【シゴトを知ろう】裁判所書記官 編
裁判を円滑に進めるための重要な役割を果たす裁判所書記官。裁判所事務官として裁判所に採用された人の多くがそれを目指し、書記官をサポートする立場で経験を積んだ後、試験に合格し,研修を受けることで書記官になれるのだそうです。京都地方裁判所で裁判所書記官として活躍する岡田望さんに、お仕事の内容や魅力について詳しく伺いました。
この記事をまとめると
- 法廷で裁判官の前に座っているのが裁判所書記官
- 裁判の調書作成や関係者との調整、利用者への手続案内などを行う
- さまざまな価値観に触れる仕事なので知的探究心の強い人にも向いている
法廷の中でも外でも活躍
Q1. 仕事概要と一日のスケジュールを教えてください
ニュースで目にする法廷を思い浮かべてみてください。法廷全体を見渡せるように法壇に座っているのが裁判官、その前に座っているのが裁判所書記官です。
裁判所は、社会で起きているさまざまな紛争(金銭の貸し借り・窃盗や殺人事件・夫婦関係や相続問題・少年事件など)を適正に解決することで、国民の権利を守り、生活の平穏や安全を保つという役割を担っています。
そのような裁判所において、裁判所書記官は法廷に立ち会い、そこで行われた手続を調書として記録する他、弁護士や検察官など、担当する事件の関係者と裁判の進め方について調整したり、来庁した利用者に手続を案内したりするなど、法廷の中でも外でも活躍しています。
<法廷立会がある日のスケジュール>
8:30 始業
9:00 打ち合わせ(一日の予定などを上司・同僚と共有)
9:30 裁判官との打ち合わせ
10:00 法廷立会(当事者の言い分、証拠の整理)
11:00 調書作成、窓口応対など
12:15 昼休憩(〜13:00)
13:10 法廷立会(証人、当事者の尋問)
16:00 次回の法廷立会の事前準備
17:00 終業
Q2. どんなときに仕事の楽しさ・やりがいを感じますか?
裁判所には、手続が分からないことから、裁判をすることについて漠然とした不安を抱えたまま裁判所を訪れる方もいらっしゃいます。手続を丁寧に説明することで、利用者に安心して裁判を進めていただくことができたときなどは、とてもやりがいを感じます。
Q3. 仕事の大変さを感じるのはどんなところですか?
利用者や事件の関係者に手続案内などをする際は、公正中立な立場を保ちながら、分かりやすく説明する必要があります。
法律専門職として知識を蓄え、それを相手に適切に伝えるためには日々の努力が必要で、大変だと感じることはありますが、その分やりがいも感じています。
高校生のときに観たドラマがきっかけに
Q4. どのようなきっかけで裁判所書記官に就きましたか?
大学で裁判員制度をテーマにしたゼミに参加したこともあり、裁判所が自分にも身近に感じられ、次第に興味を持つようになりました。そして、裁判所が国民にとってどのような存在なのか、社会の変化と共にどう変わっていくのかを、実際に働いて体験してみたいと考えるようになりました。
Q5. 大学ではどのようなことを学びましたか?
法学部に在籍していたので法律を中心に学びました。その他、経済学・語学・心理学・環境問題・歴史学など法律科目以外も幅広く学びました。
Q6. 高校生のとき抱いていた夢や経験したことが、現在のお仕事につながっていると感じることはありますか?
高校生のときは、裁判に関するドラマをよく見ていて、登場人物が仲間と一緒に法律問題のことをあれこれと議論して事件を解決に導く姿に憧れ、漠然と法律に関わる仕事をしてみたいと思っていました。
現在裁判所書記官として、裁判官・職場の同僚・先輩や上司と日々議論を積み重ねて適正・迅速な裁判の実現に貢献できていると感じているので、当時の夢が叶ったのかなと思います。
裁判の傍聴に来てみてほしい
Q7. どういう人が裁判所書記官に向いていると思いますか?
裁判所書記官は、裁判所の内外を問わずさまざまな人たちと関わるので、人とコミュニケーションをとることが好きな方が向いていると思います。また、裁判所で扱う事件は多種多様で、さまざまな問題や価値観に触れることになりますので、知的探求心の強い方も向いていると思います。
Q8. 高校生に向けたメッセージをお願いします
まずは、こんな仕事があるということを知っていただくためにも、一度裁判の傍聴に来てみてください。ドラマやニュースでは知ることのできない新しい世界に触れることができますし、裁判所で生き生きと働いている人たちの姿を見ると、裁判所をより身近に感じてもらえるのではないかと思います。
裁判所書記官の仕事は、さまざまな種類の紛争に触れ、さまざまな人と関わる仕事ですので、皆さんが勉強してきたことを幅広く生かすことができます。
高校生のみなさんには、今は自分の興味のあることに一生懸命取り組んでいただき、就職先を考えるようになったとき、そういえば裁判所書記官という仕事もあったなと思い出していただけると嬉しいです。
ドラマを観て憧れた法律の世界に飛び込み、夢を叶えた岡田さん。日々の仕事の中で熱い議論が交わされている様子を聞くと、ちょっと裁判所を覗いてみたくなりますね。岡田さんもおすすめする裁判の傍聴は各地の裁判所でできるようです(詳しくはこちら)。興味のある方は行ってみてはいかがでしょうか。
【profile】京都地方裁判所 裁判所書記官 岡田望(所属等は平成29年3月時点のものです。)
裁判所 採用Facebook:https://www.facebook.com/saibansho.saiyo/
この記事のテーマ
「公務員・政治・法律」を解説
公務員は、国や地方自治体の行政に携わり、よりよい地域、町づくりを支える仕事です。政治に関しては政党の活動を支える政党職員、法律では弁護士や検察官などの仕事もあります。これらの仕事に就くには、公務員採用試験、司法試験など関連する資格を取得し、官公庁や行政機関の採用試験を通過することが必要です。
この記事で取り上げた
「裁判所事務官」
はこんな仕事です
裁判所事務官は、裁判を行う全国の各裁判所で、裁判所書記官の下で事務のサポートをする。業務内容は大別して「裁判部」と「事務局」の2つに分かれる。「裁判部」では裁判所書記官を補助し、文書を関係者に郵送したり,窓口応対をしたりする事務が業務となる。また、「事務局」では会計や人事、総務など、裁判所運営のために欠かせない司法行政事務を担当する。どちらも円滑な裁判を実現するという点で、国民生活に大きく役立つ仕事といえる。