【シゴトを知ろう】ブリーダー ~番外編~
日々たくさんの犬たちに囲まれ、彼らのお世話をしながら忙しい毎日を過ごすブリーダーの良川さん。大勢の犬を散歩させるコツ、よいブリーダーや信頼できる獣医師の先生を選ぶ時のコツなど、ブリーダーだからこそ知っている裏話も伺いました。
この記事をまとめると
- 犬の散歩はあえて時間や曜日を決めずにランダムに行く
- 子犬の生育環境を見せてくれるオープンなブリーダーさんを選ぶべし
- 知らないことを知らないと言える獣医師の先生は良い医師
生育環境をオープンに見せてくれるブリーダーさんを選ぼう
――大勢の犬の散歩は毎日どうしているのですか?
午後は基本的に毎日運動の時間と決めていて、1回の散歩につき8頭前後を連れて近くのドッグランなどに連れていき、入れ替え制で次のグループという風にしています。ただウチの犬は小型犬が多く、家の中で放し飼いになっているので、そんなに神経質にならなくても大丈夫ですね。
以前は毎日決まった時間にお散歩に連れ出していたのですが、そうなると毎日その時間になると犬たちが物凄く吠えて催促するようになってしまって……。今はあえて散歩時間や日にちを決めずにランダムに行くようにしています。
ちなみに鳥たちにも午後は日光浴や水浴びの時間がありますし、チェーンをつけて肩に乗せて散歩に行くこともあります。すれ違う人は驚いて二度見とかしてますけどね。
――信頼できるブリーダーの見分け方ってありますか?
まず育てている場所を見せてくれる人は信頼できます。親がどんな犬で、どんな環境で子犬が育っているかをオープンにできる人、つまり自分の手の内を見せられるブリーダーさんは大丈夫だと思います。
その反面、肝心の中身を見せずに、子犬だけを「可愛いでしょう?」と見せる人がいるようですが、生育環境が見せられないのは劣悪で不潔なせいかもしれませんよね。「見たいと言っても見せてくれない」「子犬だけを見せようとする」というブリーダーさんには、注意した方がよいかもしれません。
出産の大変さを知っているからこそ、巣立つ時の喜びは大きい
――犬の出産の立ち合いは緊張しますか?
物凄く緊張しますね。犬は安産というイメージがあるかもしれませんが、ウチの犬たちは小型犬が多いので難産になりやすいんです。1回の出産で、小型犬だと2~4頭が生まれますが、絶対に命を落とさないようにするのがブリーダーの大切な役割だとも思っています。
分娩もすんなり行く場合もあれば、私たちの手伝いが必要な場合もあります。赤ちゃんとお母さんをつないでいた胎盤は、犬の本能としては外的から子犬を守るためにすぐに食べる習性が備わっていますが、実際は食べてしまうとお腹を壊すケースも多いので、すぐに取り除きます。
また稀にですが、親が子犬を取られてしまうのではないかと不安になって食べてしまうこともあります。僕も何度か経験がありますが、あの時のショックは忘れられない……夫婦で泣きながら動物霊園まで連れて行ったこともありました。人間と同じく犬にも個体差や性格の違いがあり、繁殖しやすい犬や出産に向いていない犬などいろいろなので、それぞれの犬の個性を見極めたキメ細かなサポートが必要です。だから子犬が一番命を落としやすい3日間を乗り越え、新しい飼い主さんにお渡しできる時は、本当に心からホッとします。
――獣医の先生とも連携を取ることはありますか?
もちろんです。信頼できる獣医師の先生を見つけておくのも、よいブリーダーの条件だと思います。私が扱っているトイマンチェスターテリアなどは、あまりたくさん出回っていない犬種なので、獣医師の先生も始めて扱うというケースもあります。
例えば思春期の頃のトイマンチェスターテリアは、毛が禿げたようになることがあります。そういった特性はその犬種のプロであるブリーダーの方が知っているという場合もあり、そうなると獣医師の先生とブリーダーのやりとりも増えますね。獣医師の先生の中には、知らないことはブリーダーでも学会でもどんどん質問してくださる方がいらっしゃいますが、そういう先生は謙虚で勉強熱心で凄いなぁと感心させられます。
ブリーダーはかけがえのない命を扱うお仕事だからこそ、犬の出産にも多く立ち合い、喜びも悲しみもたくさん経験するのだそう。それゆえに、お客さまの手元へ子犬を届けられた時の嬉しさはひとしおなのかもしれません。そんな風に愛情をかけられて巣立っていく犬たちが、幸せな一生を過ごせるかどうかは飼い主次第。動物を飼う時には、飼い主一人ひとりが命を預かっているということを理解しないといけませんね。
【profile】ブリーダー 良川龍仁
HP:Birdy buddy http://www.birdybunny.com/
この記事のテーマ
「動物・植物」を解説
生き物を取り扱う仕事には、動物や観賞用の植物に関わり暮らしに潤いを提供する分野や、食の供給や環境保全を担う農業・林業・水産業などの分野があります。また盲導犬や警察犬などの調教・訓練や水族館や動物園で働く選択肢もあります。この仕事をめざすには、動物や植物の生態や生育に関する専門知識を身につけ、希望する職種に必要な技術修得が必要です。
この記事で取り上げた
「ブリーダー」
はこんな仕事です
犬や猫などの動物のオスとメスを交配させて、血統を考えながら繁殖させるのが仕事である。ブリーダーと一口にいっても、ドッグショーで活躍するような優れた犬を産出するのを目的としたブリーダーから、商業目的で大量に繁殖させることを目的としたブリーダーまで、さまざまなタイプが存在する。ブリーダーとしての資格は特に必要ないが、実際に動物の販売・保管・貸出・訓練・展示を行う場合は、都道府県または指定都市などで「第一種動物取扱業登録」が必要となる。