【シゴトを知ろう】装蹄師(そうていし) 編

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【シゴトを知ろう】装蹄師(そうていし) 編

2017.02.16

提供元:マイナビ進学編集部

【シゴトを知ろう】装蹄師(そうていし) 編

テレビの競馬中継などで目にする、競走馬たちの美しく軽やかに走る姿。時速60km以上にもなるという、馬たちの脚元を支えているのが装蹄師(そうていし)の仕事です。摩耗してしまう馬の蹄(ひづめ)を守るため、金属製の蹄鉄(ていてつ)をはめる装蹄という作業は、古くはローマ時代から行われていたという説もあるほど歴史があります。デリケートな馬の脚を陰で守り支える装蹄師のお仕事の内容から、馬とのつき合い方まで、日本中央競馬会の美浦トレーニングセンターで装蹄師をしている猪股さんに、お話を伺いました。

この記事をまとめると

  • 装蹄次第で馬の脚が腫れたり、調子が悪くなることがある
  • 装蹄した馬がレースで勝った時が一番嬉しい
  • 馬は小さい頃に手をかけて育てると大人しい安定した性格になる

脚への負担が大きい競走馬の装蹄は「爪切り」がポイント

Q1. 仕事概要と一日のスケジュールを教えて下さい

装蹄師は馬に蹄鉄を取りつける仕事で、僕は中央競馬(JRA)の競走馬を担当しています。蹄というと鉄製を想像する人もいますが、特に競走馬は鉄では重くて走れませんので、現在はアルミ合金製の蹄を使用しています。

競走馬は、騎手と鞍(くら)と合わせて60kg~70kg程度のものを乗せて毎日トレーニングをするので、蹄はすぐにボロボロになります。「追い切り」と呼ばれる本番と同じように本気で走る調教があるのですが、それが終わるタイミングで3週間に一度の頻度で蹄を交換します。

仕事の流れとしては、古くなった蹄の釘を抜いて外したら、新しい蹄を装着する前に爪を切って整えます。毎回5mm程度切るのですが、この爪切りが重要なポイント。競走馬のようにコンマ何秒を競う馬になると、馬の足にかかる負担は非常に大きいので、ほんの少しの狂いで足が腫れたり調子が悪くなったりします。ほんの5mm爪を切るか切らないかで馬の走りに大きな影響を与えるので、ここは神経を使いますね。

爪を切ってヤスリをかけたら、蹄を装着します。馬によって爪の形が違うので、金槌で叩いて形を整えてから釘を打ち込んで固定します。馬の足に釘が刺さると痛めてしまうので、打ち込む方向にも要注意です。釘の先を外側に出すように斜めに打ち、出た釘先を折り曲げて釘が抜けないように固定したら出来上がりです。装蹄が4脚できれば作業終了で、1頭30~35分程度。あまり長いと馬にもストレスがかかるので素早く行うことが大切です。その後、少し馬を歩かせて厩舎のスタッフと一緒に様子を見ます。蹄が合っていないと歩き方が不自然になるので、馬の足の運びをチェックして問題がなければ終了です。

ちなみに僕たち装蹄師や騎手、調教師、厩務員などJRAで働くスタッフは、競争の公正確保ということで馬券を買うことは一切禁じられています。

<一日のスケジュール>
※季節によって異なり、馬の調教時間に合わせます。
5:00 出社
5:30 厩舎を回って装蹄時間を決める
8:30 作業開始(3~5頭程度の装蹄) 
12:00 昼食
13:00 午後の作業の準備
14:00 作業開始(3~5頭程度の装蹄)
17:00 作業終了、片付け
18:00 帰宅

話しかけ手をかけて育てると、馬は素直に大人しく育つ

Q2. 仕事の楽しさ・やりがいは何ですか?

やっぱり自分が装蹄した馬がレースに勝った時です。あとは自分の装蹄で脚元が弱い馬の脚の状態が改善した時ですね。

競走馬の人生はほぼ8歳までと言われ、担当した馬が大きな故障もなく競走馬人生を全うできた時は心底ほっとします。装蹄は本当に裏方の仕事ですが、蹄鉄の形態や装着の仕方によって馬の脚が腫れたり、つまづいたりすることもあるという、馬のコンディションに大きな影響を与える仕事です。馬の調子が落ちると「蹄鉄が合っていないのでは?」と言われることもありますし、担当を降ろされることもある厳しい世界です。だからこそレースで勝ったり、蹄鉄に工夫をして脚の調子がよくなった時などは、本当に嬉しいですよ。


Q3. 仕事で大変なこと・辛いと感じることはありますか?

作業はずっと中腰で行うので、体力的にキツイ時はあります。また神経質な馬は装蹄師の前ダレ(革製の前掛け)を見ただけで怖がって暴れる馬もいるので、どうしようもない時は鎮静剤を売って作業することもあるくらいです。

馬の気性はその育て方、いわゆる「馴致(じゅんち/なれさせること)」が非常に大切で、小さい頃から人の手をかけて育ててあげると大人しくて安定した性格に育ちます。手をかけるというのは、ブラッシングを頻繁にしてあげたり、話しかけたり触ってあげたりということで、機械的に扱われたり放っておかれた馬は性格が荒れてしまいます。性格が荒れた馬は装蹄の時も暴れたり嫌がったりするので、扱うのが大変なんですよね……。今はこの馴致の技術が向上して、昔に比べると大人しい馬が増えたと言われています。

牧場経営する父から勧められた「鉄屋」の仕事

Q4. どのようなきっかけ・経緯で装蹄師に就きましたか?

宮城県にある実家が地方競馬の競走馬を育てる牧場を経営していて、いずれ実家を継ごうと漠然と考えていました。ただ、特に地方競馬の牧場の経営は労働に対する収入のバランスが取れず、なかなか厳しい状況です。それも理由の一つだと思うのですが、ある時父から「お前は鉄屋になれ」と言われまして……鉄屋というのは装蹄師のことなんですが、それで故郷を離れて装蹄師を目指すことにしました。今、自分が中央競馬で働くようになって、地方競馬とは規模もレベルも段違いに大きいので驚きました。


Q5. 装蹄師に就くために学校ではどのようなことを学ばれましたか?

装蹄師になるには、日本装削蹄協会が主催する装蹄師認定講習会を1年間全寮制で受講した後に、資格試験に合格しなければいけません。講習会では装蹄師になるための基礎、例えば馬の爪の内部の構造についてなどの知識を学んだり、実習形式で基本的な装蹄を行います。

装蹄師は2級、1級、指導級というレベルがあり、学校を出てすぐは2級の試験資格が与えられ、2級資格取得後4年を経過すると1級の試験が受けられます。1級取得後に9年を経過すれば指導級の資格試験を受験でき、指導級の試験をパスすれば弟子を取ることができます。僕は学校卒業と同時に親方のところへ修行に入り、1級と指導級の資格を取得。そして親方の元から独立開業して、現在弟子が2人います。

実は装蹄師としての技術と知識を競う全国装蹄競技大会というコンテストも年に1回開かれています。これは鉄の棒から蹄鉄を作り出し、馬を観察してどう装蹄するかの方針を決める判断力を試される大会です。弟子時代から8年位続けて出ていますが、独立開業すると自分を試す機会が減るので昨年の10月の大会にも参加しました。地方予選を勝ち抜いた30名が本選に残って争い、最優秀選手には農林水産大臣賞が与えられるという非常に名誉な賞です。

今後は海外でも活躍の場が広がる装蹄師という仕事

Q6. 高校生の時に抱いていた夢が、現在の仕事につながっていると感じることはありますか?

高校生の頃から馬に関わる仕事に就きたい、テレビで見られるような馬に触ってみたいと憧れていたので、夢は叶ったと思いますね。

余談ですが、最近は日本の競走馬が海外のレースに出ることが増え、装蹄師も一緒に派遣されることもあります。僕も先日親方の代わりに行って来いと言われてイギリスに行ったのですが、海外の装蹄師がどんな仕事をしているのかが知りたくて、1人で現地の装蹄師のところを訪ねて行ってみました。いろいろアドバイスしてもらい、非常に勉強になったのですが、その時に思ったのが「もっと高校生の時に英語を勉強しておけばよかった」ということ。今の時代はいつどこで海外に行く機会があるかわからないので、高校生の時に英語をしっかり習得しておくとよいと思います。


Q7. どういう人が装蹄師に向いていると思いますか?

やっぱり馬が好きな人でしょうね。神経質な馬は、装蹄する時に暴れたり怯えたりするもので、それをなだめつつ、時には叱りつつ装蹄していく根気強さが必要です。大きなレースで賞を取るような馬は、良い意味で負けん気が強くて一癖ある馬が多いですから、扱いにはいつも以上に神経を使います。言葉が通じない動物だからこそ、こちらが温かく辛抱強く対応することが大切だと感じます。


Q8. 高校生に向けたメッセージをお願いします。

高校生の皆さんの可能性は無限大です。自分を信じて努力をすれば、道はどんどん開けますし、逆に何もしなければ何者にもなれません。僕は「テレビに出ているような馬に携わる仕事がしてみたい」という夢を叶えましたが、ただ安穏と夢を見ただけでは叶わなかったはずです。努力と自分を信じる気持ちで夢を勝ち取ってください。


表に出る派手な仕事ではないけれど、馬のコンディションやレースの勝敗に大きな影響を与える装蹄のお仕事。「時間があれば馬の様子を見に行ってしまう」という馬への愛情に加え、厩舎のスタッフとコミュニケーションを取りながら、より良い装蹄への強い探究心こそが猪股さんの仕事の秘訣のようです。「見えない部分こそが大切」という言葉を体現するような装蹄師の職人技に思いを馳せてみると、何気なく見ていた競走馬の脚元も違ったものに見えてきますね。


【profile】装蹄師 猪股謙二

この記事のテーマ
動物・植物」を解説

ペットなど動物や観賞用の植物に関わり暮らしに潤いを提供する分野、食の供給や環境保全を担う農業・林業・水産業などの分野があります。動物や植物の生態や生育に関する専門知識を身につけ、飼育や栽培など希望する職種に必要な技術を磨きます。盲導犬や警察犬、競走馬、サーカスの猛獣などの調教・訓練や水族館や動物園で働く選択肢もあります。

「動物・植物」について詳しく見る

この記事で取り上げた
「装蹄師(そうていし)」
はこんな仕事です

馬の脚のツメを削り、馬のシューズである鉄の蹄を装着させる仕事である。馬の脚は細く長いために、さまざまなストレスが加わり、仔馬(こうま)のときから病気やトラブルの危険を抱えている。また、競走馬や競技場は、限界ぎりぎりまでの運動を強いられるため、けがや故障のリスクが高くなる。装蹄師は、ツメと蹄を管理することで、そのような問題を未然に防ぐ重要な役割を担う。装蹄師になるには、公益社団法人 日本装削蹄協会の認定資格を取得後、JRAや乗馬クラブなどに勤務するか、独立開業する道がある。

「装蹄師(そうていし)」について詳しく見る