【シゴトを知ろう】スポーツ用品メーカーで働く人 編
メイン
テーマ

スポーツが好きな人や体育会系の部活に所属している人にとって、スポーツ用品は身近なものですね。スポーツ用品専門店などで、自分に合うものを探した経験のある人も多いのではないでしょうか。今回お話を伺ったのは、「ヨネックス株式会社」でテニスラケットの開発に携わる平賀徹さん。なかなか知ることのできないラケット開発の過程、大きなやりがいなど、スポーツ用品メーカーでのお仕事についていろいろとお話をお聞きしました。
この記事をまとめると
- ラケット開発は、デザイン・性能の両面から。自ら試打することも
- 自分が手掛けたラケットを実際に使う人を見たときはやりがいを感じる
- 一番大事なのは、スポーツが好きで「良いものをつくりたい」気持ち
コートで自分の手がけたラケットを見かけた時のうれしさ、トップ選手が成果を出した時の安心感
Q1.お仕事の概要と一日のスケジュールを教えてください。
大まかにいうと、“テニスラケットの開発”です。
まずは「どういったお客さまにどのようなラケットを提案しようか」というコンセプト・企画を考えます。その後は自社工場の開発部や弊社のマーケティング部門とも協力し、作るモデルを具体的に決めていきます。例えば性能面ですと、スピンがよくかかるものを作るにはどういった性能を重視すればいいのか、といった具合ですね。デザインについても、今流行っているカラーリングやグラフィックをチェックしながら色を決めていきます。
そしてラケット完成後、お客様に商品説明をする営業部に対して、それぞれのラケットの商品特徴などを説明するまでが僕の仕事です。週に2~3回、開発中のラケットを実際のテニスコートで試打するのも大事な業務の一つです。
<一日のスケジュール>(開発中ラケット試打を行う日の場合)
8:50 出社
9:00 メールチェック
午前中 デザインのカラーリング考案、サンプルチェックなど
12:00 休憩、昼食
午後 テニスコートで開発中ラケットの試打
試打終了後帰社・工場に結果報告
Q2. お仕事をされる中で、やりがいや楽しさを感じるのはどんなときですか?
いろいろな制約や苦労もある中で、ようやく形になったラケットを手にしたときはやりがいを感じますね。それが実際にお客様の手に渡り、コートで実際に使われている姿を見たときも同様です。ラケット試打の際、コートで周りを見渡したときに自分の手掛けたラケットを使ってくれている方が結構いらして、そういうときはすごくうれしいです。
また、世界で活躍するトップ選手たちが自分の開発したラケットで優勝したり、良い成果を出してくれたりするのもやりがいにつながりますし、うれしいと同時に安心感も得られます。僕たちが頑張ってつくったものは、間違いじゃなかったんだなと思えますね。
Q3. お仕事の中で大変さや苦労を感じるのはどんなときでしょうか?
ラケットのデザインを決める過程で感じることが多いです。自分が良いと思うデザインと、自分より若い学生や女性の方が気に入るデザインは異なることも多いので、そこのギャップを埋めるのが難しいですね。ある程度ターゲット層は絞って開発していますが、その中でもできるだけ多くの方に受け入れられるデザインが求められます。自分だけが良いと思うものを押し出すのではなく、周りの方の意見もいろいろ取り入れながら修正していくので、自分が個人的に好きなデザインのものはなかなか商品化できなかったりします(笑)。
大学で学んだことと高校時代から続けたテニス、両方を活かせる仕事に
Q4. スポーツ用品メーカーでのお仕事を志すようになったきっかけを教えてください。
僕は美術大学出身なのですが、平面での表現よりも立体でのものづくりがしたいと思い、製品デザインを主とする“プロダクトデザイン”を学んでいました。それと同時に、高校で打ち込んでいたテニスをそのまま大学の部活でも続けていたので、就職活動の際、その二つを両立させられるような道はないかと考えるようになりました。その結果見つけたのが「ヨネックス株式会社」で、無事に採用してもらい今に至ります。
Q5. 大学ではどのようなことを学びましたか?
年4回ほど、作品を制作して教授にそのコンセプトなどを含めたプレゼンテーションをする、という課題がありました。その経験もあって、学生時代からものづくりの際には常に「何のために・誰のために」を意識して作っていましたね。
卒業制作の時点で「ヨネックス株式会社」への入社が決まっていたので、スポーツに関係したものを作りたいと「こんなスポーツシューズがあったらいいな」と思うものを制作しました。
Q6. 高校生のとき抱いていた夢が、現在の仕事につながっていると感じることはありますか?
当時はスポーツ関係の仕事に就きたいとまでは考えていませんでしたが、高校のときからテニス部に所属していました。とにかく高校生活を楽しもう!という思いで、ひたすら好きなことに打ち込んでいましたね。部活以外では、絵を描くのが好きでした。高校3年生になって進路を考えたとき、美術が好きだからそれを仕事にしたいと思い美術大学を目指しました。テニスと美術、どちらも今の仕事につながっています。
近道はあるかもしれない、でも一番大事なのは強い気持ち
Q7. どういう人がスポーツ用品の開発に向いていると思いますか?
こういうものをつくりたい!という明確な自己主張を持った人ですね。開発をしていく上では、いろんな人との意見の衝突もありますので、そういうときに「じゃあ自分は遠慮しようかな……」と引き下がるのではなく、周りの意見には耳を傾けながらも、自分が正しいと思うことを貫き通す意志が必要です。
あと、やはりスポーツが好きなことが一番だと思いますね。
Q8. 高校生に向けたメッセージをお願いします
僕自身、高校当時は将来のことをあまり考えていなかったのですが……。高校3年生の後半になって、好きなことを大学で続けたいと感じ、それが今につながっています。部活でも趣味でも、今興味があることを全力でやっていけば、最終的には自分が将来やりたいことも見つかるのではないかと思います。
スポーツ用品メーカーで将来働きたいという人は、スポーツが好きで、何かをつくりたいという気持ちが大事です。近道はいろいろあるかもしれませんが、まずは「良いものをつくりたい」という強い気持ちが一番だと思っています。
良いデザインと性能の両立、工場をはじめとする外部との連携……。私たちが使うテニスラケットは、長い道のりを経て形になっているのですね。開発した方が直々に試打も行うというお話には、驚いた人も多いのではないでしょうか。
高校時代から好きだったテニスと美術を、今はお仕事として続けている平賀さん。将来に悩んでいる高校生の皆さんも、まずは自分が好きな気持ちを大事に、やりたいことに取り組んでみましょう。
【profile】ヨネックス株式会社 製品開発部 平賀徹
http://www.yonex.co.jp/tennis/
この記事のテーマ
「健康・スポーツ」を解説
スポーツ選手のトレーニングやコンディション管理に関わる仕事と、インストラクターなどの運動指導者として心身の健康管理やスポーツの有用性を広く一般に伝える仕事に大別できます。特に一般向けは、高齢化の進展や生活習慣病の蔓延が社会問題化する中、食生活や睡眠も含めて指導できる者への需要が高まっています。授業は目指す職業により異なります。
この記事で取り上げた
「スポーツ用品メーカーで働く人」
はこんな仕事です
スポーツ用品のメーカーで、スポーツを支えるさまざまな用具の企画、デザイン、販売を行う仕事。一般ユーザーに向けた店頭販売品から、学校を中心とした法人向けの品、世界的に活躍するトップアスリートからオーダー品まで、さまざまなスポーツ用品と関わる。企画したものを形にするクリエーティブな仕事であるため、ものづくりが好きな人に向いている。また、スポーツに密接する専門的な業務が多いことも特徴なので、スポーツに関する専門知識を持つ人だとなお望ましい。
-
PICK UP! 「スポーツ用品メーカーで働く人」について学べる学校
-
健康・スポーツについて学べる学校

