【シゴトを知ろう】彫刻家 編

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【シゴトを知ろう】彫刻家 編

2017.01.25

提供元:マイナビ進学編集部

【シゴトを知ろう】彫刻家 編

彫刻家の大森暁生さんがキャリアをスタートさせた時、周りに言われたのは「食っていけるのかよ」の一言でした。それでも自分の選んだ道を迷いなく進んだ結果、今では国内外から依頼の絶えない彫刻家に。「お金は必ず後からついてくる」と大森さんは言います。その言葉にはどんな意味が込められているのでしょうか。

この記事をまとめると

  • 彫刻家として食べていくには中長期的な見通しも必要
  • 人生において「健全なコンプレックス」は大切
  • 好きなことを生業にすれば一生ものの心の安定が手に入る

バランス感覚が大事

月光の狼 H70×W27×D31(cm) 楠、漆、金箔、彩色 ©AKIO OHMORI Photo:KATSURA ENDO

月光の狼 H70×W27×D31(cm) 楠、漆、金箔、彩色 ©AKIO OHMORI Photo:KATSURA ENDO

Q1. 仕事概要と一日のスケジュールを教えて下さい

木やブロンズの彫刻作品をつくっています。作品は画廊や百貨店、国内外のアートフェアなどの展覧会で展示・販売しています。また個人の方から注文を受けて制作したり、アパレルブランドからの依頼でコラボレーション商品を制作したり、企業からの依頼でモニュメントなどをつくったりすることもあります。

<一日のスケジュール>
9:00 始業/昼シフトの工房スタッフが出社/以降制作や打ち合わせ、事務作業など
12:00~13:00 昼食
15:30~16:00 休憩(スタッフ全員でお茶の時間)
18:00 夜シフトの工房スタッフが出社
23:30 終業


Q2. 仕事の楽しさ・やりがいを感じるのはどんな時ですか?

若い頃は作品ができあがる時が一番うれしくて、完成させた作品を、コーラとポテトチップスを手に一晩中いろんな角度から眺めていました(笑)。今はそんな時間はなくなりましたが、その代わり展覧会場や、納品先であるお客様のご自宅などで生の反応をいただくのが一番の楽しみになりました。接客が好きなんです。お客さまが興奮気味に「これ、いただきます!」と言ってくださったり、作品の魅力を自分のことのように僕に自慢してくださったりするのは本当にうれしいです。

仙台に住む僕の作品のコレクターさんは、3.11の震災の後ずっと暗かった家が、作品が来てから変わり、仕事も益々上向いたと話してくださいました。いわゆる“自己表現”と言われる仕事をしているとお医者さんや消防士さんのような世の中に不可欠な職業の方々にはどこまでいっても頭が上がらないという思いがあります。けれど、とある産業医のお客様が、仕事でストレスを受けることの多い毎日の中で、僕の作品を眺めることでリラックスできると言ってくださったときは、なにかとても不思議な気持ちで、やりがいという言葉では言い表せないほど嬉しかったです。


Q3. 仕事の大変さを感じるのはどんなところですか?

締め切りの大変さはもちろんありますが、好きでやっていることだから苦労とは思いません。一番気を使うのはバランスの取り方です。売れるものを大量生産すれば短期的には稼げますが、長期的にはマンネリ化し飽きられてしまうでしょうし、ブランド価値も下げてしまいます。かと言ってコンセプトに走ったものばかりでは食べていけません。今食べるための作品づくりと、10~20年後も食べていくための作品づくりは違います。年間につくる作品数や制作時期のコントロールだけでなく、複数の取引先と良い関係を築くためのお付き合いのバランスについても考えなければいけません。

食べることを目指すのは大前提

Q4. どのようなきっかけで現在のお仕事に就きましたか?

高校生の頃は警察の鑑識の仕事に憧れていました。頭蓋骨に肉付けして被害者の顔を再現する復顔術というものに興味があったんです。そんな動機で地方の芸術大学へ進んだのですが、作家志向が少し芽生えたのは、在学中に「何か動かなければ」と応募した公募展でのことでした。善し悪しは別にして、自分のつくったものにあれこれ言う人がいることがおもしろいと感じました。大学4年生の時に、彫刻家の籔内佐斗司先生の工房でアシスタントとして働かせて頂いたのですが、初めて腕1本で食べている作家の姿を見て衝撃を受け、そこから徐々に彫刻家になりたいという気持ちが固まっていきました。


Q5. 大学ではどんなことを学びましたか?

芸術大学の美術学部彫刻専攻で4年間学びました。大学ではつくる技術は多少は教えてもらいましたが、食べていく術は教わりませんでした。美術作家が他の職業に比べてあまりにも食えなさすぎるというのは業界の大きな問題点であり、その一端には美術大学自体の教育内容や社会性の無さがあります。作家同士で熱い芸術論は交わしても「ところで、お前食えてんの?」という一言だけは絶対に言わないという、暗黙のルールがこの業界にはあります。でも食べられないとプロとは言えないわけで。食べることを目指すのは大前提です。僕の場合は籔内佐斗司先生の工房でのアシスタント経験を通して、彫刻家という生業で生計を立てている人を目の当たりにすることができました。今があるのは、その経験のおかげです。


Q6. 高校生の時抱いていた夢や体験したことで、現在につながっていると感じることはありますか?
 
高校生の頃から職人に憧れていました。僕が憧れたのは伝統工芸を守る人というより、今の時代に求められる技術を持っている人。それがなぜか鑑識の仕事への興味に繋がりました。刑事ドラマに出てくる白衣を着た鑑識官は、主役の刑事よりもかっこよく見えました。今でも憧れています。今はアパレルブランドからの依頼でガイコツの彫刻作品をつくることがありますが、ガイコツに肉付けする仕事に憧れた高校生が巡り巡って……という妙な感慨はあります(笑)。

不安を他人の基準に合わせる必要はない

Q7. どういう人が彫刻家に向いていると思いますか?
 
当たり前ですが手で物をつくるのが好きな人。自身の経験による考えですが、彫刻家は「健全なコンプレックス」を持っている人がより向いているのではないかと思います。高校生の皆さんにもコンプレックスに悩んでいる人は多いと思います。でも悩んでいるということは、自分を俯瞰して見ることができている証拠。目標値が高いからこそ、たどり着けなくて苦しむのだと思います。逆に自信満々な人というのは目標値が低い人だったりします。コンプレックスに真摯に向き合っていれば、その過程が人としての深みになります。それが作品にも反映されていくことを最近は感じています。


Q8. 高校生へのメッセージをお願いします
 
仕事選びの条件に安定を求める人も多いと思いますが、世の中には既に安定した会社なんてありません。もし安定について考えるなら「心の安定」についても考えてほしいです。収入は世情に左右されるものなので、どの道を選んでも同じです。でも「心の安定」は、好きなことを生業にさえすれば生涯変わらないものとして手に入れることができます。

人と違う選択をすると、周りの人は大抵ネガティブなことを言うと思います。僕も彫刻で食べていく道を選んだ時、周りからは「食っていけるのかよ」と言われました。美大当時の仲間には才能があるのに「どうせ食えない」という理由で諦める人もいました。でも本当に好きなことを選べばお金は後からついてきます。「成功したから言えるんでしょ?」と言う人がいるかもしれませんが、そうではなく「好きなことだとお金がついてくるまで続けられる」ということなんです。もちろんプロの世界は甘くないので、好きの本気度には並大抵でないものを求められます。でも不安を他人の基準に合わせる必要はありません。本当に好きで、乗り越えられる不安や苦労だと自分で思えたなら、それを信じてください。



仕事は、体力的なことより精神的なものに辛さを感じることの方が多かったりします。そのため大森さんの言う「心の安定」は、何よりも優先して考えないといけないことのはずですが、進路を決める場ではなおざりにされがちです。皆さんにもこれから進路について考える時が来ると思いますが、その際にはぜひ大森さんの話を思い出してみてください。


【profile】彫刻家 大森暁生
HP:http://akioohmori.com

【記事トップ画像】
月夜のテーブル -Pirarucu-
H87×W215×D100(cm)
檜、漆、金箔、彩色、ガラス
2007
©AKIO OHMORI
Photo:KATSURA ENDO

この記事のテーマ
デザイン・芸術・写真」を解説

デザインは、本や雑誌、広告など印刷物のデザイン、雑貨、玩具、パッケージなどの商品デザイン、伝統工芸や日用品などの装飾デザインといった分野があり、学校では専門知識や道具、機器を使いこなす技術を学びます。アートや写真を仕事にする場合、学校で基礎的な知識や技術を身につけ、学外での実践を通して経験やセンスを磨きます。

「デザイン・芸術・写真」について詳しく見る

この記事で取り上げた
「彫刻家」
はこんな仕事です

石、木、金属などを彫り込み、芸術作品として立体物を造形する仕事。近年では空間演出も含め、空間造形作家として活動する人もいる。彫刻の歴史は古く、絵画と同じく有史以来の芸術。その目的や彫刻のあり方も変化してきた。彫刻家になるには、まず作品を具象化するデッサン力をしっかり身に付けておこう。美大などの彫刻科で学んだ後は、工房で働いたり彫刻家に弟子入りするなど決められた道はない。彫刻だけを生業とするケースはまれで、美術講師や絵画教室などを兼業している人も。美術展での受賞が評価につながる。

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