【シゴトを知ろう】エディトリアルデザイナー ~番外編~
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主に書籍の表紙や中面のレイアウトやデザインを手がける、エディトリアルデザイナー。とあるビジネス本を読んだことがこの仕事に就くキッカケにもなり、本への愛情が芽生えたというBUCH+の横山慎昌さんに、本への熱い想いをたっぷり語っていただきました。
この記事をまとめると
- 自分の血肉になる情報を得るためには、Web検索より本を読む方がいい
- 大事なのはWeb検索で出てくる答えではなくて、自分はどう思うかということ
- 難しいことを一般の人にも分かるようにするのもデザイナーの役割
Web検索で得た断片的な情報を体系化するのはすごく難しい
――やはり子どもの頃から本は好きだったんですか?
いえ、全然! 僕、本を読むようになったのが25歳くらいからなんですが、独立したのも本の影響だったんです。とあるビジネス書を読んだとき、1,500円くらいの本にものすごい情報が詰まっていることに驚いて、そこからは本ばかり読む人になりました。本でいろんな知識やノウハウを得て、自分の仕事を効率化したり、取引先とのやり取りの方法などを学んで実践しているうちに、お客さんとの信頼も付いてきたのが分かりました。独立するときも本を読んでいるうちに、「意外と独立できるんじゃないか?」という自信にもなりました。大人になってから本の素晴らしさを知った感じですね。
――Webや電子書籍にはない、紙の書籍のよさってどこだと思います?
現在はWebで検索すると、必要な情報が何でも手に入るじゃないですか? でも、そこから得た断片的な情報を自分で体系化するのって、すごく難しいと僕は感じます。自分が全く知らないことを学びたいとき、本ってすごく便利だと思うんです。体系的な情報を持ってる一流の人(著者)が、その情報を一冊にまとめてるわけですから、何も知らない分野でも2~3冊読めば、大枠が掴めてしまうんです。そうやって本で学んだ上で、さらに知りたいことをWebで検索するなりしないと、自分の血肉にはならないと思うんですよね。そういう意味で、知識をちゃんと自分のものにできるところが、本のよさだと思います。
本は自分の興味を広げてくれて、発見や可能性を与えてくれる
――欲しい情報はWebですぐ手に入るかもしれないけど、本や雑誌にはそれ以上の情報や直接関係のない情報もたくさんあって、それがおもしろかったりもしますよね。
分かります。僕も雑誌はいらない情報を見るために読む、いや読むというよりは眺めている感じですね。そこにおもしろそうな情報や発見があって、自分の興味が広がっていくのが楽しいです。雑誌で発見や可能性を探してるのかもしれないですね。何か興味のある物に出会えたときは、それに関係した書籍を何冊か当たって、知識を深めていく。本を読んでいても本筋と関係ないところに引っかかって、そこから興味が広がっていくこともよくあります。そういうのが本当に楽しいんです。
――重要なのはWeb検索で分かる「何々である」という答えだけでなく、「何々である。なぜならば~」という、その理由や裏付けの部分だったりしますからね。
そうなんです。だから、打ち合わせなどで意見を求められたときも、Web検索で出てくるような答えを言う必要はないんですよ。必要なのは、「君はどう思うか? なぜそう思ったのか?」ということですから。その意見が間違っててもいいんですけど、それを自分の言葉で言えないと打ち合わせる必要がないし、その人と仕事をする意味がない。本を読んでると、自分と対話しながら読んでいるようなところがあります。「この人いいこと言ってるな」とか、「この人の言ってることは間違ってるな」と思いながら読むことが自分の意見を生むことになるし、自分を磨くことにもなるんです。
本は自分の考えを育てるのにもすごくいいメディア
――今まで作った中で一番思い入れの強い本ってどれですか?
『統計学の図鑑』という本ですね。統計の知識もないし、数学も強くないので、知らないことを学んで、形にするということにとても苦労しました。最初はハテナだらけだったんですけど、「この原稿をどう表現すればより分かりやすくなるかな?」と考えました。デザイナーって、難しいことを一般の人にも分かる表現にしてあげるコネクションの役割もあると思うので、分からないなりに理解して、分かりやすく伝えられるように本当に苦労して作りました。その結果、自分でも満足する物が作れたし、読者にも好評だったみたいで安心しました。今まで作った本の中でも思い入れの強い一冊ですね。
――やはりこういうお仕事をしてると、本への愛も深まっていきますか?
愛は深いですね。僕、本を買うときは値段を一切見ないんです。一流の人が書いた、著者が何十年かけて培ってきたものを、1,500円程度で手に入れることができると思ったら、安いもんじゃないですか? だから積ん読(積むだけで読んでいない本)もどんどん増えてしまうんですけど、それでもいいと思っています。とにかく本をたくさん買います。子どもにも本を読む習慣を付けてもらいたいと思ってて、本だけはすぐに買ってやるようにしています。僕自身が本を読んで可能性が広がっていくのを実体験したので、本は自分の考えを育てるのにもすごくいいメディアだと思っているし、これを読んでいる高校生にももっと本を読んでほしいですね。
どんな情報でもWebで得られる時代だからこそ、深い知識を得るために本を読んでほしい。本への熱い愛を持って本のデザインをしている横山さんのお話からは、本を読むことの楽しさや素晴らしさがしっかり伝わってきました。みなさんも人生を変えてくれるような一冊に出会えるといいですね。
【profile】BUCH+ 横山 慎昌
http://buch-plus.jp/
この記事のテーマ
「デザイン・芸術・写真」を解説
デザインは、本や雑誌、広告など印刷物のデザイン、雑貨、玩具、パッケージなどの商品デザイン、伝統工芸や日用品などの装飾デザインといった分野があり、学校では専門知識や道具、機器を使いこなす技術を学びます。アートや写真を仕事にする場合、学校で基礎的な知識や技術を身につけ、学外での実践を通して経験やセンスを磨きます。
この記事で取り上げた
「エディトリアルデザイナー」
はこんな仕事です
カタログ、パンフレット、雑誌、新聞、書籍、会社案内、学校案内、フリーペーパー、取扱いマニュアルなど、いわゆる読み物の紙面を作成する仕事。読みやすさを追求し、タイトル、小見いだし、文章、写真、イラスト、図表などの素材をバランスよく配置する。編集者やアートディレクターから依頼を受け、打ち合わせを重ねながら素材を読み物に構築。デザインの調整を重ね、文字の修正などにも対応しつつ、印刷所へ入稿する。試し刷りの校正紙で紙面を確認し、完璧な状態でリリースするまでが仕事だ。
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