【シゴトを知ろう】メディカルトレーナー ~番外編~
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スポーツ選手のケガの治療やリハビリ、トレーニングのアドバイスをするメディカルトレーナーの上村聡さん。上村さんはフリーランスとして複数のスポーツチームと契約していますが、他にはどんな働き方があるのでしょうか。また、トレーナーに必要な“ある感覚”についても教えていただきました。
この記事をまとめると
- チーム専属・フリーランス・治療院開業・病院やジムで働く……などの選択肢がある
- 体調管理も仕事のうち
- 感覚が研ぎ澄まされた若いうちに経験を積み始めると良い
おばちゃんのコミュニケーション力がお手本
――メディカルトレーナーとして働くにはどんなスタイルがあるのでしょうか
私のようにさまざまなチームと契約している人もいれば、チーム専属トレーナーになる人もいます。いずれにしてもアスレチックトレーナーの資格ほか、鍼灸・マッサージ・柔道整復師などの資格を併せ持つのがおすすめです。治療院を開業するトレーナーも多いですが、その際も国家資格を持っていることは重要です。そのほかに、運動療法ができる病院や大手スポーツジムなどで働くという選択肢もあります。
――仕事と全く関係のないところで仕事のヒントが得られたことはありますか?
義母には影響を受けました。わからないことがあれば隣にいる知らない人にも臆せず質問するタイプの人なのですが、聞かれた人も普通に答えてくれるんですよね。それを見て「話しかけてもいいんだ!」と驚きました(笑)。トレーナーにとって、選手や監督・コーチとコミュニケーションを取る力は大切で、仲間内でもよく「おばちゃんがトレーナーになればすごいよね」という話をします。あのコミュニケーション力は見習いたいです。
――女性のトレーナーもいらっしゃるのでしょうか
います。女性トレーナーは気配りがすごい人が多いですね。なでしこジャパンのように世界で活躍する女性アスリートが増えているので、女性トレーナーのニーズも高いです。ただしトレーナーは私生活との両立をうまくとらないと続かない仕事。僕も家にいる時間が少なくて、奥さんや子どもとの時間は意識して大切にしています。家庭を持つようになるとライフワークバランスの取り方も課題になります。
ベージュの短パンにポロシャツがトレーナーの正装!?
――トレーナーとして働くにあたり、住む場所などの制限はありますか?
現場となるグラウンドは基本的に交通の便が良くない場所にあることが多いです。僕は今、千葉と横浜の現場を受け持っていますが、ちょうど中間あたりに住んでいるので1時間〜1時間半程度で行けます。移動にそれ以上時間がかかると辛いと思います。駅から遠い場所も多いので原付で移動しています。さすがにバスの時間まで気にしていられないので……。そこは投資ですね。
――お仕事されるときはどんな服装が多いですか?
アウトドアブランドの服が多いです。特に“短パン”はトレーナーの制服のようなもの。トレーナーの正装は、チノパン(または短パン)にポロシャツです。さらにチノパンを履く時にはポロシャツをズボンの中に入れてベルトをします。短パンが正装にもなりうるというのはあまり聞かないですよね(笑)。仕事柄、しゃがむことが多いので、動きやすい短パンを愛用しています。私はお気に入りのアウトドアブランドの短パンを色別に7枚持っていて、その日行くチームのカラーに合わせてチョイスしています。選手も喜んでくれます(笑)。
――体調管理も大切なのでしょうか
大切です。休むとその分、迷惑をかけてしまいますし、その後の仕事にも影響してしまいますから。現在の仕事がジュニア〜ユース年代までですので、子どもと接する機会が多いんです。ですので、選手から風邪を移されないよう特に気をつけています。手洗い・うがいは必ずしますし、よく食べ、睡眠もしっかり取ります。忙しくてジムに行く時間がないので、家でできる運動をしていますし、学生時代にやっていたサッカーも続けています。
あと、トレーナーはケガをしちゃいけないですね。2年前にフットサル中にアキレス腱を切ってしまい、松葉杖を付いて現場に行ったことがあります。ケガの治療や予防をする人がケガをしているって……微妙な空気になりました(笑)。
利き手でないほうの手も使えるようになるといい
――トレーナーとして出世する人にはどんな人が多いですか?
言われたことをきちんとやれる人。それに加えて自分の意見を言える人ですね。ただ自分の意見を言うだけでは独りよがりな人だと思われてしまいます。言われたことを素直に受け入れた上で、自分の意見を言い、それに責任を持って行動できる人であれば信頼されます。
あとは「この業界で生きていく」と覚悟ができている人ですね。そういう人は早い段階で上の人に認められて引き上げられていきます。「あいつに任せておけばいいよ」と言ってもらえればたいしたものです。人に好かれる真面目な人が多いと思います。
――トレーナーの業務の領域はやる気次第で広げていけるものでしょうか
領域は広げようと思えば広げていけます。選手の周りにはいろんなトレーナーがいます。メンタル、コンディショニング、治療、栄養……など。最近はスポーツデンティストという職業もあります。歯を食いしばれるようマウスピースを作ったりする仕事です。スポーツファーマシストという薬剤師の仕事もあります。スポーツ選手の第二の人生を考えるコーディネーターもいるんですよ。
現状ではそれらの仕事でチーム専属というのは難しいと思いますので、複数チームを受け持つのが現実的でしょうね。新しい技術の発展とともに、スポーツの世界は目まぐるしく変化しています。次はどんなニーズが出て来るのかなとよく考えます。
――トレーナーになりたい高校生が今から積める経験は何かありますか?
たとえば片方の足に違和感があったとき、左右の足を両方いっぺんに触ることでその違和感に気づきやすくなります。このとき、両手を同じように使えることが大切です。僕は右利きなので、普段から左手でも箸を使ったり、文字を書いたり、拭き掃除をしたりして、同じ感覚で使えるようにしています。サッカー選手も左右の足で蹴れるように練習をしますが、それと同じですね。若い頃のほうが感覚は研ぎ澄まされているので、早いうちに鍛えておくといいと思います。
トレーナーの仕事は選手の都合に合わせることが多いので、時間が不規則になりがちです。上村さんの目標は自宅で治療院を開業し、子育てしながら働くスタイル。スタッフを増やせば外の現場に行く仕事も増やせるので、それが理想だそうです。そうした自分に合った理想の働き方も、経験を積むうちに見えてくるのかもしれませんね。
【profile】T3-Athletecare メディカルトレーナー 上村聡
HP:http://www.t3-athletecare.com
この記事のテーマ
「医療・歯科・看護・リハビリ」を解説
医師とともにチーム医療の一員として、高度な知識と技術をもって患者に医療技術を施すスペシャリストを育成します。医療の高度化に伴い、呼吸器、透析装置、放射線治療などの医療・検査機器の技師が現場で不可欠になってきました。専門的な技術や資格を要する職業のため、授業では基礎知識から医療現場での実践能力にいたるまで、段階的に学びます。
この記事で取り上げた
「メディカルトレーナー」
はこんな仕事です
けがをしたスポーツ選手や腰痛や打撲などの痛みを抱える一般の人が、一日も早く元の生活に戻れるよう回復をサポートする仕事。活躍の場は、整形外科や接骨院。その人の症状に合った体の動かし方や筋力を高めるトレーニング方法をアドバイス。ストレッチやマッサージ、テーピングなどによるリハビリの方法で、健康な体に回復するための処置を行う。痛みの緩和やけがの予防についての知識を持っているため、スポーツクラブや福祉の現場で働く人もいる。
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