【シゴトを知ろう】潜水士 〜番外編〜
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「【シゴトを知ろう】潜水士 編」では神奈川県平塚市に本社がある「株式会社 渋谷潜水工業」の代表で、潜水士として活躍中の渋谷正信さんにお仕事内容ややりがいについて伺いました。
「水中で自分の技能・知力・体力を駆使して、難しい仕事に取り組むときほど、やりがいを感じる」という渋谷さんのお話に惹きこまれた人もいるのではないでしょうか。そこで、こちらの記事では番外編として、お仕事の「あるある」や、知られざる一面についてお話を伺ってみました!
この記事をまとめると
- 潜水士は、どちらかというと、目立たなくしようとしているタイプが多い
- 小さい港を作る際は、1日当たり4~6時間ほど、海に潜っている
- 何千トンもの重さの沈没船の吊り上げに成功したときは、達成感を感じた
陸上にいるより、水中にいるほうがラクになってくる
――潜水士には、どんな性格の方が多いのでしょうか?
「派手な人」は少ないんですよね。どちらかというと、「目立たなくしよう」としているタイプが多いように思います。
ダイバー(潜水士)は、水中で1人で作業をすることが多いんです。ワーッと飛んだり跳ねたりするような、派手で目立つ要素はありませんし、誰かが自分の作業風景を見ていることもありません。そして作業中は、常に命の危険と隣り合わせです。例えば、空気が送られてこなかったら、死んでしまうわけです。自分の命をキープしながら、黙々と作業をやり遂げる必要があります。だから、ダイバーは華々しい性格にはなりづらいのかもしれませんね。
――水中に潜って作業をするには、体力が必要だと思います。体力をつけるための、特別なトレーニングを行うことはあるのでしょうか?
見習いの内は、トレーニングをする人もいるようです。でも私の場合は、あらためて、何かトレーニングするようなことはないですね。
仕事をしていく内に、自然と体力はつきます。もっと言うと、毎日潜ることによって、潜水用の筋肉は、水中でできあがります。その内、陸上にいるより、水中にいるほうがラクになってくるんですよ。いつも水の中で、筋肉をしっかりと使っているので。逆に、1週間くらい潜っていなくて、久しぶりに水の中に入ったときはしんどいですね。そういった感覚は、「アスリート」と似ていると思っています。
作業内容と水深によって、水中にいられる時間が変化する
――1日当たり、水中にいる時間はどのくらいなんですか?
「作業内容」と「水深」によって変わってきます。水深が浅いのであれば、1日何時間でも潜っていられますが、深い場合は潜れる時間は限られてきます。
例えば、小さい港を作る際は、だいたい10メートルくらい潜ることになります。その場合、午前2~3時間・午後2~3時間で、合計4~6時間ほど潜りますね。水深20メートルの場合は、午前1時間・午後1時間で、合計2時間ほど。水深30メートルの場合は、午前30分間・午後30分間、合計1時間ほど潜ります。
達成感を感じるのは、不可能だと思われる作業をやり遂げたとき
――最後に、お仕事の中で達成感を感じたエピソードについて教えてください
以前、沈没船を引き上げるために、つりかごを水中で溶接したんです。何千トンもの沈没船が無事つりあがってきたときには、「やったな」と感じました。発注者(工事を注文する人)ですら、「本当にできるのかな?」と疑問に思うようなことをやり遂げて、「すごいなー」と言ってもらえたとき、達成感を感じますね。
常に、命の危険と隣り合わせの状況の中で、黙々と大きな仕事をやり遂げる潜水士のみなさん。この記事を読んで、「かっこいいな~」と感じた人もいると思います。今度、街で港や橋といった水中の建築物を見た際は、ぜひ潜水士の仕事について思い出してみてくださいね。
【profile】株式会社 渋谷潜水工業 代表 渋谷正信
【取材協力】株式会社 渋谷潜水工業
http://www.shibuya-diving.co.jp/index.php
この記事のテーマ
「自動車・航空・船舶・鉄道・宇宙」を解説
陸・海・空の交通や物流に関わる仕事です。自動車や飛行機、船舶、鉄道車両などの整備・保守や設計・開発、製造ラインや安全の管理、乗客サービスなど、身につけるべき知識や技術は職業によってさまざま。宇宙分野に関しては、気象観測や通信を支える衛星に関わる仕事の技術などを学びます。
この記事で取り上げた
「潜水士」
はこんな仕事です
潜水士は海や河川、ダムといった水中に潜り、調査や自然災害および海難事故などの被害防止と復旧など、さまざまな作業を行う。この作業をする人を「職業潜水士」という。趣味で潜水を行う場合には免許は必要なく、「職業潜水士」として働くには国家試験である「潜水士試験」に合格しなければならない。試験に実技はなく、潜水士が危険を伴う職種であることの自覚を確認するためと、水中作業によって起こる減圧症などの危険から身を守るための知識・技術を身に付けることが目的である。