「たる」の中に住み続けた偉大な哲学者がいるってホント?

たるの中を寝床とし、ホームレスのような生活を送っていた哲学者が古代ギリシアにいました。この偉人にまつわる数々のユニークなエピソードをご紹介します。
この記事をまとめると
- ソクラテスの孫弟子にあたる哲学者でありながら、奇人・変人と呼ばれた男がいる
- 犬のような生活をして、樽に住んでいたといわれている
- 哲学に触れることで、人生の学びになるかもしれない
偉人さんは変人さん!? 古代ギリシアの哲学者、ディオゲネス
当たり前のことですが、世の中にはさまざまな人がいます。普段の生活の中で出会う人の中にも、「この人は変わった人だなあ」と思うこともありますよね。
ましてや、歴史的・世界的に有名な偉人ともなると、人とは違う感性を持っているせいか、中には変人と呼ばれた人も多く存在します。古代ギリシアの哲学者、ディオゲネスはその代表格として語られる人物です。
偉人・ディオゲネス、と聞いても、ほとんどの人は「そんな人いたんだ?」という思うかもしれません。しかしディオゲネスは、キュニコス派という哲学一派の創始者として知られるアンティステネスの弟子で、かの有名な哲学者ソクラテスの孫弟子に当たります。これだけ聞くと、立派なエリート哲学者に思えますが、一体どんなところが「変」だったのでしょうか?
「犬のディオゲネス」と呼ばれた男!
じつはディオゲネスがその名を知られているのは、その奇行による逸話からです。彼の哲学であるキュニコス派の思想は、「犬儒派」と呼ばれていました。「犬のように自然に生きる」という考えから、ディオゲネスは粗末な服にちょっとした食料の入った袋を持ち、浮浪生活をしていたといいます。
さらには、「食事をするのが恥ずべきことではないのならば、どんなところで食事をしてもいいだろう」という考えから、非常識なところで食事をするなど、その生活ぶりはまさにのら犬のようで、彼は周囲から「犬のディオゲネス」と呼ばれていました。また、彼はそうした生活を送る中で、メートローオンと呼ばれる神殿にあった大きな樽に住みかにしていたことも有名で、それゆえに「樽のディオゲネス」ともいわれています。
しかし、ディオゲネスは古代ギリシャ末期からローマ時代を通して「第2のソクラテス」として、ソクラテスの精神を受け継ぐ人々に「ソクラテスに次ぐ模範」とされていたのも事実なのです。
哲学を知ることが、人生の学びになるかもしれない
現代の哲学者においても、「時代の精神」を表している重要な人物として、彼を讃えている人も少なくありあせん。ちなみに「嘲笑する、皮肉」という意味の「シニカル」という言葉の語源は、キュニコス派をさす言葉、「シニック(cynic)」から来ています。
このように時代ごとの人々の考え方や思想、「哲学」を学ぶことは、時代の空気感を知るだけでなく、自分の人生の学びとしても意義のあることです。みなさんも、ぜひ書籍やインターネットなどでいろいろな人物の哲学に触れてみてください。そうすることで、普段の生活に中で気づかなかった、見方や考え方、喜びや感動を知ることができるかもしれませんよ。
この記事のテーマ
「文学・歴史・地理」を解説
文学は人々の暮らしや感情の変化などについて、文章表現をもとに考える学問です。文献を読み解きながら比較して、人のあり方や社会について研究します。地理学や歴史学は、地形や気候、歴史的事実や遺物・遺跡などの手がかりをもとに、私たちの生活や文化・経済活動などについて、その成り立ちから考えていきます。
この記事で取り上げた
「哲学」
はこんな学問です
哲学は、古代ギリシア時代には学問全般を指していたが、近代に入って学問が専門分化していくなかで、あらゆる学問の基礎となる学問、世界や人生の根本となっている原理を探究する学問として位置付けられるようになった。また、哲学という学問には、もう一つの領域がある。それはヒンドゥー教・仏教の思想から生まれたインド哲学、儒教・道教などの思想から成り立つ中国哲学のように、アジアの世界観や人生観・自然観から育まれた東洋哲学である。
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