【シゴトを知ろう】音響スタッフ ~番外編~
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ドラマやニュース、ドキュメンタリーなど、視聴者にさまざまなメッセージや疑似体験を提供しているテレビ。映像の持つ魅力をより効果的に伝えるために、音響スタッフは理想の音作りを追究しています。
主にテレビ番組の音声を担当している古橋淳二さんに、求められている資質やキャリアパスなど、実際にテレビ業界で働いている人ならではのご意見を伺いました。
この記事をまとめると
- 仕事のやりやすさにもつながるコミュニケーション力! 同業者同士の交流は必須
- 企業の中で業務の幅を広げる、フリーになって道を極める……。キャリアプランはいろいろ
- オンもオフもテレビを楽しむ! その意識が成長につながっていく
いろいろな会社のスタッフが集まる現場。自然と知人が増えていく
――音響スタッフに向いている性格やタイプはありますか?
テレビは常に新しいものを追っているので、今ある技術や機材に満足せず、新しいことにどんどん興味を持って挑戦できる性格であることが大切だと思います。同時に、多方面から物事を見られる柔軟性を持っていることも重要ですね。
それから、さまざまなスタッフと一緒に一つのものを作っていく仕事なので、コミュニケーション能力も必要です。
また、意外だと思われるかもしれませんが、音響スタッフはあくまでも技術職なので、感覚的に動くよりも細かいところまで順序立てて考えられるような、きちっとしたタイプの人が向いている仕事だと思います。
ちなみに、私は元々そのようなタイプではなかったのですが、先輩方に鍛えられました(笑)。
――コミュニケーション能力が必要ということは、同業者同士の横のつながりも多いのでしょうか?
多いですね。1つの現場の中でもさまざまな会社の人と一緒に働くことが多いので、自然とつながりは広がっていきます。そこから新しい情報を得たり、人員の足りない現場で力を貸してもらったり。知り合いが多ければ多いほど仕事がやりやすくなるんです。
現場ごとに夜は飲み会が開かれることも少なくないので、そこでさらに交流を広げます。今では日本各地に同業の知人がいるので楽しいですよ。
裏方の地道な努力がテレビを華やかに!
――この世界に入る前に抱いていたイメージと現実とのギャップはありましたか?
テレビ業界というと、正直もっとチャラチャラした雰囲気を想像していたのですが(笑)、実際に働いてみると全く違いました。
表に出ている部分が華やかな分、裏方の仕事はとても地味です。テレビ番組のおもしろさを表現する陰には、たくさんの地道な努力があるんだなと気付かされましたね。
それから地味といえば服装も……。現場では舞台袖などにいることが多いので、基本的には黒っぽい服しか着ません。自然と自宅のクローゼットは黒い服ばかりになりがちなので、オフの日に着る服装は黒以外を選んで、地味にならないようにしています(笑)。
――音響スタッフの次のキャリアとしてはどんなものがあるのでしょうか?
キャリアについては、考え方によってさまざまな道が開けていると思います。
例えば、企業の中にいるからこそできる仕事はたくさんあるので、企業に所属し続けて業務の幅を広げたり、管理職を目指す道があります。
一方で、組織の枠にとらわれずにもっと幅広いジャンルで実力を試したいなど、自分のペースで仕事がしたいと考える人は、独立してフリーになる道もあります。
私に関していえば、最近は音声だけではなく現場の統括業務を行うことも増えてきていて、こうした業務のステップは、企業に属しているからこそだと思いますね。
職業病!? テレビを純粋に楽しめなくなった!
――この業界に入ってからご自身で変わったなと思うことはありますか?
一番変わったのは、テレビを素直に観られなくなったということです。
同僚や知人が関わっている番組は特に意識してしまうんですよね。つい、「ここはどういうテクニックを使っているのか」「どんなふうに音をとっているのか」などと知りたくなってしまって……。
他のスタッフも同じように感じているようで、後日お互いによかったところを話したり、アドバイスをし合うことも多いです。
――「テレビ=仕事」になってしまうのですね。それだと、オフの時間も仕事をしている感覚なのでしょうか?
そうですね。それだけテレビが好きということなのかもしれません(笑)。
もちろん素直におもしろいと思って観てはいるのですが、特にスポーツ中継などは自分が多く関わってきたジャンルなので、どんなふうに行っているのかと内容よりも音声の方に興味が向いてしまいがちです。
でも、若い時は吸収しなくてはならないことが山ほどあったので、そういった環境がメリットでもありました。テレビをつければ自分と同じ仕事が観られるので、身近なところに教科書があるような感覚で過ごしていましたね。
そこで気付いた疑問や気になったテクニックを先輩に聞いたりして、自分のスキルを高めていくことが楽しかったので、あまり苦には感じなかったですね。
「テレビ=仕事」となっても、古橋さんのテレビを好きな気持ちは変わらないようです。厳しいと言われるテレビの裏方の世界で活躍するためには、このブレない気持ちが大切な要素の一つなのだと感じました。
自分の感じたリアルな音をテレビで表現したい、視聴者をもっと楽しませたい、そんな音響スタッフの方々の熱い思いが新しい技術を生み、これからもテレビを通して私たちを驚かせ、楽しませ続けてくれることでしょう。
音響スタッフに興味がある人は、ドラマ・スポーツ・バラエティなどさまざまなテレビ番組を観て、どんな場面をどんな音で表現しているのかをよく聴きながら、その番組の音をつくったスタッフの想いを感じてみるのもいいかもしれませんね。
【profile】株式会社フジ・メディア・テクノロジー 技術統括センター技術統括部 兼 制作技術センター制作技術部 音声 古橋淳二
株式会社フジ・メディア・テクノロジー
この記事のテーマ
「マスコミ・芸能・アニメ・声優・漫画」を解説
若い感性やアイデアが常に求められる世界です。番組や作品の企画や脚本づくり、照明や音響などの技術スタッフ、宣伝企画など、職種に応じた専門知識や技術を学び、実習を通して企画力や表現力を磨きます。声優やタレントは在学しながらオーディションを受けるなど、仕事のチャンスを得る努力が必要。学校にはその情報が集められています。
この記事で取り上げた
「音響スタッフ」
はこんな仕事です
テレビ番組の制作で、音声を担当する仕事。スタジオ収録で使うピンマイク(出演者の胸元に付けるもの)や、ロケ収録で使うガンマイク(長い持ち手が付いているもの)など、状況に即したマイクを使用して音声を録音する。ただし、マイクの種類によって音量や音質は異なり、さらに出演者によって声の大きさも異なるため、収録した音声をそのまま番組に使うことはできない。そこで、編集作業においてBGMや効果音などとのバランスを確認しつつ、各音声の調整を行うことも重要な仕事。裏方だが専門性が高い仕事といえる。