【シゴトを知ろう】着物コンサルタント・着付師 ~番外編~
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写真スタジオや美容室での勤務を経て、着付師として独立した小西さん。自宅や会場での出張着付けをメインとしているため、現場はいつもリハーサルなしの本番勝負。時には思いがけないアクシデントもあるようです。そんなお仕事事情や着付けで大切なTPO、スキルアップなどについて伺いました。
この記事をまとめると
- 「用意された着物のサイズが合わない」といったアクシデントも
- 着付けにはさまざまな検定試験があり、勉強しておくと役に立つ
- 仕事のときは洋服が基本だが、着物を着るときの気持ちは常に意識
着ていく場所や周りの雰囲気など、TPOにあわせた装いが大切
――1年の中で忙しい時期はいつですか?
10月から11月にかけての七五三と、春の卒業・入学シーズンです。よく「成人式が一番忙しいでしょう」と言われるのですが、成人式は日にちが決まっているので、忙しいのは1~2日だけなんですよ。一方、七五三や卒業式、入学式は、お客様によって日付もバラバラ。お子さんとお母さん両方の着付けを行なうこともあるので、その時期は毎年とても忙しくなります。
――仕事で大切にしていることは何ですか?
TPOに合わせた着付けをすること。お客様にはご予約時に、どのような立場でどこへ行くのかを伺います。例えば結婚式でも、主役か親族・参列者なのかで、装いは全く異なりますよね。食事をするかどうか、正装が必要か、周りの雰囲気、さらにその方が着物を着慣れているかどうかによっても、着付けは変わってきます。そのようなTPOを第一に踏まえ、そこにお客様の好みをプラスするという感じですね。
――現場では思わぬアクシデントが起こることもあるのでしょうか?
お母様から譲り受けた着物で丈が短かったり、昔作った着物が体型に合わなくなっていたり……ということはありますね。着物はサイズに関係なく着られると思われがちなのですが、やはり難しい場合はあります。それでも代わりの着物はありませんから、紐の位置を工夫するなどして乗り切っています。
また以前、ヘアセットをお願いしていた美容師さんが、現場に大幅に遅刻してしまうトラブルがありました。幸いギリギリでお客様の出発時間には間に合ったのですが、それからは前日と当日のスタッフへの確認を徹底するようにしています。
和文化のマナーを身につけながら、流行ファッションもチェック
――着付師の資格や免許にはどのようなものがあるのですか?
よく知られているのが、「着付け技能検定」と「きもの文化検定」という検定試験です。テキストを読むだけでも多くの知識が得られるので、試験を受けるかどうかに関わらず勉強しておくといいと思いますよ。そのほか、着付けの教室や学校がそれぞれ独自に設定している資格や免許もあります。
――スキルアップのために他にも勉強したことはありますか?
パーソナルカラーについての勉強をしました。診断は行いませんが、学んだ知識からお客様に似合う色を提案するなど、仕事にとても役に立っています。またヘアセットの技術も身につけたいと思い、美容師免許を取得しました。着付けだけをするのであれば必要ない資格ではありますが、持っていた方が安心感はありますね。
――仕事以外の経験で、仕事にもプラスにつながると思うことはありますか?
着物は日本の伝統文化ですが、ジャンル分けするならファッションや美容分野。やはり流行はチェックしておいた方がいいですね。お母様やお祖母様の着物も、合わせる小物を変えるだけでぐっと現代風になります。ヘアセットも少し前はボリューム感のある「盛り髪」が流行しましたが、最近ではコンパクトなものが主流。インターネットや雑誌などで、ファッションやメイクのトレンドをチェックするようにしています。
一方で、年配の方の着付けをする機会も多いため、基本的なマナーも必要です。例えば「和室で素足はマナー違反」など、意外と知らない方も多いのですが、日本のマナーを身につけておくことでお客様にもアドバイスがしやすくなると思います。
同業者の交流や情報交換のため、定期的な勉強会を開催
――業界内の横のつながりはありますか?
月に1度、同業者向けの勉強会を主催しています。個人で仕事をしていると同業者と知り合う機会が少ないため、いろいろな方と交流をしたいと思ってはじめました。個人の着付師さんや美容室やスタジオに所属されている方のほか、ヘアメイクさん・カメラマンさん・美容師さんなどにもご参加いただいています。着物のコーディネートからトラブル対処法まで、テーマを決めて情報交換をしています。
――ご自身の服装で気をつけていることは?
着付けをするときは動きやすい洋服姿です。式場に伺うときはスーツを着用しますし、そのほかの場合でもモノトーンの服装がほとんどです。でも交流会の際のランチなど、なるべく和装の機会を作るように意識しています。やはり普段から自分が着物を着ていないと、お客様の気持ちが分からなくなってしまうと思うので。
――最後に、業界内でのキャリアパスについて教えてください
おそらくもっとも一般的なのは着付け教室を卒業し、そのままその教室の先生になるという道でしょう。先生についてアシスタントとして経験を積んだ後に、自分で教室を開講する人も多いですね。ほかには、卒業後に教室から仕事を紹介してもらったり、ホテルや美容室・結婚式場に着付師として就職したり。結婚・出産後は、パートや派遣社員として働いている方もいます。
着付師は七五三の子どもから年配の方まで、あらゆる世代の着付けを行います。だからこそ着付けの技術にとどまらず、流行ファッションや伝統マナーなど幅広い知識が求められるのですね。いろいろな人生の節目に立ち会い、その瞬間を輝かせることができるのも着付けの醍醐味。ファッションや美容など「人をキレイにするのが好き」という人は、着物コンサルタントや着付師という仕事を将来の選択肢に加えてみてもよいかもしれません。
【profile】横浜出張着付けHARU 小西歩
https://www.yokohama-kimono.com/
この記事のテーマ
「ファッション」を解説
ファッションの専門知識や業界のビジネスノウハウを学び、感性やセンス、基礎技術を磨きます。作品の発表会や学外での職業実習などを通して職業人としての実践力を身につけるほか、資格取得を目指すカリキュラムもあります。仕事としては、素材づくりや縫製など「つくる仕事」と、PRや販売促進などファッションビジネスに関わる仕事に分かれます。
この記事で取り上げた
「着物コンサルタント・着付師」
はこんな仕事です
着物コンサルタントとは、日本文化と和装の歴史、作法を熟知し、着物のコーディネートや着付けを行う人。呉服店の販売員や着付け教室の講師などに多く、「着物コンサルタント」という資格もある。美しい和服の着こなしで魅せる着付けを行うが、冠婚葬祭や成人式などの着ていく場所柄に合わせて装いをコーディネートすることが大切。結婚式の衣装・お色直し、卒業式のはかまなどもこなせなくてはならない。さまざまな和装小物や小道具を駆使し、時間内に仕上げて着崩れにも配慮する。美容室や結婚式場と契約して働く人も多い。