【シゴトを知ろう】美術教師 ~番外編~
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大学時代は“ものづくりの現場”である建設業のアルバイトに明け暮れ、刺激を受けたという美術教師の増野先生。番外編では幼い頃のエピソードから大学進学の話まで、いろいろと伺いました。
この記事をまとめると
- 高い目標はゴールではなく通過点と考える
- 建設現場ではプロの仕事に刺激を受けた
- 数値で評価できない魅力ある作品に出合うと嬉しい
おもちゃづくりから始まった創作人生
――幼い頃から絵を描くのは身近なことでしたか?
幼稚園卒園の文集には“将来は絵描きになる”と書いていたので、昔から絵を描くのは好きだったようです。幼稚園~小学校と親が一切おもちゃを買ってくれない家庭でしたので、おもちゃは全て自分で手づくりしました。キン肉マンの絵を自分で描いてから立体的に作り込んで人形にしたりして……手先を動かして何かを作るのは苦ではなかったですね。
――美術系大学への進学は難しかったですか?
高校3年の夏まで大学進学を考えていなかった僕が言うのもなんですが……(笑)、美術系大学を目指す人の中には、合格することがゴールと考える人も多いかもしれません。でも大学入学はあくまでも通過点で、入学してからは自分自身を問われる毎日が待っている。周りにもたくさんいましたが、受験成功が目標だった人は大学に入ってから本当に苦労して、結果が出せなくなってしまう。目標を高く設定するのは良いことなのですが、あくまでも通過点であると考えてほしいですね。
僕が今教えているのは進学校なので美術系大進学を目指す生徒は多くないですが、それでも毎年5〜6人は進学していきます。僕のところに相談にも来ますが、何となく進学しても思った通りの制作活動につながるとは思えないので、生徒には進学を止めても諦めないくらいの気持ちで挑戦してほしいですね。
――大学時代で思い出深い出来事はありますか?
モノづくりの現場を見ておきたいと思い、大学1〜2年はまず解体業のアルバイトに飛び込みました。まずは作る前の“壊す過程”も見ておきたいという気持ちが強かったんですね。ダボダボのズボンと作業着を着て粉塵マスクをつけて働くんですけど、毎日呼ばれるのは名前ではなく“あんちゃん”(笑)。
その後は建設現場で働いたんですが、一つの建物を建てるというのは基礎工事から塗装まで、研ぎ澄まされたプロの技を総動員して造り上げていく作業で、とても刺激されました。結局大学院卒業までの6年間をその現場で過ごし、現場仕事のすき間に制作作業をして大学時代が終わったという感じです。
評価できない“魅力的な作品”との出会い
――答えのない「美術」という教科を教える難しさはありますか?
生徒が自分で答えを見つけてアプローチをしていく教科なので、口を出したくても我慢して見守るのも指導の一つ。でも見方を変えれば、世の中にあるものは全て“美術”であり、毎日美術に囲まれて暮らしているようなもの。美術って身近なものでもあるんですよね。
僕が一番苦労しているのは作品を点数化することです。基本的には完成度や色の塗り方、素材の工夫など評価のポイントに従って評価しますが、時々完成度は低いのにビックリするくらい魅力的でエネルギーがある、独特の世界観を持った作品が出てきたりする……本人も失敗作だと思って提出しているようなんですが、思わず満点をつけたくなって困りますね……(笑)。そういう時は評価は高くはつけられないものの、個別に声をかけて、自分は好きな作品だったと伝えるようにしています。
自身の創作活動を今なお続けているという増野先生は、定期的に個展も開いて、自らも評価を受ける立場を貫き通しています。その挑戦し続ける姿勢が、生徒たちの気持ちに寄り添うコツなのかもしれません。
【profile】美術教師 増野隆泉
この記事のテーマ
「デザイン・芸術・写真」を解説
デザインは、本や雑誌、広告など印刷物のデザイン、雑貨、玩具、パッケージなどの商品デザイン、伝統工芸や日用品などの装飾デザインといった分野があり、学校では専門知識や道具、機器を使いこなす技術を学びます。アートや写真を仕事にする場合、学校で基礎的な知識や技術を身につけ、学外での実践を通して経験やセンスを磨きます。
この記事で取り上げた
「美術教師」
はこんな仕事です
中学・高校において美術の授業を担当し、生徒、児童に絵画、彫刻、陶芸などの創作を教える。仕事に就くには、美術課程のある大学にて教員免許を取得し、さらに教員採用試験に合格する必要がある。生徒一人ひとりの個性を尊重し、創作の喜びや豊かな心を育むことが使命。そのため美術のスキルだけでなく、コミュニケーション能力も重視される。また、部活動の顧問、写生会や美術館での作品鑑賞といった課外活動を担当する場合もある。現在は、造形表現のツールとしてコンピューターを使って授業を展開する学校も増えている。
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