【シゴトを知ろう】ドッグ服デザイナー ~番外編~

ワンちゃんのためにおしゃれなオートクチュール(1点モノ)ドッグウエアを作るデザイナー、久保さん。可愛く繊細なデザインに定評がある久保さんですが、実はその影には「犬がいる生活」を大切に思う、やさしいまなざしがありました。
この記事をまとめると
- 犬に関する情報交換は大事
- アパレルの基本技術あってこそのドッグ服
- 犬にやさしいドッグ服も次々登場
犬の生活を豊かにする様々な職種の人と交流
――他のドッグウエアデザイナーさんと会うことはありますか?
ペット博など、ドッグウエアに限らずペットフードや小物を広く展示するイベントでお会いすることが多いですね。デザイナーさんだけでなく、犬全体、色んな職業の方とお話しして情報を集めています。最近関わったワンちゃんの話をしたり、犬種によってクセや動きが違うなど、知識として知っていてもまだ会ったことのないワンちゃんも多いので、関わったことのある人の話は役に立ちますね。犬種によって、住む地域によって洋服に何を求めているかも違うので、次のデザインの参考になることも多いです。
――オートクチュールって、そもそもどんなものなんですか?
オートクチュールは発注したその人に“のみ”合わせて服を作る手法です。型紙もサイズに合わせた1点もの。一番似合う服を作ることが最優先なので、それを叶える高級な布を必要な分だけしか使わず、縫製もほとんど手縫いでミシンは一部しか使わないことが多いです。そのため風合いが繊細で、やわらかくて品の良いものに仕上がるんです。もちろん着心地も全然違います。そのぶん、街で買える既製服とは価格帯がまったく違います。私のドッグウエアのオートクチュールは価格に見合う範囲という形で、セミオーダーも取り入れ、そこまで高価格にはしていません。けれどそのワンちゃんの犬種、特性、体型などに焦点を絞って、飼い主さんとしっかり連携をとり、本来のオートクチュールに負けないよう、1点1点手作りしています。
――ドッグ服デザイナーに必要な学歴はありますか?
学歴というほどのものは必要ありませんが、洋服を作るという点では犬も人間も共通していますので、まずは普通の服飾関係の学校に行って学ぶのがいいと思います。縫製やデザイン絵を描くなど、すべての知識と技術が、ドッグウエアで応用されますから。動きが激しいワンちゃんにはこんな布を使い、こんなデザインで、この部分の縫製をしっかりしてあげる……など、ワンちゃんに負担がなく可愛い洋服を作れるのは、基礎的なアパレルの知識と技術があってこそだと思います。
ワンちゃんはかけがえのない家族。その愛を服に込めて。
――「ドッグウエアは飼い主の見栄」という意見に対して、どう思いますか?
ドッグウエアって、実は現代生活では意外と必要装備です。犬も高齢になると体温調節が難しくなって、寒い時期に外を歩くのが大変ですし、逆に夏はクール素材の服を着せていると、かえって涼しくいられることもあります。また室内で飼われている犬は外気の温度変化に弱い子も多いので、体調を崩すこともあります。状況に合った洋服があれば寒暖に左右されずにお散歩も楽しめるので、ドッグウエアはワンちゃんたちにもメリットもあるアイテムなんです。もちろん見た目の可愛さで生活に潤いが生まれるのも大事ですが、決して飼い主のエゴだけではないんですよ。その理解がもっともっと広まってほしいと思います。
――思い出に残っているドッグウエアはありますか?
今は「ワンちゃんも家族の一員」と考えている方が多いので、誕生日、七五三、結婚式(人も犬同士も)など、記念日のドレスや晴れ着の発注が多いですね。家族の一人として一緒に祝いたい、祝ってほしいという想いがあるようです。10月のハロウィーンも大忙しですよ。
思い出に残っているのは、結婚式で花嫁さんが飼っていたラブラドールレトリバーにもドレスを着せて一緒に参列したいとご希望があった時のことですね。小さいワンちゃんに服を着せるのも可愛いですけど、大型犬だとより仕上がりが人間に近くて優雅なんです。黒いレトリバーだったので白いドレスがよく映えて、作った私がうっとりしてしまうくらいでした。花嫁さんにも大満足していただけました。
――ドッグウエアデザイナーを目指す人が知っておいたほうがいいことはありますか?
服と犬への愛情は欠かせませんが「現代の犬のいる生活」全体に目を向けてみると、いいと思います。最近人気のある犬種、マンションなど飼い主の家の環境。それからペットケージやエサの進化などに興味を持って知識を深めていくと、自分なりの考えができて、服のデザインにも生きてくると思います。犬との幸せな生活をサポートするドッグ服を作るデザイナーさんが、もっと増えると私も嬉しいです。
犬と飼い主が家族同然に仲良くしている様子は、本人たちも見ている周囲もあたたかい気持ちにしてくれます。そのワンちゃんがキュートな服を快適に着ていたら、さらにハッピー!そんな幸せのお手伝いのために、久保さんはドッグウエアを作り続けているのだと感じました。
【profile】
ドッグ服アトリエ「バタフライ ドッグキャンディ」デザイナー・講師 久保江理子(Butterfly dogcandy)
「バタフライ ドッグキャンディ」HPはこちら
この記事のテーマ
「動物・植物」を解説
生き物を取り扱う仕事には、動物や観賞用の植物に関わり暮らしに潤いを提供する分野や、食の供給や環境保全を担う農業・林業・水産業などの分野があります。また盲導犬や警察犬などの調教・訓練や水族館や動物園で働く選択肢もあります。この仕事をめざすには、動物や植物の生態や生育に関する専門知識を身につけ、希望する職種に必要な技術修得が必要です。
この記事で取り上げた
「ドッグ服デザイナー」
はこんな仕事です
犬専門のファッションデザイナーである。人間のファッションデザイナーと同じように、デザイン画を基にパターン(型紙)を作成して、それに合わせて布をカットし縫い合わせる。ほかに犬のためのアクセサリーや小物もデザインする。犬はサイズなどで個体差があり、既製品でカバーするのが難しい。セミオーダーやオーダーメードでの対応が必要になることが多く、犬に余計な負担をかけないように、細やかな調整が必要である。
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