【シゴトを知ろう】建築模型アーティスト 編
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みなさんは博物館などで、昔の建物などのミニチュアを見たことはありませんか。そういう建物の模型を専門に制作する「建築模型アーティスト」という職業があります。建築模型とは、ビルや住宅などの設計図を基に制作され、図面だけでは分かりにくい建造物を立体化することにより、イメージをつかみやすくするために用いられます。
今回は、山城デザインで模型制作を行っている竹澤さんに、建築模型アーティストのお仕事や魅力について伺いました!
この記事をまとめると
- 建築模型は用途によって表現が変わる
- 建築模型の制作では、お客のイメージをいかに汲み取るかということが重要
- 建築模型アーティストは柔軟な発想が求められる仕事
模型は「形」だけでなく、「色」の表現も重要!
Q1. 仕事概要と一日のスケジュールを教えて下さい
私が所属する山城デザインは、建築のプレゼンテーション(企画提案)などで使われる模型やCGパーツ、CGアニメーションなどを主に制作しています。私はその中の一つである模型を制作しています。
建築模型には、建物建設の計画段階でデザインや建物の規模を検討するための模型や、住宅展示場やマンションのモデルルーム、博物館などに展示される建物全体の完成型を表現した模型などがあります。建物以外にも、家電製品のサンプルにあたる模型や、橋やトンネルなどの土木建築の模型を制作することもあります。
模型完成までの流れを説明すると、まずは、ゼネコン会社(工事全体をまとめる建設業者)や設計事務所などのお客様からご依頼をいただき、打ち合わせでイメージや仕様用途を伺います。その後、一度サンプルを制作して、それを基に再度打ち合わせをしてイメージを擦り合わせ、本制作に入ります。サンプルを基に打ち合わせをすることは模型制作では重要な点で、お客様から「こういうものを作ってほしい」と資料をいただき、それを参考にしてサンプルをつくります。本制作に入ってからは、何度かお客様とやりとりを重ねながら、どんどん制作を進めていきます。納品の前に、9割ほどできた段階で一度お客様に確認していただき、仕上げて納品という流れになります。
制作期間は短いもので5日間のものもありますし、長いものだと1ヶ月単位のものもあります。毎回1点もののオーダー商品を制作していると思って取り組んでいます。
<ある一日のスケジュール>
08:30 出社・掃除
09:00 建築模型制作
12:00 昼食
13:00 建築模型制作
19:00 退社
Q2. 仕事の楽しさ・やりがいは何ですか?
建築模型は、建物ができあがっていく過程と同じで、自分の手元で模型ができあがっていく過程を見るのがおもしろいです。あと、実際の建物と違ってミニチュアなので、いろいろなアングルから建物を見ることができるのも模型の魅力だと思います。例えば、高層マンションを上から見る機会というのは実際ではなかなかないですが、模型ですと見ることができます。
また、模型で使った色などが実際の建築物に反映されることもあり、模型づくりを通して建物づくりに参加しているということも、この仕事の魅力だと思います。
Q3. 仕事で大変なこと・辛いと感じることはありますか?
模型制作で一番苦戦するのは、「色味」についてです。例えば、家具の模型を制作する際は基本的には紙を使うのですが、色は紙の印刷で表します。ここの制作室でお客様にご確認いただき、ご了承をいただいても、お客様の元に運んで見ていただくとイメージが変化することもあります。色に関しては、お客様とイメージを擦り合わせるのに何度も打ち合わせを重ねるなど時間がかかるときもあり、苦労する点です。
また、表現の難しさという点では、実際の建物とは違う素材を使って、どのように表現するかという難しさもあります。あまりリアルにこだわりすぎても逆に伝わらないときもありますし、そのあたりの表現の具合が難しいです。模型は、実際のものをサイズだけ小さくする訳ではなく、どのようなイメージで捉えてもらいたいかという用途によって表現するべきところが変わってきます。
建築模型には、色味などの完成型をしっかりイメージさせるための「完成型模型」や、設計を始める前の段階でコンセプトを伝えるための「コンセプト模型」、設計していく段階で検討するための「スタディー模型」など、いろいろな用途の模型があります。いかにお客様のイメージをくみ取り、引き出すかというところはこの仕事の大変な面でもあり、一番重要なところでもあると思います。
「三次元のもので表現する」ということが自分に合っていた
Q4. どのようなきっかけ・経緯で建築模型アーティストに就きましたか?
祖父と父の職業が大工なので、一番身近で見てきた職業が建築だったというのが大きいと思います。高校・大学と建築学科に進んだのですが、いざ就職活動するときになって初めて建築の中で何がやりたいかと考えたときに、模型が好きだったので、建築模型制作の仕事に就こうと思いました。幼い頃から工作が得意で、小学生のときはレゴブロックで遊ぶのも大好きだったので、建築模型という三次元の世界の表現が私には合っていただと思います。
Q5. これまでにどのようなことを学んできましたか?
大学卒業後に就いた職場での模型制作は、学生時代にやっていたものとはまったく違うものでした。学生時代は、図面がありそれを模型にするだけだったのですが、いざ働いてみると、お客様との打ち合わせでイメージをくみ取るところから始まり、表現の仕方も考えなければいけません。また、打ち合わせでは、学校では教わらなかったような聞きなれない言葉が交わされることもあり、帰社してから慌てて調べるなどもありました。
打ち合わせの際には過去の事例だったり、分かっている範囲でサンプルを制作して持っていったりするなど、そういう準備をすることで、話を進めやすくする工夫を実践を通して学んでいきました。
Q6. 高校生のとき抱いていた夢が、現在の仕事につながっていると感じることはありますか?
高校の入試の面接時、「建築の中で興味があることは何ですか?」と聞かれた際、「建築模型に興味があります」と答えていたのですが、その時から模型が好きだったのだと思います。あと、高校3年生のときに、選択授業という通年で好きな授業を選んで受けられる授業があるのですが、そのときも建築模型をつくる授業を選び、自分の家を制作していました。無意識ですが、そのころから自分の中で「建築模型」にベクトルが向いていたのかもしれません。
模型制作に正解の方法はない!
Q7. どういう人が建築模型アーティストに向いていると思いますか?
まずは大前提として、単純作業や細かい作業を地道に続けられ、苦にならない人が向いていると思います。
その上で、柔軟な発想ができる人が向いています。模型制作は、つくり方など発想を少し変えるだけで作業効率が上がったり、いい表現方法が見つかったりすることが多いので、柔軟に考えを導くことが重要になってきます。入社当初、上司に言われたのが「模型制作に決まった方法や正解のつくり方はないので、思いついた方法があれば、どんどん提案してくれて構わない」という言葉でした。何気ない日常の中から、さまざまな発想ができる人がいいと思います。
Q8. 高校生に向けたメッセージをお願いします
チャンスがあれば、短期間、数日でも構わないので、設計事務所などで働いて、実際の現場で実践を通して学ぶ経験をしてみるといいと思います。私も、大学卒業までの間、週に数時間程度でしたが、研修という形で今の会社に働きに来ていました。つくり方ひとつをとっても、目から鱗(うろこ)のことばかりで、学ぶことが多く、大変いい経験になりました。大学では研修と並行して卒業制作もしていたのですが、そのとき手がけていた模型は、前期につくった模型より大分グレードアップして提出することができました。
また、建築の勉強はもちろんしておくにこしたことはありませんが、建物を観察することも大切なことだと思うので、街に出ていろいろな建物を見て、刺激を受けてください。
建築模型の制作では、柔軟な発想が求められ、それは日々いろんなことを観察することによって培われているのですね。建築模型アーティストに興味をもった人は、博物館や展示場などで実際の建築模型を目にしてみると、ますます興味が湧くかもしれませんよ。
【profile】株式会社山城デザイン 模型制作室 竹澤利勝
この記事のテーマ
「建築・土木・インテリア」を解説
建築や土木に関する技術を中心に学ぶ分野と、インテリアコーディネイトなどデザインを中心に学ぶ分野の2つに大きく分かれます。資格取得のために学ぶことは、建築やインテリアの設計やプランニングに必要な専門知識、CADの使い方などが中心です。どちらの分野も依頼主の要望を具体化できる幅広い知識とコミュニケーション能力も求められます。
この記事で取り上げた
「建築模型アーティスト」
はこんな仕事です
建築模型アーティストはビルや住宅などの設計図を基に、建築の模型を作る専門家だ。設計図だけでは分かりにくい建造物を模型で立体化することで、より完成品のイメージをつかみやすくする。模型には、ビルや住宅、商業施設などの建物のほか、周辺の地形を含むジオラマもあり、主にプレゼンテーション、展示、実験などに使用される。最近では、模型と一緒にコンピューター画面に描くCGを併用することも増えている。民間の技能認定試験もあり、通信教育などで学ぶことが可能だ。
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