【シゴトを知ろう】アスレチックトレーナー ~番外編~
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難関のアスレチックトレーナーの資格を取得し、スポーツ大会の現場や整形外科、自身の経営する鍼院などでトレーナー活動をする初田さん。アスレチックトレーナーを目指す人が抱きやすい誤解やギャップなどについて伺いました。
この記事をまとめると
- 資格は最低限の知識と技術を得るためのもの
- コミュニケーションは相手が変わらなければ伝わったことにはならない
- 人間は叶えたい夢をイメージすれば叶うための行動をする
サッカーの国際試合帯同では必須の資格
――初田さんは鍼灸あん摩マッサージ指圧師の資格もお持ちですが、スポーツのトレーナーとして活躍するにあたって共通して持っておくといい資格やスキルはありますか?
アスレチックトレーナーか、関われる領域も広がる理学療法士のどちらかを持ち、かつ鍼灸あん摩マッサージ指圧師や柔道整復師などの医療資格と組み合わせるのがおすすめです。
最近スポーツ界でドーピングが話題になることがありますが、薬を使えない場合でも「鍼灸」で対応するアスリートも多いです。痛みのコントロールだけでなく、内科的疾患や疲労回復にも対応できるのが「鍼灸」で、日頃のコンディショニングに大きな期待がもてると思います。またマッサージは現場で選手に求められることも多いので、直接選手に触れることのできる「あん摩マッサージ指圧師」の資格は持っておいた方がアプローチも増えますし必要とされる資格だと思います。
――中でもアスレチックトレーナーの資格は今注目されているのでしょうか
皆さんもテレビのサッカー中継などでトレーナーの姿を見ることがあると思いますが、代表戦のような国際試合で活躍するトレーナーはアスレチックトレーナーの資格を持っていることが必須になります。
また他の競技でも代表チームでの帯同には必須となりつつある資格になり、トレーナーの間だけでなく、予防医学の面からもとても注目を集めていると思います。
――アスレチックトレーナーになるにはいろんなスポーツを経験していた方がいいのでしょうか
私は小学校の時に野球を、中学では陸上を、高校では柔道を、大学では少林寺拳法を経験しました。そうした中でアスレチックトレーナーの学校で実習に行ったのは、未経験だったアメリカンフットボールやサッカーの現場でした。そこでは経験者でないからこそ見える部分がありました。経験者だとどうしても自分の感覚を信じてしまい、それが裏目に出ることも。もちろん共通言語がわからない、選手の悩みを聞き出しづらいという苦労はあるので、ある程度の知識はあった方がいいと思います。
あとは競技の特性や戦術にもよると思いますが、同じサッカーでも攻守ともに要となる運動量の多いミッドフィルダーと一瞬の瞬発力を活かすゴールキーパーではケガの種類が違います。その競技やポジションに合わせたリハビリテーションの計画を立てないといけません。現場実習などで競技の特性を知り、多くの経験を積むことがとても良い経験になると思います。
横のつながりから仕事が発生することも
――トレーナー同士の横のつながりは多いですか?
専門学校時代の同級生やその仲間たちとは、懇親会の場も含めてよく情報交換をしています。日頃の悩みをともに解決していく場になるだけでなく「あのチームでこんなトレーナーを探しているけど、力を貸してくれる人は誰かいないかな?」というように、横のつながりから仕事が発生することもあります。そういう時に「あの人はどうかな?」と思い出してもらえなければ話は来ません。人とのつながりはとても大事です。日頃の振る舞いを知っている仲間なので、誰よりも信頼でき紹介もしやすいのかもしれません。大切な選手や患者さんを預かる仕事なので、信頼できる人間であることが何より重視されます。仲間のつながりがあるからこそ、迷ったときにもガッツをもらい共に頑張れる力の源になっているのだと思います!
――アスレチックトレーナーにはどんな性格の人が多いですか?
良い悪いではなく、賑やかなムードメーカーや物静かな人もチームには必要だと思います。選手にとってもいろいろなタイプのトレーナーがいた方が相談もしやすいと思うのです。それでも、「どんな人でもいいじゃーん! 自分は自分のままでいい!」というわけでもないと思います。選手の悩みを聞き出したり、それを監督やコーチに伝えることも仕事なので、コミュニケーション力は必要。「自分」という個性を出すのはその最低限のことができてから。また自分では伝えた気になっても、相手が変わらなければ伝わったことになりません。自分が伝えたことよりも、相手が感じたことが大切で相手の反応をよく見ることが大事。変化を起こしてこそのリハビリや治療なので、相手を思いやることができる方の方が力になりやすいのではないかと思います。
縁の下の力持ちであることを楽しめるか
――アスレチックトレーナーに憧れてなった人が、実際に現場でギャップを感じることはあるのでしょうか
まず仕事場が必ずしもスポーツの現場であるとは限りません。「チームにとって必要な仕事」をすることも仕事なので、場合によっては広報活動、イベントの企画運営や事務仕事も多いかもしれません。また、スポーツの現場でも選手にテーピングやアイシングをしたりというイメージを持つ人が多いと思いますが、トレーナーは選手のパフォーマンスを向上させてチームの勝利に貢献する縁の下の力持ち的な存在。そう考えると、捉え方によっては雑用と思えるようなこともあるかもしれません。一見、雑用と思われるその仕事がチームや選手の力になり、環境を整えることもトレーナーとして必用な場面も多くあると思います。メインとなるスポーツ現場での仕事や「支える仕事」も含め、チームや選手、患者さんと同じ方向を見て、一緒に目標達成を楽しめるスペシャルで大切な役割だと思います。
――最後に、将来について考え始めた高校生に伝えたいことは?
「不安は想像から来る」と思います。また、その逆で人間は「叶えたい夢をイメージすれば叶うための行動をする」とも思います。何をしていいか迷っていると行動に移れないので悪循環をたどることにもなりかねない。やりたいことができたら、それを紙に書き出すことをしてください。そうすれば、それを達成するためのアンテナが立ち、自然といろんな情報をキャッチするようになりますよ。
初田さん自身も目標が見つからず、朝起きて「今日は何をしよう……」と迷う辛い日々を経験したことがあるそうです。でもやりたいことが決まれば世界は変わります。皆さんも少しでも興味が湧いたものがあれば、初田さんの言うように紙に書き出してみてはいかがでしょうか。きっと行動が変わり、日常に変化が訪れるのではないでしょうか。
【profile】アスレチックトレーナー 初田鍼院院長 初田昌隆
HP:http://www.hatsudaruma.com
この記事のテーマ
「健康・スポーツ」を解説
スポーツ選手のトレーニングやコンディション管理に関わる仕事と、インストラクターなどの運動指導者として心身の健康管理やスポーツの有用性を広く一般に伝える仕事に大別できます。特に一般向けは、高齢化の進展や生活習慣病の蔓延が社会問題化する中、食生活や睡眠も含めて指導できる者への需要が高まっています。授業は目指す職業により異なります。
この記事で取り上げた
「アスレチックトレーナー」
はこんな仕事です
アスレチックトレーナーは、スポーツ選手などがベストの状態で試合に臨めるように、身体づくりの面からトレーニング・ケアをする仕事。リハビリ指導や健康管理、けがの予防まで、スポーツドクターや指導者と連携し、選手をメディカルの視点から支える重要な役割を担う。プロの選手はもとより、学校などのスポーツ現場での事故やけがを防ぐためにも、知識と技術を持ったトレーナーが必要とされており、活躍のフィールドは多様。医者に代わって代替治療が行えるため、医療従事者の一員ともいえる。
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