【シゴトを知ろう】天文台の職員 〜番外編〜
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「【シゴトを知ろう】天文台の職員 編」では、東京都三鷹市にある、国立天文台 チリ観測所 特任准教授の永井 洋先生にお仕事内容や魅力について伺いました。
世界最先端の観察所といわれている国立天文台で、「ブラックホール」の壮大な謎を解き明かすために、日々研究を重ねている永井先生。記事を読んで、憧れを感じた人もいるのではないでしょうか。そこで、こちらの記事では番外編として、研究者のお仕事の「あるある」や、知られざる一面についてお話を伺ってみました!
この記事をまとめると
- 私生活でも研究熱心。料理やお酒についても、徹底的に研究する
- 仕事の中で大きな割合を占めるのは「望遠鏡のユーザーサポート」
- 大学院に入った当初は「分からないことを考える」ことに戸惑いを覚えた
「研究熱心」さは、私生活にまで及ぶ
――天文台で研究者として働いていらっしゃる方には、どんな性格の方が多いのでしょうか?
とにかく「研究熱心」なタイプが多いです。それは仕事だけではなく、私生活にも及びます。私は食べることと、お酒を飲むことが好きなのですが、そういった趣味においてもいろいろと研究してしまいます。例えば、「この料理は、どうやってできているんだろう?」と考えて、実際にプロに料理を教わりに行ったり、野山に分け入って食材を採ったり、魚を釣りに行ったりしています。また飲んだお酒については、何冊もノートに書き留めて、分析をしています。もはや、「研究ノート」ですね(笑)。
私の知り合いの研究者には、鉄オタ(鉄道オタク)がいますが、かなり本格的です。やはり研究者は、何かに興味を持つと、掘り下げたくなってしまうようです。
実は、望遠鏡を目で覗く機会は少ない
――天文学の研究者の方は、夜な夜な望遠鏡で星を見ているイメージがありますが、実際はどうなのでしょうか?
実際は、そのようなことはありません(笑)。まず、望遠鏡を目で覗くことはほとんどなくて、撮影された天体写真を、コンピューター上で見ています。また、観測ばかりしているわけでもなくて、むしろ、データ解析をして研究者間で議論し、論文化するという作業の方がずっと時間がかかります。
――やっぱり、お仕事のうち、研究している時間が一番長いのでしょうか?
意外に思われるかもしれませんが、研究の時間はあまり取れていません。仕事の中で、大きな割合を占めているのは、「アルマ望遠鏡のユーザーサポート」です。私は、南米チリにある「アルマ望遠鏡」を利用したプロジェクトに携わっています。そのため、アルマ望遠鏡を使って研究をしている大学の研究者に使い方をお教えしたり、質問にお答えしたりする仕事もしているんです。
世界中の大学の研究者の方々に、「この件は、永井に質問をしないとわからないよね」と頼っていただけることにやりがいを感じる反面、自らの研究を進める時間が少なくなってしまうという葛藤もあります。そのため、休日はもっぱら自分の研究に勤しんでいます。
一歩一歩、宇宙の謎を解明していくことに満足感を感じる
――お仕事の中で達成感を感じるのは、どのようなときですか?
一歩一歩、宇宙を解き明かしていくことに、達成感を感じます。明らかにしたい謎があって、研究をし、論文を書く。そうすると、また新たな謎が見えてくる。研究する。さらに、わからないことが出てくる……、この繰り返しです。大学院に入り、研究を始めた当初は「分からないことについて考える」ことに戸惑いを感じました。大学までは、答えのあることに対する勉強を繰り返していたので。でも今は、地道に宇宙の謎を解明していくことに、満足感を感じています。
永井さんのお話からは、宇宙の謎を解き明かすことに向けた情熱を感じました。未だに多くの謎に包まれている宇宙ですが、研究者の方々の努力によって、少しずつ秘密のベールがはがされていっています。今、あなたが疑問に思っている謎も、いつか研究者の方が解明してくれる日が来るかもしれませんね。
【profile】国立天文台 チリ観測所 特任准教授 永井 洋
http://alma-intweb.mtk.nao.ac.jp/~nagai/
【取材協力】自然科学研究機構 国立天文台
http://www.nao.ac.jp/
この記事のテーマ
「自動車・航空・船舶・鉄道・宇宙」を解説
陸・海・空の交通や物流に関わる仕事です。自動車や飛行機、船舶、鉄道車両などの整備・保守や設計・開発、製造ラインや安全の管理、乗客サービスなど、身につけるべき知識や技術は職業によってさまざま。宇宙分野に関しては、気象観測や通信を支える衛星に関わる仕事の技術などを学びます。
この記事で取り上げた
「天文台の職員」
はこんな仕事です
天文台とは、天体の研究、観測を行う施設。日本では世界最先端の観察所といわれる国立天文台が有名だ。天文台の職員は研究者・技術職員・事務職員の3つに分かれており、研究者は基本的には公募だが、博士号の所持者が対象であることが多く、大学の教授や准教授などが就くのが一般的。技術者と事務職は公務員がその業務にあたることになっており、公務員試験合格者の中で、天文台への勤務を志望した人から選ばれる。