【シゴトを知ろう】エネルギー系研究・技術者 編
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日々、さまざまなエネルギーによって支えられている私たちの暮らし。石油製品や電力・ガスなどを安定的に供給する技術開発や、太陽光や風力などの次世代エネルギーの研究開発を行うのが、エネルギー系研究・技術者の仕事です。
今回は、石油製品の精製及び販売などを行う「JXTGエネルギー株式会社」で働く髙村徹さんに、そのお仕事内容についてお話を伺いました。
この記事をまとめると
- 髙村さんは、製油所の効率的な運転の検討や、不具合の原因究明をしている
- 長年解決されなかった問題や悩みの種を解決する糸口を見つけたときはうれしい
- 「そんなことできっこない」といわれるような研究テーマにも根気強く取り組める人が向いている仕事
実験装置で研究し、製油所の収益改善をサポートする
Q1. 仕事の概要と一日のスケジュールを教えて下さい。
私の業務は、原油からガソリンなどの石油製品を作る工場(製油所といいます)にある装置の運転支援に関する研究です。工場と聞くと、常に同じものを安定して生産しているイメージがあるかと思いますが、実はもっと効率的な運転ができる方法があったり、不具合が起きて製品が作れなかったりします。当然工場でも効率的な運転を検討したり、不具合の原因究明をしたりするのですが、製油所の装置は非常に複雑な構造をしているため、解決策を見つけづらいこともあるのが現状です。そこで、私たち研究者の出番です。
研究所には、製油所にある装置を小さくしたような実験装置があります。その実験装置を使うことで、製油所では試せないような運転をしてみたり、不具合の原因究明となる基礎的な実験を行ったりできます。これら実験やデータ解析を通して解決策を製油所に提案し、製油所の収益改善をサポートするのが私の仕事です。
<ある一日のスケジュール>
09:00 出社
09:30 メールチェック、各製油所の運転状況チェック
10:00 実験データの解析
12:00 昼食
13:00 研究進捗確認の会議
15:00 研究報告の資料作成
16:00 製油所とのテレビ会議で問題点の確認・共有
17:30 研究スケジュールの確認後、帰宅
Q2. 仕事の楽しさ・やりがいは何ですか?
製油所が困っている問題、長年解決されなかった悩みの種などを解決する糸口が見つけられたときはうれしいです。研究職という仕事は、研究者個人の特色が結果に反映されやすいため、「これは自分しかできないぞ!」という成果をあげられると特に達成感を感じます。
Q3. 仕事で大変なこと・辛いと感じることはありますか?
なかなか思ったような研究成果をあげられないときです。実験の計画を立てるときは「こうすればこんな結果が出るはず」といった仮説を立てて、それに基づいた実験をします。しかし、当初の仮説通りの結果が出ないときが長い期間続くと、次第に何が正しいのかよく分からなくなってきたりしますね。
「次世代が希望を持って生きていける世の中を作る」ことを目的にこの職業に就いた
Q4. どのようなきっかけ・経緯でエネルギー系研究・技術者の仕事に就きましたか?
高校生ぐらいまでは、将来は保育士か小児科医になろうと考えていましたが、高校3年生になり真剣に進路を考えたとき、もっと長期的に子どもたちの世代のためになること、自分にしかできないことは何だろうと考え、エネルギー関係の研究職を志しました。
エネルギーは空気のような存在で、普段存在を気にしないけれど私たちの周りのいたるところにあって、なくなったら生きていけないものなんですよね。しかし、“利用できる”エネルギーというのは有限で、特に石油は限られた資源です。我々人類がこれからもずっと生き続けていくためには、このエネルギーを大切に使わなければいけないし、エネルギーを使うと環境汚染が伴いますので、それも最小限に、かつ効率的に利用しないといけません。次世代が希望を持って生きていける世の中を作るというのが私の目的であり、そのための手段として日本のエネルギーの将来を総合的に考えることができる今の会社・職業を選択しました。
Q5. 大学では何を学びましたか?
大学・大学院では応用化学、化学工学などを学びました。大学の研究室では再生可能エネルギーに関する研究をしたいと考え、太陽電池や光触媒といったものについて研究しました。自分の研究分野の論文を網羅的に読み、まだ実用化されていない最先端技術の領域を切り開いていく楽しさがありました。
Q6. 高校生の時に抱いていた夢が、現在の仕事につながっていると感じることはありますか
私は、エネルギー関係の研究職を志した高校時代に思い描いた道の通り、歩けていると感じます。しかし、高校のころに決めた職業になることが大事なことだとは考えません。本質的には自分が好きなことは何か、自分は何をしたら幸せかを考えて、自分の人生の目的に沿った職業を目指せれば途中経過は何でもよいと思います。
“自分が少数派であることを怖がらない人”が向いている
Q7. どういう人がエネルギー系研究・技術者の仕事に向いていると思いますか?
自分が少数派であることを怖がらない人が向いていると思います。研究職はこれまで誰も取り組んでいないテーマが飯の種です。上司に言われた仕事を忠実にこなすことも大事ですが、「それをやって何になるの?」「そんなことできっこない」と言われるような研究テーマにも根気強く取り組める人の方が大きな成果を出せると思います。
Q8. 高校生に向けてメッセージをお願いします
みなさんは今、学校で多くの勉強をしていると思います。職業によって使う勉強はまちまちですが、それらの勉強は、自分が仕事についてから重要であったことに気づくことが多いです。じゃあ今どうすればいいか。学校の外にも目を向けてください。アルバイト、ボランティア、恋愛、旅行など、自分が楽しいと思ったことでいいので、普段と違うことをたくさんしてみてください。そういった経験を多く積むうちに、自分が何を本当に好きかが見えてきて、何をやりたいかに自然と結びついていくと思います。
一見すると勉強の邪魔かもしれませんが、ダラダラ勉強するよりも目標を持って勉強に取り組んだ方が数倍効率はいいです。みなさんが「これだ!」と思える職業を見つけられるよう、応援しています。
「高校生のころに真剣に将来のことを考えておいてよかったと思っています」と話してくださった髙村さん。石油や電気、ガスといった私たちにとって身近なエネルギーも、真剣に向き合うことで、きっと見え方が変わってくるはずです。エネルギー系研究・技術者の仕事に興味が湧いた人は、ぜひエネルギーが人々に届けられる工程に注目してみてくださいね。
【profile】エネルギー系研究・技術者 髙村徹
【取材協力】JXTGエネルギー株式会社
http://www.noe.jx-group.co.jp/
この記事のテーマ
「環境・自然・バイオ」を解説
エネルギーや環境問題の解決など、自然や環境の調査・研究を通じて、人の未来や暮らしをサポートする仕事です。また自然ガイドなど、海や山の素晴らしさを多くの人に伝える仕事もあります。高い専門性を必要とする仕事なので、職業に応じて専門知識や技術を学び、資格取得や検定合格をめざす必要があります。
この記事で取り上げた
「エネルギー系研究・技術者」
はこんな仕事です
電力やガスなどを安定的に供給する技術開発や、太陽光や風力などのエネルギーの研究開発を行う仕事。公的な研究機関や電力会社、ガス会社などに勤め、新エネルギーの研究開発や燃料電池の開発、エネルギーのリサイクル技術の開発に関する研究に取り組む。人々の生活が豊かになるにつれて、電力やガス、石油などの消費量は増加し、既存のエネルギー資源は減少し続けている。そのため人類の発展まで包括する長期的な視点で、エネルギーを供給するための研究は、今後も重要な役割を担っている。
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