【シゴトを知ろう】漫才師 編
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毎日、全国で活躍している芸人さんの中でも、舞台を中心に活動している「漫才師」。お笑いが好きな人なら、漫才師として舞台に立ち大勢のお客さんを笑わせることを夢見たことがあるのではないでしょうか。
今回は、吉本興業の漫才師「カナリア」のお二人、安達健太郎さんとボン溝黒さんに、漫才師のお仕事について詳しくお話を伺いました。
この記事をまとめると
- ネタがスベってしまったときの悔しさは、次に作るネタにぶつける
- 吉本の芸人養成所で学んだのは「反骨精神」「諦めない心、強いハート」
- 漫才師はこの世の中で最高の仕事
“仕事の痛みは仕事で癒す”スベったときは次に作るネタにぶつける
Q1. 仕事概要を教えて下さい
安達健太郎(以下、安達・写真右):私たちは漫才師をしています。新宿の「ルミネtheよしもと」をはじめとする都内近郊の吉本興業の劇場で、漫才をやるのがメインです。
舞台がある日は、朝の10時くらいに起きて、出番の30分くらい前に劇場に入り、そこから出番が3回あります。1回の漫才の持ち時間は10分です。夕方に終わって、そこから芸人仲間で飲みに行ったりして帰宅して、寝るのは朝方くらいですね。
ボン溝黒(以下、ボン・写真左):僕たち漫才師は、芸人同士のつながりが強いです。仕事以外でも、芸人仲間で結成された「RGツーリングクラブ」のメンバーとツーリングしたり、フットボールアワーの後藤輝基さんの「後藤軍団」でサバゲー(サバイバルゲーム)をやったりすることもあります。いろいろな芸人さんたちとコミュニケーションを取るのが好きなんです。
Q2. 仕事の楽しさ・やりがいは何ですか?
安達:ウケたとき、お客さんにたくさん笑っていただいたときが、この仕事をやっていてよかったと思うときですね。お客さんに笑っていただくことが、なによりうれしいです。
ボン:僕もやっぱり舞台で漫才をしているときにお客さんが自分たちのネタで笑っているときですね。楽しいというか気持ちいいですね。それが一番です。
Q3. 仕事で大変なこと・辛いと感じることはありますか?
ボン:舞台でスベったときですね(笑)。コンビで出ているときは、相方がフォローしてくれますからスベってもなんとかなったりするんですけど、たまに一人の仕事で出たときにスベるとどうにもならないので(笑)、そういうときは帰りまで引きずりますね。寝たらすぐ忘れちゃうんですけどね。
安達:僕はスベったことを引きずるほうです。いまだに、10年以上前にスベったことを夢に見たりするので。スベったことやつらかったことを忘れるってことはないですね。逆に、ウケたときのことはあんまり覚えてないんですよ。ネタがスベったときの悔しさは、次に作るネタにぶつけるしかないですね。“仕事の痛みは仕事で癒す”しかないので。
見た目も性格も僕とは真逆の2人で「M-1」を目標に結成
Q4. どのようなきっかけ・経緯で漫才師になったのでしょうか?
安達:僕たちはもともと漫才師や芸人を目指していたので、それぞれが芸人養成所に入り、そこでいろいろな勉強をしました。学校を卒業してからは、大阪で別々のコンビで5年くらい漫才師として活動していたのですが、そのコンビが同じ時期に解散して、それで相方を考えたときに、同期で一番仲がよかったボンがめちゃくちゃいいなと思い、今のコンビが結成されました。
ボン:僕はそのころ、まだ座長になっていないときの小籔(千豊)さんが、吉本新喜劇に若手でスカウトしたいメンバーとして僕の名前を挙げてくれている、というのを社員さんから聞かされて「おまえ、新喜劇に行け」と言われていて。そんなときに安達くんから誘いを受けて、どっちに行こうか迷っていたんです。でも、「M-1グランプリ」に出たかったんですよね。安達くんと漫才をやって「M-1」を獲ろうという話になってコンビを組みました。
Q5. 芸人養成所では何を学びましたか?
ボン:僕らが通っていた17年前くらいのときは、週に3回、1日2時間ほどの授業があって、その中に「漫才の授業」「発声」「概論」というのがあるんです。漫才の授業は、自分たちの作った5分のネタを順番に先生に見てもらうんです。「どうですか?」って言って。
安達:「おもんない、辞めてまえ!」みたいな(笑)。本当に、めちゃめちゃ厳しいことを言われるんですよ。何を学んだかといったら「反骨精神」ですね(笑)。「諦めない心、強いハート」。これを学びました。
Q6. 高校生のとき抱いていた夢が、現在の仕事につながっていると感じることはありますか?
安達:高校生のときよりもっと前、小学生のころからお笑い芸人になりたいと思っていて、吉本新喜劇を見たりダウンタウンさんを見たりしていて、高校時代には文化祭で漫才をやったりしていました。
ボン:高校生のころから、自分たちのネタを作って漫才をやってたんです。それが修学旅行のときにすごくウケて、教頭先生に「吉本に行け」って言われたんですけど、僕は警察官になりたかったんですよ。それで公務員試験を受けたんですけど落ちてしまって。なんとなくPCで姓名判断を見ていたら、向いている職業に「コメディアン」って書いてあって、そのときに教頭先生の「吉本に行け」という言葉がパッと出てきて。それで芸人の道を進みました。
安達:僕たち二人とも、高校生のころにやっていた漫才がこうして今の仕事につながっているのは感慨深いですね。
漫才師はこの世の中で最高の仕事だと思っている
Q7. どういう人が漫才師に向いていると思いますか?
安達:お笑いが好きなら、向いていると思います。才能とかそんなものは二の次だと思います。おもしろくないとか暗いとか言われてる人でも、好きなら向いてると思います。
ボン:(漫才師の仕事だけでは)食っていけない人たちも多いですし、辛いことや大変なことが多いので、それを乗り越えられるのは、やっぱり「好きだから」なんですよね。
Q8. 漫才師を目指したい高校生に向けてメッセージをお願いします
ボン:僕は中高生のとき、すごくいじられていたんです。「おい、なんかやれ」みたいに。最初は嫌だったんですけど、それを全部やってたんです。そしたら、みんなが笑うようになってきて。それで、いじめだと思わないで全部笑顔で返すようにしたら、友だちが増えていったんです。そこで培ったものが今の芸人人生にすごく役立っていて。今の高校生にも、いじられたりする子はいると思うんですけど、そういうことを生かせるのも芸人の仕事だと知ってほしいです。
安達:売れる人はほんの一握りの厳しい世界ですから、やめておこうかなとかやっぱり普通に働こうかなと思ってしまうと思うんですけど、漫才師というのは本当に、この世の中ですごく最高の仕事だと思うんです。マイクの前で友だちと喋っているだけでお金を貰えるので(笑)。“漫才師を目指す”という時点で漫才師だと思うので、夢に向かって頑張ってください。
結成当初から「M-1で優勝する」ことを夢見て活動しているカナリア。全く正反対の印象のお2人ながら、結成して14年目の漫才コンビとしての信頼関係が会話の端々に見え隠れしていました。漫才師を目指している人は、まずはぜひ生の漫才を観に行ってみてはいかがでしょうか。プロのお笑いから、きっと得られるものがたくさんあるはずですよ。
【profile】カナリア(安達健太郎 ボン溝黒)
【取材協力】よしもとクリエイティブ・エージェンシー
http://search.yoshimoto.co.jp/talent_prf/?id=306
この記事のテーマ
「マスコミ・芸能・アニメ・声優・漫画」を解説
若い感性やアイデアが常に求められる世界です。番組や作品の企画や脚本づくり、照明や音響などの技術スタッフ、宣伝企画など、職種に応じた専門知識や技術を学び、実習を通して企画力や表現力を磨きます。声優やタレントは在学しながらオーディションを受けるなど、仕事のチャンスを得る努力が必要。学校にはその情報が集められています。
この記事で取り上げた
「漫才師」
はこんな仕事です
「ボケ」と「ツッコミ」の話芸で人を笑わせる。寸劇の要素が強いコントでは、扮装して舞台装置や小道具を使うことが多いが、漫才はコンビやトリオで舞台に立ち、軽妙な会話のやりとりだけで、観客を爆笑させる話芸であることが特徴。ただし、コントと漫才の間に明確な境界線はなく、職業としても広く「お笑い芸人」と称されることが多い。資格や学歴に関係なく、完全な実力主義の世界。だが、舞台に立つためには芸能プロダクションなどに所属する必要がある。テレビ番組はオーディションなどを受けて出演するのが一般的だ。