【シゴトを知ろう】バッグデザイナー 編

みなさんは、休日などに使っているお気に入りのバッグはありますか? バッグは、デザインはもちろん、機能性もとても重要です。毎日使うバッグはおしゃれであり、使い勝手がよく、そして丈夫でなければいけません。
今回の【シゴトを知ろう】では、バッグデザイナーという職業のお仕事内容や魅力について、日本製の本革バッグブランド「GRANESS」の代表を務める伊藤妃実子さんにお話を伺いました。
この記事をまとめると
- デザインは、納期や予算などさまざまな制約の中で生み出されるものである
- デザイナーの感性と作り手である職人の感性がぶつかり合い、一つのバッグが生み出されていく
- ブランドを立ち上げたいなら、経営や制作などさまざまなことを学んでおくといい
デザインはさまざまな制約の中で生み出されるもの
Q1. 仕事概要と一日の仕事の流れを教えて下さい
私はバッグブランド「GRANESS」の代表として、バッグデザインの仕事に携わっています。
一日の流れは、午前中に商談や打ち合わせを行い、午後からデザインを行うことが多いですね。革・布・金具などの素材メーカーや職人さんたちとバッグが完成するまでの打ち合わせをすることや、実際に完成したバッグをどのようにお客様に販売していくのかを考えるための打ち合わせをします。会社の予算や計画を1〜2年ほど前から決定し、その方針に従って自分でデザインしていきます。
Q2. 仕事の楽しさ・やりがいは何ですか?
デザインは、ただ描くだけでなく、予算や納期などさまざまな制約の中で生み出されるものです。数値だけでは表せないデザイナーの感性と作り手である職人の感性がぶつかり合い、素晴らしい製品が完成したときは素直に感動します。
そして、そんな製品たちをお客様が実際に手に取ってなんともいえないうれしそうな表情をされたり、恋人や家族などの大切な人へのプレゼントとして選んでくださったり、会社や私個人宛にお手紙や感想をくださったとき、この仕事をしていて幸せだと感じますね。GRANESSを世の中に送り出して、本当によかったと感じる瞬間です。
つい最近、女性(のお客様)を限定100名ご招待したファン感謝イベントを開催したのですが、そのときにあるお客様が手土産とお手紙をくださいました。そこには、「ずっと会いたいと思っていたこと」「(私に会えて)一つ夢が叶いました」というメッセージが書かれていたのです。自分や自分の生み出す製品が誰かの夢になっているなんて、本当に素敵な仕事だなと感じました。
Q3. 仕事で大変なこと・辛いと感じることはありますか?
GRANESSで扱っている製品は、天然素材の牛革にこだわっています。2017年の10周年記念モデルの製品では、「花園レザー」といういけばなをコンセプトにした花柄のレザーを一から開発しました。天然素材のプリント染色は、そのときの原皮(牛の皮の状態)の質や色、個体差、そして気温や湿度によって絶妙な微調整が必要になってきます。真夏の工場では、汗が滴る中、エアコンもかけずに大きな機械の熱を帯びた中で職人が一枚一枚革をプリント染色していくのですが、そうした色出しや製造のプロセスは本当に繊細で大変なものです。
こうした職人の技術力の結晶が、バッグという一つの製品になって世の中に送り出されていくわけなのですが、それまでのプロセスには綿密な打ち合わせと0.1mm単位の調整が発生します。一つでも狂うといい製品ができないので、そこは常にプレッシャーを感じる部分でもあります。
社会起業家育成コンテストの入賞をきっかけにブランドを設立
Q4. どのようなきっかけ・経緯でバッグデザイナーに就きましたか?
通常は、服飾専門学校のバッグデザインコースなどで学んでからアパレルメーカーやバッグメーカーに就職する流れが一般的といえるかもしれませんが、私の場合は少し特殊で、大学在学中に授業の一貫で出場した社会起業家育成コンテストでの入賞をきっかけに、GRANESSを創業しました。高校時代から美大予備校の講習を受けたり、建築家の先生のもとで勉強させていただいたりしていたので、いつかデザインに携わる仕事がしたいと思っていましたが、まさか20歳で起業することになるとは夢にも思っていませんでした。
Q5. 大学では何を学びましたか?
私は高校卒業後、大学の環境情報にまつわる学部に進学し、そこでは幅広い勉強をすることができました。デザインに関連する、建築・ランドスケープデザイン・都市デザイン・人間工学・グラフィックデザインなどのほか、会社法や経営の勉強が同時にできたというのも大きなメリットでした。
高校生のみなさんには、デザインの感性を磨くのと同時に、経営の感覚を身につけることをおすすめしたいですね。特に、将来的に独立を考える場合には重要といえるでしょう。
Q6. 高校生のとき抱いていた夢が、現在の仕事につながっていると感じることはありますか?
高校生のころは建築家になりたいと思っていました。祖父は建築関係の会社を創業、祖母の家系も古い時代に材木商を営んでいたそうで、建築というものを身近に感じていたこともありますし、何より絵を描くのが好きだったんです。外観のデザインと内観のデザイン、そして使う人のことを考えた設計という意味では、建築デザインもバッグデザインも近しい部分があるように思います。
また、建築の図面や意匠、歴史などを書籍などで眺めたりするのが大好きなので、そうした部分から着想を得てデザインに生かすこともあります。例えば、10周年記念モデルの「花園アリア(2wayショルダーバッグ)」というバッグがあるのですが、こちらは正面から見た様子が建築様式の「唐破風」というものを意識しています。これは、かつて屋敷ではより高貴な身分の方、神社では神様の通り道とされた入口のデザインで、そうした要素をデザインに取り入れました。
お客様のニーズに寄り添ってデザインすることが大切
Q7. どういう人がバッグデザイナーに向いていると思いますか?
デザインは、自分の好きなことを形にするのではなく、常にお客様のニーズ(求めるもの)に寄り添うことが大切だと考えています。予算や素材選択の限界などに向き合いながら、お客様目線も忘れないバランス感覚を持ち合わせている人が向いているように思います。
Q8. 高校生に向けたメッセージをお願いします
自分がメーカーの中でデザインをしたいのか、それとも独立して自分のブランドを持ちたいのかをはっきりと決めておくといいように思います。前者であれば、ファッション系の学校のバッグデザインコース、鞄制作コースに通うというのが一つの方法です。また将来的に自身のブランドを作っていきたいのであれば、経営などの勉強をするのもいいと思います。さらに、私の身近には職人の元に直談判して飛び込み、修行を重ねて技術力を身につけていった人もいます。制作ができるデザイナーというのも、これからの時代には強みを持っていくと思いますよ。
一つのバッグブランドを創り上げていくとき、バッグづくりの知識はもちろん、経営者としての知識を持っていることもとても重要です。「将来自分のブランドを持ちたい!」と思っている人は、伊藤さんのように経営やさまざまなデザインに関することを学んでおくと、いろいろな場面で生かしていくことができると思いますよ。
【profile】GRANESS代表 伊藤妃実子
http://www.graness.co.jp/
この記事のテーマ
「ファッション」を解説
ファッションの専門知識や業界のビジネスノウハウを学び、感性やセンス、基礎技術を磨きます。作品の発表会や学外での職業実習などを通して職業人としての実践力を身につけるほか、資格取得を目指すカリキュラムもあります。仕事としては、素材づくりや縫製など「つくる仕事」と、PRや販売促進などファッションビジネスに関わる仕事に分かれます。
この記事で取り上げた
「バッグデザイナー」
はこんな仕事です
服飾小物メーカーやアパレルブランドなどに勤め、袋物のデザインをする職種。見た目はもちろん、収納力、ポケットや間仕切り、開閉や持ち運びやすさなど、機能面も考慮する。ファッションセンスだけでなく、使う人の立場からデザインする能力が求められる。装飾性の高いパーティーバッグや手作りの革製バッグを専門にする場合を除き、デザインを起こした後は工房で生産を行う。メーカー勤務の場合は、仕様書の作成や発注指示にも関わる。専門コースを設けているファッションや被服系の専門学校で腕を磨くことができる。
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