【シゴトを知ろう】マスターリングエンジニア 〜番外編〜

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【シゴトを知ろう】マスターリングエンジニア 〜番外編〜

2016.12.12

提供元:マイナビ進学編集部

【シゴトを知ろう】マスターリングエンジニア 〜番外編〜

「【シゴトを知ろう】マスターリングエンジニア 編」では、日本のマスターリングエンジニアの第一人者、小鐵徹さんに仕事を始めた経緯や魅力について語ってもらいました。70年代から仕事を続ける小鐵さんがどんな思いでマスターリングに取り組んでいるかを知ってもらえたと思います。

今回は、具体的なエピソードも聞かせてもらいながらこの仕事ならではのお話を「番外編」としてお届けします。

この記事をまとめると

  • 小鐵さんは、音へのこだわりが強いザ・クロマニヨンズの作品も手掛けている
  • エンジニアの仕事は、一旦スタートしたらトイレに行く以外は休みはないと思った方が良い
  • サザンオールスターズのマスタリングのため命がけで仕事に取り組んだ

アナログが好きなザ・クロマニヨンズの作品へのこだわり

――具体的なアーティストの方とのエピソードなどがあれば教えてもらえますか?

私はザ・クロマニヨンズの作品のマスターリングもしているのですが、メンバーの甲本ヒロトさん、真島昌利さんは特にすごくアナログレコードが好きな方たちで、CDになってもアナログのテイスト(音の質感)がほしいというんです。普通だとレコーディングした素材をここ(マスターリングルーム)に持ち込んでDA(デジタルコンバーター、デジタル信号をアナログ信号に変換する)で音を出して、お化粧(※小鐵さんはマスターリングをこう例えている)をして、AD(A/Dコンバーター、アナログ信号をデジタル信号に変換する機器)でコンピューターに取り込んでCDのマスターを作るのが一般的な流れなんです。

ただ、ザ・クロマニヨンズはどんなやり方をしているかというと、まずアナログのハーフ(二分の一)のテープで元の音を持ち込むんです。それでお化粧した音を、「96kHz/24bit」のハイレゾで取り込みます。それをアナログレコードのカッティング用のマスターリングにして、ラッカー盤(レコード盤の元になる溝が無いツルツルの状態の盤)にカッティング(レコードの溝をカット)するんです。それをまたレコードプレーヤーで再生して、CD用のフォーマットの「44.1kHz/16bit」にしてDDP(CDプレス用マスターの納品フォーマット)を作るんです。

ですから、一般的なCDよりは、1回アナログレコードのカッティングをして取り込むという工程が付加されるわけです。ザ・クロマニヨンズは最初の作品からやらせてもらっていますが、ずっと同じやり方です。日本でもそういうやり方をしているのはうちだけじゃないですかね。

エンジニアはいったんスタートしたらトイレに行く以外は休みはない!?

たくさんの音楽作品が生まれるマスタリングルーム

たくさんの音楽作品が生まれるマスタリングルーム

――長い時間スタジオに籠って仕事するのは、相当大変だと思うのですが、食事などはどうしているのでしょうか。

自分自身の集中力のキャパ(許容量)というのは、だいたい7、8時間なんですよ。そうすると21時くらいなると苦しくなってくるんです。エンジニアという仕事は一旦スタートしたら、トイレに行く以外は基本的に休みはないと思った方がいいですね。仕事中は食事の時間がもったいないので、長引きそうなときには家内におにぎりを作ってもらって、仕事をしながら食べることもありますよ。

サザンオールスターズのマスターリングのため命がけで仕事に取り組んだ

スタジオにあるアナログテーププレイヤー

スタジオにあるアナログテーププレイヤー

――これまでで一番達成感を感じたエピソードがあれば教えてください。

私はサザンオールスターズ(以下、サザン)のアナログレコード時代からマスターリングをやらせてもらっていたんですが、CDの時代になってからはマスターリングを国内のあるスタジオがやっていたんです。当時それを見て私は、所属レコード会社には国内に2箇所もマスターリングスタジオがあるのに、サザンのマスターリングをなぜ他所でやっているんだと思っていたんです。そのうちサザンのCDは海外でマスターリングをやるようになったんですが、アナログレコードだけは私がマスターリングをしていたので、レコード会社の担当の方がレコードのカッティングの立ち合いに来るたびに話して、自分にCDのマスターリングをやらせてくれとお願いしてチャンスをもらったんです。

そうしたら、ボブ・ラディック(近年ではダフト・パンクの『ランダム・アクセス・メモリーズ』のマスターリングを手掛けた)と私のマスターリングを聴き比べて決めると言われたんです。それで運よく私が採用されたんですが、次はステファン・マーカッセン(ローリング・ストーンズやスティービー・ワンダーらの作品で知られ、日本では阿部真央の作品等を手掛けている)と比べると。それもまた勝つことができたんですが、今度はダグ・サックス(“マスターリングエンジニアのゴッドファーザー”とも称された世界最高峰のマスターリングエンジニア)が相手だというんです。
ダグ・サックスはマスターリングをやる人間にとって神様みたいな人でしたから、これは勝てないと思ったんですが、納期があるので夜の11時くらいから仕事を始めて朝の8時までにやらなければいけなかったんです。でも、ダグ・サックスのマスターリングに勝てるかを考えたらもう恐怖で、おかしくなったんでしょうね。夜中の2時くらいに、電気がショートしたみたいに「バチッ」っていう音と、目の中に雷の白い閃光が走って、目も見えないし耳も聴こえなくなってしまったんです。あまりにも過度な集中力に耐えられなくなったんでしょう。そのときには一瞬死を考えたくらいなのですが、しばらく横になって休んでいたら、1時間くらいして少しずつ元に戻ってきたんです。

そのときに、いくら自分があがいたとしても、自分の器の能力以上のことができるわけがないんだから、「今自分が持っている力の中で精いっぱいやろう」と思うことができたんです。そこから落ち着いて自分なりにやって完パケしたマスターを外のポストに入れに行ったら、白々と夜が明けていました。ずっとスタジオに籠りきりでしたから、その光景は忘れられないですね。そして、ダグ・サックスにも勝つことができたんです。
そのとき思ったのは、私はこの仕事のために命をかけたんです。でもダグ・サックスはそこまではやっていないだろうと。私は命を懸けた、だから勝てたんだって、自分に言い聞かせたんです。そのときだけです、仕事で命を懸けたと思ったのは。後にも先にもそういうことはないですね。



「命を懸けた仕事」。そこには、マスターリングエンジニアとしての全身全霊で仕事に取り組んできた小鐵さんのプライドと、使命感を感じることができます。いつか音楽に関わる仕事に就きたいと考えている人は、音楽を楽しみながら、自分が将来本気で取り組んでみたい仕事は何なのか、ぜひこの機会に考えてみてはいかがでしょうか。


【profile】マスタリングエンジニア 小鐵徹
【取材協力】株式会社JVCケンウッド・クリエイティブメディア
JVCマスタリングセンター代官山スタジオ
http://vcm.victor.jp/media/mastering/index.html

この記事のテーマ
音楽・イベント」を解説

エンターテイメントを作り出すため、職種に応じた専門知識や技術を学び、作品制作や企画立案のスキル、表現力を磨きます。音楽制作では、作詞・作曲・編曲などの楽曲づくりのほか、レコーディングやライブでの音響機器の操作を学びます。舞台制作では、演劇やダンスなどの演出のほか、舞台装置の使い方を学びます。楽器の製作・修理もこの分野です。

「音楽・イベント」について詳しく見る

この記事で取り上げた
「マスターリングエンジニア」
はこんな仕事です

音楽CD、ラジオ、テレビなど、メディアの規格に合わせた音質を整える仕事。主に音楽CD制作に際し、CDプレス用の規格に調整する仕事が多い。すなわち音源を商品化できるレベルまで仕上げていく役割だ。機材を扱うレコーディングエンジニアとは分業化が進み、別の職種になる。しかし、スタジオによってはレコーディングエンジニアがマスターリングまで行うこともある。この道へは音楽専門学校などで専門知識を学び、レコード会社、レコーディングスタジオ、音楽制作会社などに就職し、腕を磨いていくのが通常ルートだ。

「マスターリングエンジニア」について詳しく見る