほとんどなので、いつもその距離の取り方が悩ましいです。
「大好きだけど……この部分は押し出さないと伝わらないかも?」というような、この仕事に就く前に持っていた普通の読者としての冷静な感覚を私は今も大事にしています。どんなに世の中に認められた素晴らしい作品であっても「つっこみ」を入れる精神を持ち続けられる人。少し突き放してその作品を見ることができる人が良いのかなと思います。


Q8. 高校生に向けたメッセージをお願いします

私は小学校も早退しがちで、中学校も不登校の時期があり、高校は行った記憶が曖昧なほどで、専門学校も1年でプイッと辞めてしまうような落ちこぼれの学生でしたが、自分の好きなものを臭覚だけでたどって、続けることで何とかやってこられました。

悩んだらとにかく動いてみると良いと思います。「どうしたら装丁家になれますか?」と若い方に聞かれることもあるのですが、道は一つではないので、まずは自分がすてきだなと思うブックデザインの現場に行ってみるといいと思います。やってみないと自分に合うか合わないかは分かりませんし、入れたところで食べていけるかも分かりません。体力の要る仕事ですから続けられるかも分かりません。だからまずは「行動してみる」こと。
面白そうと思われることも多い仕事ですが、外側から良く見えるものほど、同じくらいそうでない部分があるものだと思います。苦労も伴うことを理解しないと続けることはできません。それでも興味を持ったなら、まずは飛び込んでみてください。そうすれば自分の声が聞こえると思います。



佐藤さんは転職を重ねていた頃は、2年間と期限を決めて目標を設定し、貪欲にいろいろなことを吸収したそうです。決まりにとらわれず、自らチャンスを作って道を開いてきた佐藤さんの生き方に刺激を受けた人も多いのではないでしょうか。


【profile】装丁家 佐藤亜沙美
http://www.satosankai.jp/

この記事のテーマ
マスコミ・芸能・アニメ・声優・漫画」を解説

若い感性やアイデアが常に求められる世界です。番組や作品の企画や脚本づくり、照明や音響などの技術スタッフ、宣伝企画など、職種に応じた専門知識や技術を学び、実習を通して企画力や表現力を磨きます。声優やタレントは在学しながらオーディションを受けるなど、仕事のチャンスを得る努力が必要。学校にはその情報が集められています。

「マスコミ・芸能・アニメ・声優・漫画」について詳しく見る

この記事で取り上げた
「装丁家(ブックデザイナー)」
はこんな仕事です

本の表紙やカバーなどのデザインを具体化していくのがブックデザイナーの仕事。編集者や著者から依頼され、企画意図に合うようイメージをふくらませる。コスト、技術、時間などの制約のなか、試作を繰り返してベストに近い作品づくりをめざす。本の内容に合わせて、文字の書体や組み方、大きさを考え、写真、絵、イラスト、デザインを決めていく。ブックカバーは、実際に読者が手に触れるものなので、紙の材質や風合いにもこだわることが重要。視覚的、触覚的に訴求し、書店で売れるデザインにすることが要求される。

「装丁家(ブックデザイナー)」について詳しく見る